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ー安楽死を宣告された猫との35日間ー  15日目

BAKENEKO DIARY /DAY 15. 外に出る!

 ミータは、ちゅーるなら一度に一本、時には1本半くらい飲み込めるようになった。一本は14g、7kcal。カロリー低い… 何本もあげたくなるが、動物病院のA先生から「おやつ系のフードは、まず総合栄養食のフードをあげてから、どうしても無理な場合に」と言われている。観察してみると、ミータはドライフードを噛んだり、飲み込んだりができないようだ。口に入れて数回、咀嚼のようなことをするが、フードがすぐに口からぽろりと落ちてしまう。ウェット系のフードも、固まりの部分はほとんど食べられない。口の中の傷のせいなのか、麻痺のせいなのか、この時はわからなかった。

 食べ始めるのと同時に、ミータはまた外に行きたいそぶりを見せるようになった。声かけに対する反応や親愛を示すようなしぐさは一切ないが、猫ドアの前へ行き、外をのぞこうとする。うちの猫ドアは二段階あり、第一の室内のドアは洗濯干し場につながっていて、洗濯干し場の網戸にも第二の猫ドアがある。室内側の1番目のドアは半透明のプラスチック板を頭で押し開ける仕組みものだが、この時は上からカバーをつけ、外を見ることも開けることもできないようにしていた。
 猫ドアに食道チューブがひっかかって取れると困るので、洗濯干し場へ続く引き戸をあけてやると、ミータはすぐに(といってもとぼとぼ歩きで)洗濯干し場へ向かった。洗濯干し場はすべての窓をしっかり閉めてあるので網戸の猫ドアは使えず、外に出ることはできない。ミータはそこで1時間ほど外をながめ、それからベッドに戻った。

 そんなことが数回続き、私はだんだん辛くなってきた。いずれにせよ今は走れる身体ではない。横に付いてれば、外の空気を吸わせてあげてもいいんじゃないだろうか。

「ミータ、外に行く?」
洗濯干し場のガラス戸を開けると、ミータは迷いもなく外に出た。今もはっきりと覚えている。その時のミータの姿。
 鼻をヒクヒクと動かし、耳をいろんな方向に傾ける。目の奥に光りが戻って、視線が意志的に動く。身体全体で風や湿度や音を感じている。家の中の反応なしの猫とは別人(猫)だ。
 あきらめるしかないな、と思った。実は私は、その時までミータを室内飼いすることをあきらめていなかった。でも、無理だ。この猫には、外に出ない生活はない。
 娘のSは最初から言っていた。「ミータは外に出ないとダメ。よくなったら外に出す。」Sは正しい。

 ミータは事故前と同じように畑に行って、おしっこをして、それから1時間以上じっと外で座っていた。12月なので寒かったけど、私も一緒にいた。疲れてしまうの中に入れようとミータを抱き上げると、小さな声で「ウウウー」と怒った。事故以来、初めて聞いたミータの声。

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