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星と歩く、たまにコケる…万年筆とPC、水星と天王星


11月のある日、ノートPCが使えなくなった。

そのPCは今年の3月頃、使っていたポメラが壊れ、「どうせなら外でネットに繋ぎつつ書き物ができたら便利だねえ」という理由で買った、お値段10万円台中盤のシロモノだった。
しばらくは便利に使っていた。noteの記事の何本かと、pixivにある話の何本かは、そのノートPCで書いたものだ。

ところが7月頃、そのPCに不調が発生した。ACを挿しても充電できない、電源を挿しなおしてもBIOSを更新しても駄目、という。それで販売店に持ち込んで修理をお願いしたところ、『こちらでは現象を確認できませんでした』という言われてそのまま送り返され、当然のごとく治っておらず、それを前提にもう一回持ち込んだところ(充電できてない状態の写真つきで)、『やっぱり現象が確認できてないけど一応電源まわりは交換したよ』と帰ってきた。事実、それでしばらくは普通に使えていたのだけれど、結局2週間後に同じ症状が再発した。しかも今度は、家では完全に充電不能。
このへんで私は悟った。

PCに限らず、工業製品にはそういう個体というのが存在する。

以前、そう長い期間ではないけれど、そういう個体に関わるの仕事をしたことがある。だから知っている。どれだけ調べても、何をどうしても、故障箇所が分からなかったり故障状態が再現されなかったりすることは、あるのだ。

まあ、たぶん、そういう個体なんだこれ。

3度目に持ち込むかどうかはまだ考えていない。持ち込んだところで根本的には解決されない可能性が高いし、そもそもその販売店に行くまでが結構大変なのである。車がないとこういうときに億劫になってしまうのが、地方暮らしの辛いところだ。

そういう訳で、半年と少しで『外で書く道具』がなくなった。スマホでやれば、という向きもあろうが、私はフリック入力があんまり得意ではない。Twitterくらいはやるが、長文をあれで打つのはちょっと……である。
我が身のままならなさ(主に財布の中身)に遠ーい目になっていたのだけれど、PCが壊れてから数日した辺りで、私はとある万年筆のことを思い出した。

その名をカクノという。
(メーカーのサイト:
 https://www.pilot.co.jp/products/pen/fountain/fountain/kakuno/

万年筆は、とかく手の掛かる筆記用具だ。ボールペンという非常に便利な道具がある現代では、だいたい趣味人向けの道具として扱われていることが多い。
その万年筆という道具のエントリーモデルとして、とても人気なのがカクノだ。子供にも使えるよう、とてもやさしい解説書もついている。発売当初、文具販売にちょっとでも関わったことのある方なら、これがどれだけ爆発的な売上を出したかは、きっと覚えがあることだろう。

以前、某ジャンルの二次創作の為に「一度は万年筆を触ってみたいなぁ……」と思っていた私は、これを買ったことがあった。そして非常に驚いた。
万年筆である、という以上に、とても私の手に合う軸だったのである。
書き続けても手が痛くならない筆記具は、PCのキーボードを除くと、カクノだけだた。これが私の小学生くらいの頃にあったらなあ、もう少し勉強頑張れたのに……!と半泣きになったのを覚えている。

とにかく使いやすくて嬉しくて、仕事にも一時期使っていたのだけれど、あるときキャップなしの状態で床に落としてペン先をひん曲げてしまい、あえなくご臨終。粗忽者に繊細な道具は向かねーなあ……と思って、以降何となく買わずにいたのだけれど。

ふと思ったのだ。
カクノが使えれば、兎にも角にも、長文を書けはする筈だ。
だったら、カクノと紙のノートが一冊あればいいのでは……と。
そうして書いたものは自宅のPC(※自作趣味の父のお陰で存在している)で見直ししながら入力して、WEBに上げればいい。

そういう訳で私は再びカクノを手に取った。
お値段はあの頃と同じ1100円(税込)
ノートは無印良品のB6無地ダブルリングノート、こっちは190円(税込)
しめて1290円、ノートPCのだいたい100分の1である。

そうしていざやってみると、手書きの思わぬ利点に気がついた。

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