7年ぶりのライブを終えて

前回の記事にも書いた通り、僕がバンドを脱退してから7年近く経った2023年3月8日にライブを行いました。
(バンド脱退から復帰への経緯を書いた前回の記事はこちらになります↓)


当時はフルメンバーでボーカルとギター2人とベースとドラムの編成でしたが、今回からはボーカルとギターとドラムの3人編成です。
近年ではベースレスのバンドもあるにはありますが、そもそも元々弦楽器隊が3人いたのが1人になるというのは非常に大きな変化です。
5人の時には様々な音が鳴っていましたが、3人だととにかく音数が少なくなります。

正直僕自身はせめてあと1人ギターもしくはベースがいないとバンドとして成立しないんじゃないかと考えていました。
ところがスタジオで3人で音を合わせていく中で3人でもできる事があるかもしれないと感じましたし、少人数には少人数の利点と学びがありました。
音数が少ないが故に音が整理しやすく無駄がない事、お互いの音がぶつかりにくい事、足りない部分を補う工夫が見つかる事なども踏まえると完全体とは言えないにせよ学べる事は非常に多いように感じました。

何よりギタリストの彼が3人でもやりたいと強く言ってくれた事が大きいです。
あの天才がそう言うのだから乗ってみるしかないなとそう思わされました。
彼は7年間自分の音をずっと研究していました。
そしてその上で「今ならどこに行っても自分の納得いく音が出せる」と言っていました。
彼の言う通りならこの不利な条件を覆せるかもしれない、やってみる価値はあるかもしれないとそう感じたのです。

そして迎えた3月8日当日。
7年ぶりに出演者としてライブハウスに行き、リハーサルをするというシチュエーションのあまりの懐かしさには感慨深いものがありました。
リハーサルをしてみたところ以前であれば下手にギターとベースが2人いたのにいないのもあって、ステージ上の音が寂しい感じがして正直かなりやりにくさを感じました。
しかし上手側から鳴るギターの音はヘヴィで芯があってそれでいてクリアでキレもあり、その音を頼りに歌うというような印象でした。
また、少人数であるが故にドラムの音もより明瞭に耳に入ってきました。

そしていよいよ本番。
ライブを頻繁にやっていた頃とは全く違う緊張がありました。
7年ぶりのライブ、しかも3人編成でのライブというのは僕にとって大きなプレッシャーでした。
正直なところ1曲目は手探りという感じもありました。
少なくとも僕の感覚では歌唱以外のステージパフォーマンスというのは練習できるものでもなく、その場の雰囲気で即興的に生まれるものです。
また、1曲目はバンドの中でも最も落ち着いたクールな曲であった事もあり、落ち着いたステージングだったように思います。

そして2曲目はバンドの中でも最も激しい「怒り」を意味するタイトルの曲でした。
この曲が起爆剤となり、一気にステージパフォーマンスの感覚を取り戻したように思います。
数年間とはいえ濃厚なバンド活動をしていた僕の中にはしっかりと過去の経験が残っていたんだという事を強く感じました。
過去の自分と今の自分が繋がるようななんとも言えない不思議な感覚に高揚しました。

そしてその高揚と同時にバンド活動をしていた時の良い記憶も悪い記憶も全て蘇ってきましたし、それ以外にも病気で歌えなくなった時の苦しみ、今バンドをやれている喜び、フルメンバーが揃っていない事に対するモヤモヤなど恐ろしいほどの記憶や感情が頭の中を駆け巡るのを感じました。
無意識に蓋をしていた自分の心の扉が開いて、あらゆる喜怒哀楽が一斉に解放されるような体験をしたのです。

この自分の心の扉が開いてくような感覚、普段の自分では到底出せないような爆発的なエネルギーの放出、これぞまさにライブだなと思いました。
これだけのエネルギーを放出する事はおそらく誰にでも出来る事ではないでしょう。
僕が他の何かを犠牲にしてでもずっと音楽だけは続けたいと思っていた理由はまさにそこにあるのです。
自分にしかできない事、音楽でしかできない事、それをやり切る事が僕の生き甲斐であると思い出した瞬間でした。

そして2曲目が終わり、ギターによる間奏を挟んで嵐が過ぎ去ったかのようにバンドの中で最も静かな曲へと展開していきました。
この怒涛の展開にボーカリストである自分自身の人生そのものが反映されているようなそういう感覚を味わいました。
この曲にも特別な思い入れがたくさんあり、2曲目と同様に様々な記憶が呼び起こされるのを感じました。

昔ライブでこの曲を演奏していた当時からこの曲を歌うと主に喜怒哀楽のうち「哀」の部分の感情が溢れ出るような印象がありましたが、今回に関してもまさにそうでした。
気がついたら涙が止まらなくなっていたのです。
人前で泣く事など滅多にない自分が人がたくさん見ている中でどうしても涙が止まらなくなるというのはやはりライブというものが自分にとっていかに特別であるかを表しているなと思います。

そしてそこから4曲目5曲目に関してはある種自分という存在が自動的に動いているようなそんな感覚でした。
歌いながら様々な記憶が蘇り、ある種の思考の渦の中で歌っていた流れから解き放たれてより本能的になっていったのを記憶しています。
7年ぶりのブランクという特別性から抜け出して、自分がステージで歌うという事がある種の必然であるかのような、本能に還ったステージングをしていたんじゃないかと思います。

対バン形式によるたった25分のライブであっという間ではあるのですが、自分自身がその25分の中でもの凄いスピードで何かを感じたり考えたり変化したりする、まるで波乱に満ちた人生の縮図のようなライブだったなぁと感じています。
あまりにも衝撃的で情報量の多いライブで終わった後も自分の気持ちがもはや分からないというか魂が抜けたようなそんなライブでした。

そしてライブが終わって何日か経ってみて色々な事を考えました。
至らないところにもたくさん気が付きました。
弦楽器がギター1人でも成立していると褒めてくれる人もいましたが、もしここにもう1人ギターでもベースでも加えたらもっと良い音になるんじゃないか?とか、逆に3人なら3人でもっとやりようがあるんじゃないかとか色々な事を考えています。

そして僕自身の事で言うのであれば、潰瘍性大腸炎と機能性発声障害の影響からまだ完全には抜け出せておらず当時の歌唱力にすら負けている状態に非常に悔しさを感じています。
しかし同時に機能性発声障害になった事で発声を一から見直すチャンスを得られた事、信頼できるボイストレーナーさんに出会えた事なども踏まえるとまだまだこれからなのかなとも思います。

本当にライブって大変だなと思いました。
当時から体力がない方だったので、短いライブでもすぐにバテてしまうような感覚はありましたが7年ぶりのライブともなるとあまりの疲労に驚かされます。
力不足でまだまだ自分のやりたい表現が自由にできない感覚にもどかしさや悔しさも強いです。
これを機にもっと声も身体も精神も鍛え、過去の自分を超えてもっともっと高みを目指したいとそう強く思います。

次のライブをいつやるか、メンバーをどうするか、新曲作りたいとか、やる事は山積みです。

2023年3月8日(水)新宿ANTIKNOCK
zahir
-SETLIST-
1. 翡翠
2. Ira
3. maza
4. solemn
5. zama

バンドのリハーサル音源の動画(歌詞付き)などもアップしていますので、良かったら観て下さい。

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