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アジャイルでケーキは作れるか?

徐々に日差しが強くなり、そろそろ夏本番に近づいてきましたね。みなさん体調崩していませんか?
日本IBMの守谷です。今回は3回目の投稿となります。

さて、私はIBMではアジャイルの基本的な知識を学ぶ研修の講師をしたりしています。その中で以前は説明するのに良いと思っていたのですが、最近、どうも納得がいかないといった記載があります。本日はその記載について少し考えてみたいと思います。

ホールケーキ vs ショートケーキ

ケーキは、アジャイルの説明をする時によく使われる例です。「アジャイル」「ケーキ」で検索すると、例に例えたアジャイルの説明が出てきます。曰く、アジャイルでは、イテレーションで動くもの・リリース可能なものを作り出すことが重要とされており、ホールケーキを作る場合、土台、スポンジ、クリーム層、上の飾りといったバラバラで作るとイテレーションごとのリリースはできず、最終的な完成品しかリリースできない。=これはウォーターホールの例となる。
イテレーションごとにリリースするためには、ショートケーキのようにそれだけで食べられるものを小さく作り、顧客要望に合わせて色々変化させながら作っていく必要がある。
といったような説明となります。

ウォーターフォールとアジャイルを比較する上で、この対比はわかるようであり、わからないような気もする何かもやっとするものを抱えながらも、研修で説明する際には、

  • ショートケーキ=ちゃんとしたケーキとして食べられる

  • ホールケーキの一部=ケーキではない(スポンジだけとか、クリームだけとか、苺だけとかになってしまい、ケーキとして成立しない)

といった説明を行っています。
これ自体は間違っていないと思うのですが、顧客の要望が常に美味しいケーキとは限らない?と思ったところで違和感を感じました。

例えば、

  • 誕生日のお祝いのケーキ=大きなケーキに蝋燭を立て、吹き消すことが一番の目的で、切り分けて配るケーキはその後の付属品

  • 結婚式のケーキ=夫婦で入刀することが一番の目的のケーキ

といったケーキの場合は、やはり大きなケーキをホールで、場合によってはそれ以上に大きく数段で作る必要があります。
では、これのような大きなものが顧客からのリクエストとなった場合は、アジャイルは適用できないのでしょうか?


ショートケーキをアジャイルで作る

実際にはケーキを作る場合、職人さんが一人か二人くらいでかかりっきりで作ります。そうしないと味にばらつきが出るかもしれないし、まとまりがないものになるかもしれないでしょう。
一方で、ショートケーキであれば、同じものを複数の人が作っていくことも、要求に合わせて味を変えたり、形を変えたりすることもできます。
ショートケーキを作って市場に出して、顧客リクエストに合わせて試行錯誤していくといった流れであればアジャイルの手法が役に立つと思います。
そこにKPI使用し、顧客からのフィードバックを正しく受け取り、ケーキ作りに反映していくというサイクルを繰り返すことでより良いケーキを作ることができます。


大きなケーキをアジャイルで作る

では、大きなケーキの場合はどうでしょう。
最初の話にもありましたが、アジャイルの説明で出てくるケーキは、ホールケーキはウォーターフォールで作るものと扱われています。やはりウォーターフォールで作るものなのでしょうか?
私は、次のように考えてみました。

単純なホールケーキの場合(家族用の誕生日ケーキなど)、最初に小さなショートケーキサイズのケーキを作ります。これに対して顧客(ホールケーキの注文者、またはオーナーなど)の評価を受けます。
このフィードバックには、味以外に、蝋燭がきちんと乗るか?プレートを置いても崩れないか?切り分けた時に綺麗に切り分けられるか?といったお誕生日ケーキとしての要求もチェックされます。
フィードバックに対しての対応を行ったら次はそのケーキの大きさを変えて大きなケーキの作成になります。
でも普通は、ホールケーキ程度であれば、一人の職人さんがちゃちゃっと作ってしまうのでここまでの話にはなりません。もしかしたらこのあたりも私の感じている違和感の一部なのかもしれません。

次に、もう少し大きくしてみましょう。結婚式のケーキではどうでしょうか?
これは、ひとりでちゃちゃっとといったレベルではありませんね。
これを作る場合は、ケーキを段ごとに捉え、段ごとに設計、作成し、徐々に大きな一つのケーキにするといった流れになるかと思います。さらに複数の職人さんで、複数の段を作ることも可能です。これは、そのまま大規模アジャイルになるのではないでしょうか?

そうなんです。ホールケーキをウォーターフォールとして考えていたため、それより大きな結婚式のケーキも当然ウォーターフォールで作るもの、と思っていました。でも、実はホールケーキはイテレーションで作られるケーキで、それを積み上げていくことで、結婚式のケーキが出来上がるのです。そしてこれを平行で実行していく・・・つまり複数のアジャイルチームで作成していく・・・と考えると、それは大規模アジャイルになるのです。

なんと、ホールケーキ=ウォーターフォール と考えたところがそもそもの誤り?だったようです。
今では、結婚式のケーキをアジャイルで作るのです!という説明を研修に盛り込んでいけば良いのかなと考え始めています。ただ、そうすると、ウォーターフォールの例をどうするか?これまた悩ましい問題になってきそうですが。

考え方次第で、状況を打開できるもの

今までも大規模だから、期限が決まっているから、ウォーターフォールしか適用できない。といったような話がよく出てきていました。確かに、ウォーターフォールが適切な場合も多く存在していることは間違いありません。しかし、一つの考えにとらわれ過ぎたり、小さな違和感を無視してしまうと、実はこんなこともできるのではないか?といった発想にたどり着けないなと感じました。

こんなどうでも良いこと?を日々考えてしまう、私の日常から、少しお話を切り出してみました。みなさんも、たまには、仕事の合間に、日常にある物事に対して、これはアジャイルでできるかな?どうやったらイテレーションに分けられるかな?など考えてみてはいかがでしょうか?色々考えていると、仕事の中でも新しい発想が見つかるかもしれませんよ。

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