古い昔の空手の練習法
再び空手を学ぶことになりましたが、首里手系の空手を習うのは初めてで、戸惑いました。
首里手系の空手の突きは、それまで習ってきた泊手系(那覇手系)の空手の突きとは違っていました。首里手系の伸びるような突きに対して、以前の泊手系(那覇手系)の空手では力を込めた突きでした。最初のうちは突きに力を込めて突く癖が治せず、娘の素直な首里手系の伸びる突きを羨ましく思いました。その時の空手の先生は、決して無理に突き方を修正しようとはしませんでした。
練習は、基本的に先生と自分一人の二人きりでした。教え方も、2時間の練習で、2〜3回先生の前で指示された型を演じて、それに対して簡単な修正をするだけで、残りのほとんどの時間は色々な話を聞くだけでした。厳しく怒鳴られることもありませんでした。組手を行うこともありませんでした。
現代のスポーツや格闘技としての空手の集団練習からすると、不思議に思われるかもしれませんが、明治以前の琉球王国時代の唐手の練習は、基本的に先生と一対一での練習だったと聞いています。さらに、先生からは、昔の空手の練習では、五十歳くらいまでは、身体を鍛える練習だ主だが、五十歳を越えたら、話を聞くことが主になるとのことでした。当時の私の年は五十代でした。話の中で、型の中の技の使い方や身体の動かし方を聞いてきました。しかし、その動きは全くできませんでした。
先生との練習は、2週間に1回程度でしたので、それ以外の日は、毎日のように一人で習った型の練習をしました。しかし、なかなか先生の指示するような動きはできませんでした。そんな中で、首里手系の基本であるナイハンチの型を一万回練習してみようと密かに思いました。何故かというと、五十代の年齢で運動音痴で運動嫌いの自分が、多くの空手の型を習得することは無理だと考え、せめてナイハンチ初段の型一つだけでもマスターしたいと思ったからです。
型を一日一回行うと、一万回行うのに約三十年かかる計算です。一日十回行うと約三年で一万回になる計算です。医者の仕事をして、家庭を持っている私は、一万回行うのにおよそ五年かかりました。
わかったこと
1.高齢での空手の練習は、身体を鍛えることが主目的ではないということ。
2.高齢者の空手の練習は、空手の心を知ることが主になるということ。