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【鉄面皮日記】23/07/06. 箱男。

ていう小説ありましたね、安部公房氏ので。
随分と昔に読んだけどまだ持ってるかしら、「砂の女」と共に人の本質をグサリとするような話だったような気がする。
ルポタージュっぽくてさ、今のネット社会の匿名性にも通ずるような、
いやもうほとんど忘れてる。
もう一度読まないと、とか云っちゃってね、イヤだなぁ
"Life is very short"ってビートルズも歌ってたよな。
急がなけりゃって急かせれちゃって、それもイヤだなぁ。
ゆっくり本とか読んで、漫画もいいな、映画もいいな、あの娘とイチャイチャもいいな。
なに云ってんだか、もうこの時点で話の核点を消失しています。

夢の中に猫が出てきた。
棺桶のような粘土質の物質を掘り出すと、子猫が出てくる。
一匹、二匹、そうして三匹、生まれたての子猫がじゃれついてきて、そりゃもう可愛いのなんのって。
そうして大きな型を掘っていくと子馬が出てきて、それもとても可愛くて、まだ立てないけれど擦り寄ってくる。
初めて見た顔を親と思い込むらしい、ていう鳥の話みたいに、ヤツらは自分を親と思い庇護してくれと擦り寄ってる。
そんなイチャイチャもいいな、と幸せな気分で起床した今朝だった。

今の仕事は、工場の倉庫でベルトコンベアーに乗って運ばれてくる様々なサイズの箱を地域別に仕分ける作業です。
そうやって長ったらしく説明するとなんだから、いわゆる"箱男"でいいじゃないか、と思った次第。
まさに箱男だよな、気温30度を超えた蒸し蒸しする空調の悪い倉庫で、延々と荷運びする老人たち。
箱は大小様々、軽いのもあればクソ重たい箱もあって、持ってからのお楽しみ。
映画『ノマドランド』を見て、そんな寡黙な作業に少し憧れていたが、あっちは梱包の方だな、こちらは仕分けだな、と思ったがどちらもさして変わりはないな、と言い包め、淡々と荷運びする労働。
箱男たちは時間給、決められた時間、その無限とも感じる時間を各々やりくりし汗だくとなるのである。
まぁ楽しくやろうよ、その労働の中では、誰を殺そうが、何をぶっこもうが、世界を滅ぼそうが、妄想の中ではお咎めなし、
憎いあん畜生の顔めがけ、たたけ! たたけ! たたけ!
って呪詛しながら、舌打ち繰り返す。
呑気な唄もいいな、唄っていうものの起源も知れる。
こうやってループする仕事向きのリズム、辛い労働にはそれを反転させるような明るさや能天気さ、でも飽きてくるから直球の苦情や愚痴、責任転嫁、そうしてだんだんただのリズムだけが残り、テクノか音頭か、機械なのか鼓動なのか、無我へと行けたら幸いだ。
その仕事と一体化が図れれば、それは禅でいう無我の境地。
私利私欲、煩悩は消え去り、涅槃へと突き進むのだ。
なんて頭ん中で思考してるうちはぜんぜんそれはやってこなくて、無我夢中、一心不乱ていう状況にならないとダメ。
そうなんだけどそうなってる時は意識が遮断され、身体だけ反応して動いているので、それもダメ。
そしてもっとダメなのが、それを意識下に置いておきたいという自意識、それがある限りずっとダメ。
ダメダメなので、僕はいろいろと計画を練る。
コトバにして宣言しないよ、そうすると制約を受けてしまい囚われちゃうから。
暗黙の内にコトを為すのだ。
なにせ "Life is very short" だもんね。