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【映観】『レット・イット・ビー』(1970)

『ザ・ビートルズ: Let It Be』2024年修復版

監督:マイケル・リンゼイ=ホッグ

僕が若かりし頃(80年代)既に伝説化され、教科書に載ってしまうくらいポピュラリティを得てしまっていた。
80年にジョンが殺され、もはやビートルズ再結成は叶わなくなり神格化されていくのだが、ご存じの通り20世紀末のアンソロジープロジェクトで実質的に3人が新曲を演奏し、去年「Now and then」で残る2人がA.Iの力を借りラスト曲を発表した。
10代の僕は、FAB4好きを隠すように裏ビートルマニア。
なんかその当時カッコ悪いような気がして(アイドルやアニメを好きだというような感じか、時代はオタクを疎外していた)
好きな音楽は? 
バーズ、バッファロー・スプリング・フィールド(ニール・ヤング在籍) 
ストーン・ローゼズもいいね、と斜に構え誤魔化していた。
なんだいビートルズ直系じゃんと匂わせつつ、ブラーやオアシスには走らなかった。

それでこの映画なのだが、もちろん公開当時映画は知らず(まだ生まれたばかり)
ソフト化もされたようだがアップルの承諾が得られず販売中止になってるそうだ。
一部映像は様々な形で見られたが(例えばMTVでとかで流れた)ソフト化はされていない。
僕は海賊版DVDで入手していたが、字幕もなく荒い映像がまた気持ちを曇らせた。
そして遂に、『ザ・ビートルズ: Get Back』(2021)の登場である。
Disney+配信に狂喜乱舞したのだ!!!

ゲット・バック(2021)

#ビートルズ ドキュメント『ゲット・バック』(2021)
6時間強、熱量が凄い。そして改めて、ビートルズはバンドなんだと。
1969年、TV特番の曲作りで集まった4人は、大きな倉庫で並行してドキュメント映画の撮影も撮る。
いわゆる"ゲット・バック・セッション"
一週間でジョージが逃げ出す。
アップルスタジオへと戻って、彼らの4人揃っての最後のライヴとなったルーフトップライヴで、解散という流れ。
アルバムでは「レット・イット・ビー」「アービーロード」に散り散りに収録された。
もはや神格化され、何度となくミックス違いは生まれ、新たなヴァージョンが出てくるがこのセッション(60時間以上)を掘ればそりゃあ玉手箱だ。
リハーサルは延々繰り返され、軋轢や衝突、愚痴なども出るだろうが、それよりもなんとかバンドを立て直そうという執念深さが魔法を産んでいく。
ポールとジョンの共同作業に反発するジョージが名曲を生む。
ビリー・プレストンの参加でバランスが生まれ、この一ヶ月の間にアレン・クライン(マネージメント)との会合、ヨーコの離婚、リンゴの映画など目まぐるしく動くアップル帝国の裏側が垣間見れる。
ヨーコとリンダが仲良く談笑する場面や、パティやモーなど奥さんたち、
ジョージ・マーティンやマル、グリン・ジョンズもいる。
屋上ライヴ後も淡々とリハ作業が続いたり、案外繋げていない間延びした演奏がリアルだった。
逆にいえば、よくここから2作ものアルバムを出したていう手腕が素晴らしい。
後に起こる解散劇を知っているだけに、また複雑な心境。
でもさ、なにをおいてもビートルズはバンドなんだよね。
演奏するFAB4、それを50年を経て、観るコトができた幸せを噛み締めます!
楽しそうに浮かれるジョンがいい!
2021年12月6日 FB

ここで一応整理しておこう。
この映画に並行して、2作のスタジオアルバムが生まれる。
「アビイ・ロード(1969)」と「レット・イット・ビー(1970)」だ。
ややこしいのが「アビイ・ロード」が先に発売され、その次作が「レット・イット・ビー」となるところ。
実際には同じ"ゲット・バック・セッション"であるが、「アビイ・ロード」は解散決定後にもう一度セッションしたものが本筋で、「レット・イット・ビー」はフィル・スペクターによって編集された切り貼り。
まぁ前後散り散りになってるとはいえ、「レット・イット・ビー」は「ゲット・バック」というタイトルで発売する予定が、バンド自体が投げてしまいなんとか発売に至ったラストアルバムとなる。
経緯は諸説たくさんあるし、なにしろビートルズの音楽は魔法だ。
どう切り貼りしようがマジックは変わらないし、どちらのアルバムも大好きだ。

それを踏まえての、フル映画「レット・イット・ビー」である。
小さい頃、角川映画「悪霊島(1981)」にこの曲が使われ、それからあの寒々しいスタジオでのプロモ映像を何度となく目にした。
「レット・イット・ビー」は宗教的に感じたし、「ロング・アンド・ワインディング・ロード」はポール節が強過ぎて、これを境にバンドが分断されていく事を知るにつれ、暗いイメージがついてしまった。

でもさ、このたびちゃんと映画を見て、やはりすごいバンドだと改めて思います。
ジョンはヨーコを連れ立って物見遊山、ジョージは逃げ出し、リンゴも自信喪失し、ポールは自信満々だけど、
4人それぞれがその時にに出来うる限りあらゆる手立てを取っていて、間違いはないのです。
誰もがそうですけどね、比べるべくもないけれど。
この素晴らしき4人は、たかが10年余りの活動で世界を席巻し、音楽で革命をもたらして、さっさと散っていったのです。
その幕引きに相応しい映画だ。
"ルーフトップ・コンサート"(アップル本社屋上ゲリラライヴ)
66年以来、ライヴを行わずスタジオ作品のみを提供していた彼らが突発的に行った、ビートルズとして最後のライヴがこの映画のハイライトだ。
カッケーなー、おい!

I'd like to say 'thank you' on behalf of the group and ourselves,
and I hope we passed the audition!
グループを代表し「ありがとう」を申し上げます。オーディションに通ると良いのですが)

John Lennonが最後に放つ言葉は、いかにもビートルズの愛らしさ。
Fab4、4人が揃ってないと、こんな魔法は生まれない。
今はちゃんと言えますよ、大好きなバンド!って

浮かれすぎなジョンw