見出し画像

『浮世絵にみる江戸名所』ヘンリー・スミス編

ビジュアルブック江戸東京というシリーズの2冊目。タイトルの“江戸名所”には“ランドスケープ”のルビが振られている。

十八世紀中葉から十九世紀中葉までの約百年にわたる江戸名所絵の成り立ちは、日本古来の意味での「名所」と、西洋の遠近法のよって可能となった絵画空間との絶え間ない相互作用の歴史だったといえよう。そして、どちらがどちらを支配するでもない両者の拮抗関係は豊かな多様性をうみだした。「江戸名所」という本書の題名に「ランドスケープ」という振り仮名をつけたのも、そんな二つの平行する要素を表そうとしたものである。

「総論」

確かに、多くの図版には西洋画の影響による遠近法が取り入れられている。浮世絵は、極めて日本的な情緒に溢れたものだけれど、すでにしてそこに西洋のエッセンスが染み込んでいたというのは、なかなか興味深い事実ではないか。

とまれ、コムツカシイ理屈は抜きにして、ビジュアルブックの名の通り、たっぷりのカラー図版で江戸時代の空気が漂ってくる、楽しい一冊。

名所ごとに絵を集めて編むというスタイルは、まえがきに依れば「今までなかった」スタイルとのこと、複数の絵師が同じところをどう描いているか、見比べるのも面白い。

少し大きいけれど、江戸散策に携えて行きたくなります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?