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星と歩く、たまにコケる…最強の援助者、もしくはミダスの呪い-木星の話

しばらく前、NASAの木星探査機ジュノーが撮影した木星の写真を見た。今まであちこちで見たことのある、茶と白の帯模様に比べて、だいぶ印象の違う写真だった(木星 写真 NASA あたりで検索してみてください)。その新しい写真を見て、私は「おおう、ダイナミック!」と驚いたのだが、それと同時に、かわいい方向ではないなあ……とか、見ようによっては、なんか闇鍋のようだ……とかもちょっと思った。いずれにしても、占星術の上で扱う木星の印象に、だいぶ近くなった感じがした。

占星術の入門者向けの本だと、木星はだいたい恵みの星だと書かれている。東洋占星術の方でも歳星と呼び、吉星とされているのだと聞いたこともある。財産をふくらません、才能を大きく育ててくれる、豊かさの象徴のような星である、と。

……まあ、そうなんだけど。
それは確かにその通りなんだけど。

木星がそういう星と扱われるようになったのは、きっと、人間という生き物が長いこと欠乏との戦いを繰り広げていたからではないだろうか。ないよりある方が生き延びられた。食べ物にしろ、能力にしろ、衣服や家にしろ、財貨や権力にしろ、仲間を動かす力にしろ、だ。『ある』か『ない』かが、文字通り生死を分けた時代は随分と長かった。

欠乏との戦いを生きる生き物にとって、『増やす力、ふくらませる力』は、いつだって喉から手が出るくらいに欲しいものだっただろう。その願いを託して空を見上げた人々がいて、その願いを受け止めた星が木星なのだろうと、私は思っている。だとすれば、確かに木星とは幸いの星で間違いない。多い・いっぱいある≒幸せ、であった時代なら。

現代でも、基本的にはそうだろう。ないよりは、あった方がいい。お金があればかなりの種類の不幸が防げるし、能力があれば有形無形の富を引き寄せる一助になる。言葉だって知らないよりは知っていた方が、語れる物事は多くなる。いざというときにとれる手段の数は、そのまま安心の数だ。

企業の経営をしている人たちで、星読みの世界に片足くらい突っ込んでいるとか、専属の占星術を雇っている人は、太陽より月よりまずは木星を考えるという人が結構いるのだと聞いたことがある。大きなお金の流れに身を浸して生きる人たちにとっては、木星は『王様』の星だ。

しかし、である。

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