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ベースボールとアジャイル

はじめまして、日本IBMの齋藤です。普段は全社アーキテクチャ(Enterprise Architecture)構想策定やIT戦略策定に関するコンサルティングを中心に活動しております。社会人歴は20年程ですが、アジャイルを本格的に学びだしたのはここ数年で、このコミュニティにも最近参画させてもらった新参者です。どうぞよろしくお願いします。

何はともあれWBC

さて、先月('23/3)開催されたWBCに感動をもらったという方、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。私も小中高と野球をやっていたものとして心躍った一人です。日本国内では競技人口の減少やファン層の高齢化が進むなか、普段野球を観ない方を含めて盛り上がる大会になったことは、いちファンとして嬉しいかぎりです。また、いちアジャイルコミニティメンバーとしては、勝手ながら選手や首脳陣からアジャイルな振る舞いやマインドセットを感じずにはいられませんでした。

日本の選手、首脳陣から感じたアジャイルな振る舞いとマインドセット

チームの精神的支柱と言われたダルビッシュ有投手は、投球の計測機器(ラプソード)を携え「楽しみながら」変化球のレパートリーを増やし続け、サプリメントやトレーニングについても常により良いものを追求しており、まさに"探索と適応"を体現する存在と言えるのではないかと思います。今回の日本代表期間中も、常にオープンマインドで若い選手達の相談に応じ、チームに馴染めない選手のために食事会を開いたり、メンタリングや場づくりも担っていたように見えます。
また栗山監督は選手のパフォーマンスを最大化するための環境作りに奔走し、最後は選手達を信じて送り出すという、サーバントリーダーシップを実践されていたと思います。これは日本ハムの監督時代から一貫していましたが、今回日本代表として選りすぐりの選手達を預かったことで徹底されている印象を受けました。
上記のような環境下で選手達が思う存分躍動したことで、ただ優勝したというだけでなく、強さとともにある種の「すがすがしさ」を観るものに与えてくれたのではないかと思います。

WBCの胴元(MLB)が進めるアジャイルな変革

ところでこのWBCは、オリンピックやサッカーのW杯などと違って、アメリカのいちプロリーグであるMLBが主催する大会であること、競技のファンでない方は案外知らないのではないでしょうか。

運営組織については、オリンピックのIOC(国際オリンピック委員会)、サッカーW杯のFIFA(国際サッカー連盟)のように、国際大会は世界を束ねる中立的な立場の組織が主催することが多いが、WBCの場合は一国のプロリーグであるMLBの機構・選手会が共同出資して作った運営会社が開催している

出典:Wikipedia

アメリカ国内ではNFL、NBA等の人気スポーツに押され気味の"ベースボール(≒MLB)の市場拡大"という野心をもって開かれている大会がWBCなのです。薬物問題や労使協議など、MLBが多くの課題を抱えている(いた)ことも事実ですが、一方で近年のMLBで行われている様々な変革には、ベースボールの"娯楽性"と"競技性"、言い換えれば顧客体験とプレーヤー体験のバランスを注意深く見極めながら、"ベースボール"の魅力をより高めようという一貫した強い意志を感じます。
その一例が2015年にMLBのすべての本拠地球場に導入された"スタットキャスト"です。

スタットキャストは、レーダーを利用したトラッキングシステムによって、投球や打撃、走塁、守備といった選手のプレーやボールの「動き」を直接的かつ瞬時に測定し数値化したものをデータとして算出するため、セイバーメトリクスとの併用によるより高度な「選手の評価」の実現はもちろんのこと、その分析によって「選手のパフォーマンスや能力そのものの改善」にも活用することができる。(中略)スタットキャスト導入の影響として最も代表的とされるのが、新たな打撃理論「フライボール革命(fly ball revolution)」の流行である。

出典:Wikipedia

フライボール革命(またその対抗策としての投手のアプローチアングル)に深入りするのはコミュニティの特性鑑み自重するとして(笑)、スタットキャストがもたらす"メトリクス"によってプレーの質が変わり、また観戦する側も球場やTV画面でリアルタイムに表示されるメトリクスによってプレーの新たな楽しみ方ができるようになりました。

アジャイルの実践においても、そもそもどのようなメトリクスを計測するかがチームの振る舞いやパフォーマンスに大きく影響するというのは多くの方が感得するところではないかと思います。

他にもMLBでは'23シーズンから複数のルール変更が行われていますが、そのどれもが"娯楽性"と"競技性"のバランスを考慮した結果と感じられます。新たなルールの成否も、計測し評価されることでしょう。また、もっとラディカルな変更も色々と検討されているようです。
プレーそのものもさることながら、プレーの質の変化、またMLBの変革施策等にも注目しながら、新たなシーズンを楽しみたいと思います。

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