僕だって「仕方ねぇな」みたいな顔で登場したかった

その誕生を喜ばれたはずなのに、私もあなたも。

気づけば、存在するだけではダメで何かしらを貢献をしなければいけない。

義務を果たさなければいけない、納税しないと働かないと教育を受けさせないと、会議に出たら発言をしないと、飲み会に来たらなら楽しそうな顔をしないと。

このなんとも言えない息苦しさ。
あぁ、存在しているだけで許してもらえたあの時には戻れず、常に、そこにいる意味を探している。そこにいる意味を誰かにプレゼンテーションできなければいけない毎日にいる。

今日早めに提出したプレゼン資料。
そのスピード感と内容に対して上司から称賛の言葉をもらえるだろうと踏んで、パソコンの前で待っている自分の気持ち悪さに、自分の嫌なところの輪郭を掴んだ気がした。

難しいことも真面目なことも分からないけど、繊細な感性で切り取った独特の視点で“何か”になれると思っていたあの頃の痛さを思い出して、否定しつつも肯定してあげたい気持ちになる。あの頃を完全否定できないほどに、あの頃の延長線上に今の僕も、明日の僕もいる。

そうずっと、「仕方ねぇな」みたいな顔がしたかった。

他校の女子と交流していた彼。
学校帰りに集まっていたフードコートで他校の女子と交流し、そのフードコートで毎日起きていたことをブログに書いていた彼。ある日、ブログに鍵をつけてフードコートに来ている人たちにしか分からないパスワードを設定した彼。「ねぇ、パスワード教えてよ」と冗談混じりに声をかけると、彼の得意げな横顔に書いてあった「仕方ねぇな」の文字。

文化祭委員の彼。自分で立候補してなったはずなのに、聞いてもいないのに、「最近、文化祭のための準備でほんと寝れてなくてさぁー」と言っていた彼の横顔に書いてあった「仕方ねぇな」の文字。

飲み会に遅れてきた彼女。この飲み会が終わった後も、業界の人に呼ばれちゃって麻布十番に移動すると言っていたあの子の横顔に書いてあった「仕方ねぇな」の文字。

存在しているだけで肯定されていた、あの頃はもう帰ってこない。

何かしらの義務と貢献を果たし、他者から承認されなければいけない。

承認された人間の横顔には必ずと言っていいほど「仕方ねぇな」の文字が浮かび上がっていた。その横顔が羨ましく、妬ましい。

僕だって、「仕方ねぇな」みたいな顔して登場したかった。

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