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「デザインプログラムマネージャー」は、日本のデザイン文化を変える新たな役割になる

2021年10月24日、root 代表の西村が日本最大級のデザインカンファレンスDesignshipの「それデザイナーの仕事じゃないですよね? を解決するデザインプログラムマネージャー」に登壇。

セッション内にて、日本におけるデザインプログラムマネージャーの可能性についてお話します。本記事では、その内容を補足しながら、日本におけるデザインプログラムマネージャーの必要性についてお届けします。

セッション内でご紹介したイベントは11月24日(水)開催予定です。
ぜひご参加ください。

日本の組織に存在する「デザインギャップ」

日本においてデザイナーと非デザイナーの間には、デザインの認識の違いから生じるギャップが存在します。デザイナー以外の人にデザインが理解されておらず、それゆえに様々なすれ違いが起きています。

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こうした課題は、デザイナーの立場からデザインを主語に語っていても解決されません。非デザイナー側の立場にも寄り添ったアプローチが必要です。とはいえ、デザイナーが本来の業務の範囲を越境して対応し続けることも難しい領域。

こうしたデザインギャップを埋めていくためには、デザイナーが踏み込んで非デザイナーとの認識を埋めるのではなく、「デザインプログラム」を構築してギャップを埋めること。デザイナーは本質的なデザインを担えるようになるのが本来あるべき姿だと考えています。

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デザインプログラムは、Design Ops(=デザインの価値と影響を増大させるために、人材とプロセス、プロダクトを組織化して、最適化すること)にも関係していきます。こうしたデザインプログラムの実行を担うのが、デザインプログラムマネージャーです。

創業期にデザインプログラムをインストールする

世界に名高いデザインコンサルティング会社Adaptive Pathの創設者であるピーター・メルホルツ氏が著した『デザイン組織のつくりかた』のなかで、デザインプログラムマネージャーは「デザイン業務を円滑にすすめることへの責任を負う」と記載されています。

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デザイン業務を円滑にすすめることへの責任を負うとは、言い換えるなら以下のようなオペレーション的な役割を担います。プロダクト開発を俯瞰した立場からデザインの過程を体系化し、プログラム化することで、両者の間に生じている課題を解消し、円滑なデザイン業務を実行するためのアプローチをとります。

・優先順位のファシリテート
・マイルストーンの特定
・リスク管理
・コミュニケーションの合理化
・プロセスの明確化
・業務におけるツールの選定
・必要な人材やリソースの確保

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デザインに対する理解等も進んでいる海外では、デザインプログラムマネージャーは注目の役割になっています。Netflix、Facebook、Dropbox、stripe、Google、Twitterなど、著名なプロダクトを手掛けているグローバルなテックカンパニーには同ポジションが存在しています。

一方で、こうした役割は日本企業においてはまだ確立されておらず、ほとんどの場面では必要性すら理解されていないのが現状です。仮にデザインプログラムマネージャーの必要性が語られていたとしても、デザイン組織のなかでの役割として認識されていることが多い。

日本においては、海外のように組織全体でデザインの役割が理解されているなかで組成されている役割と同様に扱ってしまうと、経営や組織がデザインを理解し活用できていない日本企業においては、先述のデザインギャップが解消されません。そのため、日本においては創業まもない若い組織にデザインプログラムを導入していくことで、組織の風土となる価値観にデザインの考え方を定着させるべきだと考えます。

デザインの再現性・効率性を担う役割

創業期からCDOやCXOのような人がいる場合、デザインに理解のある組織として成長していくこともありますが、多くは属人的に突破していくしかない状況があります。そうすると、デザインに理解ある組織になれるケースは非常に限られます。

そのため、創業期から関わるデザインプログラムマネージャーが目指していくのは、デザインの属人性を下げ、再現性を高めていくこと。そのため、日本においてデザインプログラムマネージャーが担うべき役割は、以下の3つがあると考えています。

1. デザイン業務の体系化
2. プロダクト開発サイクルに顧客視点を導入
3. デザイナー育成環境の整備

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デザイナーの業務が属人化したままでは事業拡大の足かせになります。デザイン業務を体系化し、プロセスを整備していくことで、非デザイナーでもデザインを理解し、判断できる環境を構築します。

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デザインプログラムは事業や組織全体に寄与するものでなければなりません。事業やプロダクト開発のサイクルに顧客視点を導入し、顧客起点でのプロダクト開発が実現できる開発環境をつくります。

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業界における課題として若手デザイナーが経験を詰める環境が少ないことが課題となっています。属人化を解消し、プロセスを定着させると、新たなデザイナーの育成環境が整備されます。属人的に経験あるデザイナーが担っていた業務が体系化されることで、経験の浅いデザイナーでも挑戦可能な業務が生み出され、学習が促されます。

この取り組みは、最初から仕組みにすることが難しく、プロセスなどは進めながら徐々に仕組みになっていきます。現在も創業期からデザイナーとして関わっている人がその役割を担っていることもあります。デザインプログラムマネージャーとして役割を設定していくことで、事業成果につながる実務に専念するデザイナーと、実践知の体系化や学習の仕組みをモデル化し組織の資産にしていくデザインプログラムマネージャーが並走することが必要と考えています。

日本でデザインプログラムマネージャーを増やすために

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rootでは、事業成長に貢献するために創業期から伴走し、組織学習をベースに相互に実践と学習を通じた成長支援を行っています。その支援の先に、顧客起点での事業開発体制の構築や自走可能な組織が生みだされることを目指しています。

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その実現を目指して、rootでは3つの支援を行っており、その1つであるデザイン組織開発支援チームにデザインプログラムマネージャーを組成し、デザインファームとしてクライアントに顧客起点の開発組織の導入を支援しています。

rootのこれまでの活動に関する関連記事:

日本におけるデザインギャップは社会課題です。
その解決のための手段がデザインプログラムであり、日本の事業成長において必要なのはデザインの民主化だと root は考えています。

デザインの民主化とは、誰もがデザインを理解し、活用できる社会にすること。そうすれば、デザイナーはより本質的な問いに向き合い価値を生み出せるはずです。

このチャレンジは root 一社で行うものだとは考えていません。
そのため、積極的にノウハウを共有し、より多くの組織へ導入を促していきたいと考えています。11月には、デザインプログラムマネージャーについて考えるイベントを開催します。root 内でのデザインプログラムに対する活動内容の共有とご参加いただいた方それぞれの組織での課題意識やケースを交えて交流する機会となります。関心のある方はぜひご参加ください。


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