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鉄と赤と戦いの星、火星

火星とは。

地球のお隣、太陽に近い方から数えて四番目の、夜空に赤く輝く星である。二酸化炭素の薄い大気と、地殻を持つ地球型惑星で、その赤の源は火星の表面を覆う酸化鉄だ。占星術の上では、勇気や闘争と結びつけられる星であり、軍神マルスの星であるとも言われる。惑星記号は男性を意味するモノと一緒で、『男性性』の象徴と扱うこともある。

錬金術の世界には、金属の惑星照応という概念がある。太陽から土星まで、それぞれの惑星を象徴する金属があるのだ(注:金属だけではなく、神様や天使や色の照応もある。興味のある方は調べてみてほしい)。火星を象徴する金属は鉄とされている。確かに鉄は武具を作る材料であり、錆びた鉄は赤っぽくなる。軍神の象徴には相応しい金属であろうと思う。しかし、実際は相応しいどころの話ではなかった。人間の文明が進化して実際に火星まで探査機を飛ばしてみたら、火星の表面は本当に鉄に覆われていたのだ。照応も何も、火星は物理的に鉄をまとう星だったのである。そんなわけで火星は、占星術の上では現在に至るまで、鉄と赤と戦いの星だ。

占星術でいう火星の要素は、主に戦いの為のものだ。まだ人間が狩りをして暮らしていた頃は、野生の獣や自然環境と戦い続けなくては生き延びられなかった。命をつなぐ為に必須の力だったのである。ある程度文明が発達して国家同士の戦争が繰り広げられる時代に突入したら、今度は対自然ではなく対人間で、命がけの殺し合いはさらに増えた。世界史に出てくる戦争の数を見れば、だいたい予想がつくことだけれども。

現代日本では、そういう闘争が必要になる場面は多くない。文明に守られたこの現代日本においては、戦わずとも生き残れる場所が多いのだ。少なくとも、昔に比べれば。しかし、人間同士の闘争は健在だ。スポーツのメダル争いや将棋のタイトル争い、あるいは会社や業界のナンバー1の取り合いをするとき、火星の力は必須だ。一部の学校で行われている熾烈な学力試験も、一部は火星の範囲と言えるだろう。ビジネスの現場なら顧客の新規開拓、分野それ自体の開拓にも火星の力は発揮される。恋愛のパートナーを探す、なんてのもそうだろうか。自然との闘争が減った分、自分に有利な環境を求めて足を駆り立てる力は、主に人間社会の中で発揮されることになる。

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