見出し画像

ほどける【詩】


このままずっと夜がいいと
こぐま座のしっぽを掴みました

このままずっと冬がいいと
渡り鳥たちを抱き締めました

いやだいやだと駄々をこね
ぎゅうぎゅう固めて捕えては
変わらないでと握りしめ
変わりたくないと泣きわめき
しまいに疲れて眠りました



起きたら空気はあたたかく
皮膚をほわりと包んでいました

木蓮の冬芽からは
初めて世界に出たばかりの
花びらが零れていました

あまい香りをついばみにきた
ヒヨドリもいました

ほかの蕾たちも
もうふっくらと膨らんでいます

うぶ毛はふわふわと煌めいています
次に降り注がれる光の中で
喜びと共に花開くのでしょう


放たれる色も香りも造形もきっと
私に幸せをもたらすでしょう

命を繋ぐ命は私に
愛と調和を教えてくれるのでしょう


私も私をほどくことにして
掴んでいた夜と冬を逃がしました
力を抜いてありがとうと手放し
胸いっぱいに
あたたかな光を吸い込みました

春の息吹きは体内に
蕾に
ヒヨドリに
萌出ずる緑に
柔らかな土に空気に
目覚める生き物たちに
星に山に雲に水に
めぐりめぐり命を繋げる

小さく見えるひとつの中の
大きな喜びと力 その意志

まるの中の無限のまると
まるの外の無限のまるが
ここに合わさる
真ん中でただひとつに

私は目を開いて
手を広げて
香りを嗅いで
そして


優しい木蓮に挨拶がしたくて
指先でそおっと
綺麗な命に触れたのでした











サポートありがとうございます!とっても励みになります。 いただいたお気持ちはずっと大切にいたします。 次の創作活動を是非お楽しみにされてくださいね♡