『私にとっての20世紀 付 最後のメッセージ』加藤周一

二〇〇八年十二月に、惜しまれつつ八九年の生涯を閉じた著者は二〇世紀をいかにとらえていたのか。何を見つめ、何に希望を託して生き抜いたのか。本書は芸術、戦争、社会主義、ナショナリズム等の主題と自己の足跡を重ね合わせてこの世紀の意味を読み解いた書物であり、若い世代への期待を語った講演と生前最後のインタビュー(二〇〇八年八月)も収録した新編集版である。戦後を生きた知の巨人は旅路の果てに何を語り遺したのか、人間・加藤周一に関心を持つ読者にとって必読の書である。

“戦争の世紀”とも言われる二十世紀を生きた加藤周一へのインタビューをもとに編集した一冊。

対話から生まれたせいもあってか、加藤周一のエッセンスが極めてクリアに抽出されている。

加藤周一と言えば怜悧な論理的文章がまず浮かぶ、“理の人”のイメージだけれども、案外“情の人”でもあるのだなあ、というような印象が残るのも、聞き書きがベースだからということもあるだろうか。

加藤は、戦争に反対するその根拠を、大切な友人を戦争によって物理的にあるいは精神的に殺されてしまったことを許すわけには行かないという。

殺すな、この当たり前の立場を、堅持することはしかし難しい。その、難しさの根拠となる有象無象の戦争を容認する論理に負けないために、加藤のような真の知識人の著作を読む。

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