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「防衛大学校って?」を法律で考察!

そもそもどんな学校…?

学校の概要

 防衛大学校は、自衛隊の幹部(となるはずの者)を育てる学校です。略称は、防大、防衛大、某A大など様々ですが、中の人は防大をメインで使っている気がします。
 普通の大学とは異なり、文部科学省所管ではなく防衛省所管の学校であり、そのために「大学校」という言葉が使用されています。よく「防衛大学」という言葉を耳にしますが、厳密には誤用です。

ラグビー場(引用元:https://www.mod.go.jp/nda/about/campus.html)


実際の様子は?

 最近は自衛隊として広報にも力を入れている関係で、メディア露出も多くなってきました。その中で防衛大学校への取材などもよく見かけます。
 また、メディア以外にもSNSの発達などにもよって、これまで神秘のベールで包まれていた防衛大学校の内部の情報も、比較的入手が容易になりました。
  そうなるとよく耳にするのが、「パワハラが横行してそう」、「とにかくヤバい」、「上下関係が絶対的」などの噂。 その話は別の機会で書きたいと思います!
 が、「もったいぶるな!」と思われる方もいらっしゃると思うので、是非アンサイクロペディアというサイトをご覧ください。少なくとも私が在校していた当初の状況に極めて近いので。

https://ansaikuropedia.org/wiki/%E9%98%B2%E8%A1%9B%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E6%A0%A1

防衛大学校の校章(ハトは平和の象徴らしい…)


法律等でみる防衛大学校

防衛大学校は大学なのか

 冒頭でも記載した通り、防衛大学校は大学ではありません。
 そもそも日本の学校教育法には、「大学校」なるものは規定されていないのです。

第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

昭和二十二年法律第二十六号『学校教育法』

 大学校とは、それぞれの法律で規定されており日本全体として「大学校とは」といった定義がされていません。


防衛大学校の定義

 では、防衛大学校は何の法律で規定されるかというと… 

第十四条 本省に次の施設等機関を置く。
  防衛大学校
  防衛医科大学校
第十五条 防衛大学校は、幹部自衛官(三等陸尉、三等海尉及び三等空尉以上の自衛官をいう。次条において同じ。)となるべき者の教育訓練をつかさどる。
   前項に規定するもののほか、防衛大学校は、同項の教育訓練を修了した者その他防衛大臣の定める者に対し自衛隊の任務遂行に必要な理学及び工学並びに社会科学に関する高度の理論及び応用についての知識並びにこれらに関する研究の能力を修得させるための教育訓練を行うとともに、当該研究を行う。
   防衛大学校は、自衛隊法第百条の二の規定により防衛大臣が第一項に規定する者に準ずる外国人の教育訓練を受託した場合においては、当該教育訓練を実施する。
   防衛大学校の位置及び内部組織は、防衛省令で定める。

昭和二十九年法律第百六十四号『防衛省設置法』

 と、防衛省設置法第十四条によって設置が定められていることが分かりました。
 同条第十五条第四項によれば、防大の位置・内部組織が防衛省令で定められることになっています。

設立当初の防大
(引用元"http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2002/clmphoto/frame/cp145009.htm")


防衛大学校の位置・内部組織

 次に、先ほど触れた防大の位置・内部組織に関する省令、『防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所及び防衛監察本部組織規則』を見てみます。

(位置)
第一条 防衛大学校は、神奈川県に置く。
(学校長)
第一条の二 防衛大学校の長は、防衛大学校長(以下この章において「学校長」という。)とする
   学校長は、教官をもつて充てる。
   学校長は、防衛大臣の指揮監督を受け、校務を掌理する。

昭和二十九年法律第三十九号
『防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所及び防衛監察本部組織規則』

 この省令によって、防衛大学校が神奈川県に設置されることが規定されています。
 また、防衛大学校長は「防衛大臣の指揮監督を受け」るとされていることから、防衛大学校は防衛大臣直轄の組織であることも読み取れます。
 さらに、防衛大学校には①本科、②理工学研究科及び③総合安全保障研究科を置くことが規定されています。ここでいう②と③は、普通の文部科学省所管大学でいうところの大学院に相当します。つまり防大には、大学生に相当する「本科学生」と、大学院生に相当する「研究科学生」が所在しています。ちなみに「防大生」は、特別な断りがなければ本科学生を指します。

防衛大学校の位置づけ(引用元"https://www.mod.go.jp/j/profile/mod_sdf/index.html")


防衛大学校学生の身分

自衛隊員?自衛官?

 まず、自衛隊員と自衛官という言葉は同じ意味ではありません。しかし、テレビで「自衛隊員は…」あるいは「自衛官は…」という言葉をよく耳にしますが、厳密に使い分けられている印象は受けません。


防大生は自衛官なのか

 ではその違いも含めて、「防大生は自衛官なのか?」について法律の観点で見てみましょう。「自衛官」という言葉は、防衛省設置法という言葉で出てきます。

(自衛官の定数)
第六条 自衛官の定数は、陸上自衛隊の自衛官(以下「陸上自衛官」という。)十五万二百四十五人、海上自衛隊の自衛官(以下「海上自衛官」という。)四万五千四百十四人、航空自衛隊の自衛官(以下「航空自衛官」という。)四万六千九百七十六人並びに自衛隊法第二十一条の二第一項に規定する共同の部隊に所属する陸上自衛官、海上自衛官及び航空自衛官千七百三十二人のほか、統合幕僚監部に所属する陸上自衛官、海上自衛官及び航空自衛官三百九十四人、情報本部に所属する陸上自衛官、海上自衛官及び航空自衛官千九百三十六人、内部部局に所属する陸上自衛官、海上自衛官及び航空自衛官五十人並びに防衛装備庁に所属する陸上自衛官、海上自衛官及び航空自衛官四百七人を加えた総計二十四万七千百五十四人とする。

『防衛省設置法』

 少しわかりづらい記載ですね。
 記載にある「自衛隊法第二十一条の二第一項に規定する共同の部隊」とは、東北大震災で編成された「災JTF-東北」のような部隊を指します。

第二十一条の二 陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の防衛大臣直轄部隊(陸上総隊、方面隊、自衛艦隊、地方隊、教育航空集団、練習艦隊、航空総隊、航空支援集団、航空教育集団及び航空開発実験集団を除く。)は、統合運用による円滑な任務遂行上一体的運営を図る必要がある場合には、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊の共同の部隊として置くことができる。

 前項の共同の部隊の運用に係る防衛大臣の指揮は、…

昭和二十九年法律第百六十五号『自衛隊法』

 つまり、防衛省設置法によれば

自衛官の定数 = 
 陸上自衛官 + 海上自衛官 + 航空自衛官 + 統合部隊の陸海空自衛官 + 
 統合幕僚幹部の陸海空自衛官 + 情報本部の陸海空自衛官 +
 内部部局の陸海空自衛官 + 防衛装備庁の陸海空自衛官

 ということになります。

 さらに、同法第十八条を見ると防衛大学校学生は防衛省職員の定員外とする旨が記載されています。

(学生)
第十八条 防衛大学校の学生(第十五条第一項の教育訓練を受けている者をいう。)及び防衛医科大学校の学生(第十六条第一項の教育訓練を受けている者をいう。次項において同じ。)の員数は、防衛省の職員の定員外とする。

 防衛医科大学校の学生…

『防衛省設置法』

 以上のことから、防大生は職員数に含まれていないため自衛官の数にも含まれないことが分かり、少なくとも防大生が自衛官ではないと言えます。

防大生は自衛隊員なのか

 次に、自衛隊員(以下、隊員)であるかどうか確認します。
 隊員についても防衛省設置法に定義されています。

(定義)
第二条 この法律において「自衛隊」とは、防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官、防衛大臣補佐官、防衛大臣政策参与及び防衛大臣秘書官並びに防衛省の事務次官及び防衛審議官並びに防衛省本省の内部部局、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛会議、統合幕僚監部、情報本部、防衛監察本部、地方防衛局その他の機関(政令で定める合議制の機関並びに防衛省設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)第四条第一項第二十四号又は第二十五号に掲げる事務をつかさどる部局及び職で政令で定めるものを除く。)並びに陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊並びに防衛装備庁(政令で定める合議制の機関を除く。)を含むものとする。
   この法律において「陸上自衛隊」とは、…。
   この法律において「海上自衛隊」とは、…。
   この法律において「航空自衛隊」とは、…。
   この法律(第九十四条の七第三号を除く。)において「隊員」とは、防衛省の職員で、防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官、防衛大臣補佐官、防衛大臣政策参与、防衛大臣秘書官、第一項の政令で定める合議制の機関の委員、同項の政令で定める部局に勤務する職員及び同項の政令で定める職にある職員以外のものをいうものとする。

(自衛隊の任務)
第三条 (略)

(自衛隊の旗)
第四条 (略)

(表彰)
第五条 隊員又は防衛省本省の防衛大学校、防衛医科大学校、情報本部、防衛監察本部、地方防衛局その他の政令で定める機関、自衛隊の部隊若しくは機関若しくは防衛装備庁の施設等機関で、功績があつたものに対しては防衛大臣又はその委任を受けた者が、特に顕著な功績があつたものに対しては内閣総理大臣が表彰する。
   前項に定めるもののほか、自衛隊の表彰に関し必要な事項は、政令で定める。

『防衛省設置法』

 この法律の中で、防大生と隊員の関係性について明確な形(わかりやすい形)では記載されていません。よく読んでみると、第二条第五項では「防衛大臣、防衛副大臣、・・・、及び同項の政令で定める職にある職員以外のもの」と記載されています。防大生はこの中に該当しません。したがって、防大生は「自衛隊員である」と言えます。

 しかし、ややこしいことに表彰の項目では、「隊員」という言葉と「防衛大学校…の施設等機関で、功績のあつたもの」が又はで連結されています。つまり、同法の中では「隊員」と「防衛大学校…のもの」は別々の言葉で、自衛隊員ではないのか…?とも考えられます!!

 この答えは、実は防衛大学校の公式サイトにあります。

Q3 授業料がかからないって本当?
A3 防衛大学校学生は自衛隊員(特別職国家公務員)であり、学業、訓練に専念することが仕事です。このため入学金や授業料がかからないばかりか、毎月学生手当として給与が支給されます。したがって、一般大学とは違い、病気等やむを得ない場合を除き自分の都合だけで授業や訓練を休んだりすることはできません。

『受験生のための防大相談室』
(https://www.mod.go.jp/nda/admissions/soudansitsu.html#:~:text=A3,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82)

 と、いうことで防大生が自衛隊員であることは間違いなさそうです。

防大生の身分は自衛隊員!

 以上のことから、「防大生は自衛隊員であるが自衛官ではない。」と身分が明らかになりました。

おわりに

 防大生・自衛官は国家公務員ですので、国の法律を厳格に遵守する義務があります。よって、この記事のように自身の立場や身分について何の法律で規定されているのか?という点については、説明できるべきだと私は思います。
 また、こうした根拠に基づいた仕事は幹部自衛官には必須の能力です。陸士や陸曹といった現場の隊員が全力で任務に励むためには、部隊の合法性を確保しなければならず、それは指揮官や指揮官を補佐する幕僚の責任であり、つまり幹部自衛官の責任です。


…おまけに

 3月後半のいま、CGS1次試験を合格した方は絶賛2次試験の準備中かと思います。法律や規則、その他国際法等の準拠とすべきものを抑えておくことは重要だと思います。
 2次試験の模試では、3回目以降諮問を終えるたび「君みたいなのと仕事がしたいねぇ」とか「君が俺の部隊の幕僚で来てくれたらなぁ」とべた褒めされた一つの要因に、確実に根拠を抑えて主観や感情に依らない説明ができたことがあると思います。
 この記事が参考になるかはわかりませんが、こんな感じで普段の業務やこれまで行ってきた業務について、
 ① そもそも何故この業務を行っていたのか
 ② この業務を行うのがなぜ自分だったのか(何の権限でやってたか)
 ③ 自身の言動が何故正しいといえるのか
 ④ 自身の取り組みが、何の根拠で役に立つといえるのか
こんな風に分析すると、また一つ理解が深まるかもしれません。
 CGS試験も#70から少し要領が変わりましたが、比較的直近の試験を受けているので受験生の方の悩みは多少わかると思います。なにか相談に乗ってほしい!等の要望があればぜひお声かけください!
 体と家族を大切に頑張ってください!

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