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国が滅んでも財政規律を守ってさえいればご機嫌な財務省の愚かさ 安倍晋三回顧録を読んで

保守のプリンスと期待され52歳という戦後最年少の若さで安部第一次内閣は2006年9月に発足したが、参議院選挙の大敗と安倍総理自身の体調不良により1年後の2007年7月には総辞職となった。
その後自民党内で福田、麻生と続いたがその後政権交代し民主党で鳩山、管、野田と変遷しました。
2012年の自民党総裁選挙に安部さんが再度立候補したときには、妻に「安部さんが総理になるよ」と言ったのですが安部嫌いの妻はまさかそんなことはないだろうと、といった反応だったことをよく覚えています。
その年の野田総理との党首討論で野田さんから「解散する」との言質を引き出し、総選挙で勝利し本当に第2次安部内閣が発足したときにはうれしかったものです。
その安部さんの第一次内閣から2020年9月に退陣するまでの回顧録です。
インタビュー形式で年代ごとにまとめられているので非常に読みやすく懐かしく感じられました。
その中で印象に残った内容をいくつか紹介したいと思います。
一つ目はやはり財務省に関してです。安部さんは第二次内閣からは第一次内閣の反省を踏まえて経済の立て直しを最重要課題として取り組んだと言っています。
アベノミクスと称してデフレ脱却に力を注ぎましたが結果から見ると未だ道の半ばといった感が否めません。
特に景気が良くない時期の消費税増税はやるべきではなかったと思いますし、安部さんもかなり抵抗していたようなのですが結局は財務省に押し切られる形で増税に踏み切ります。
「彼らは国が滅んでも財政規律が保たれていればそれでよい」「総理大臣がいうことを聞かなければ平気で総理の首をすげ替えに来る」などの発言は非常に生々しく、安部さんが何と戦っていたのかをよく表していると思います。
森友学園問題は財務省の仕掛けた罠だという認識もさもありなんという感じです。
そもそもこれは近畿財務局のチョンボを昭恵夫人や安部さん本人からの指示があったかのように印象付けたものですから、財務省の面の皮は鋼の錬金術師も真っ青といったところです。
安部さんも財務省が安部さんを守るために文書改ざんなんてやるわけがないとおっしゃっています、安部さんを下ろしたいのだから。佐川元局長の指示で財務省自身を守るために改ざんしたことは明らかです。森友学園事件で問題があったとしたら財務省自身と籠池夫妻でしょう。
二つ目は、全体のトーンとして安部さんが「私がやりました」という感じがまったくせず、常に一緒に戦った仲間や部下を立てる謙虚さが印象に残りました。
特に総理補佐官の今井尚哉さんやスピーチライターの谷口智彦さんに言及した部分はとても多く、安部さんから信頼されていたことがよく伝わってきます。
また、安倍内閣が憲政史上最長となった要因を聞かれ「第一次内閣で失敗したからその後の内閣を安定的に運営できた」と答えているのが印象的でした。
第一次内閣は1年という短期の内閣でしたが、いろいろとご苦労があったようです。その経験があったからこそその後の長期政権が築かれたというわけです。
第一次内閣で苦労した仲間にもう一度声をかけて第二次内閣に協力してもらったというくだりはグッとくるものがありました。
安部さんご本人がインタビューに答えているのですから、話せないことには言及していないはずですし、又話せないことは聞いていません。
それでも我々が生きた2006年から現在まで政治の舞台で何が起きていたのかを知る一級の資料となっていると思います。
是非一読を勧めます。

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