『枕頭の書』福永武彦

新潮から出た福永武彦の随筆集シリーズ全6巻のうちの一冊。

好きな作家や小説作品について書いたものが多く集められているけれど、『意中の文士たち』のような批評的なものではなくて、本当にざっくばらんな語り口で、リラックスして読める。

福永武彦が好きだと公言しながら、あまり随筆の類は読んでいないのだなあと改めて気づいた。これから少しずつ読み直して行きたい。

収録されているものはどれも良いのだけれど、石川県の能登にある折口信夫・春海親子の墓を訪ねた紀行文が特に印象深かった。

googl mapでそのあたりを眺めながら福永の歩いた行程を辿るけれども、福永が利用したローカル線はもう廃止されているようだし、景観もすっかり変わっているようでさっぱり分からなかった。

でもその分からなさが、また良い感じだった。簡単にトレースできない道行きだからこそ、読む価値があるように感じる。

旅先で淑女と出逢う筋書きも憎らしい。旅先で藝術家が女と出逢い、さて『海市』ばりの恋愛ドラマが繰り広げられるのかは、読んでのお楽しみとしておこうか。

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