見出し画像

外国ルーツの子どもに対する集中的な日本語学習支援について

こんにちは。
今回は、外国ルーツの子どもに対する集中的な日本語学習支援をやってみて、どうだったか、どんな課題があったかを記録として、ここでお話したいと思います。
最近、私の活動している地域でも、日本語がほとんどできない状況で来日する外国ルーツの子どもたちが増えています。
みなさんの地域ではいかがでしょうか。そして、どのような支援がされているでしょうか。特に、学校に編入や入学するまでの期間に、何か集中的な支援はありますか。

今回、支援したのはアジア地域出身の17歳の女性です。保護者が永住者のため、呼び寄せで来日しました。支援を始めた時点で、4月から公立高校への編入の話が進んでいました。
日本語レベルはほぼゼロで、来日後の数か月間は、公的な成人向け入門日本語コース(24時間)を受講したり、成人向けのボランティア日本語教室に週3,4回程度来室したりしていました。日本語教室は曜日ごとに実施団体が異なるため、学習内容は統一されていませんでしたし、グループでの活動になる場合も多くありました。

そのような状況の中で、4月からの高校編入に向け、集中的な日本語学習の必要性があると考え、2023年春に約2か月間20回30時間、日本語ボランティアの有志7名が交代で彼女に対する日本語学習支援を行いました。
有志は、私がコーディネーターとして、ボランティアのみなさんに声掛けをして手を挙げてくださった方々でした。今回の支援に関わってくださったみなさん、本当にありがとうございました。
なにぶん初めての試みだったので、詳しい計画も立てずに始めてしまったのが、課題を残す最大の原因だったと反省しています。
以下は、それを踏まえた上での課題です。

<課題>
①本人や保護者への説明について
今回の集中コースの意図が、本人や保護者にきちんと伝わっていなかったため、学習意欲の面で弱かったといえると思います。連絡なしでお休みしたりすることもありました。
コーディネーターとして私が本人や保護者の方にきちんと説明できていなかったのが原因だと思いますが、ボランティアの身分では限界もあったように感じています。保護者の方には、理解できる言語で事情説明の手紙を書いて手渡しもしました。それでも、状況は変わりませんでした。

②支援内容等の調整について
時間的な問題などで、支援者が集まっての打ち合わせなどもできない中で、Googleスプレットシートを用いて連絡や調整を行っていました。しかし、お願いして無償で支援していただている複数人のボランティアの方々で行う支援体制をコーディネートすることは難しさがありました。

③外国ルーツの子どもへの支援スキルについて
私を含め支援者は成人向け日本語教室のボランティアだったので、外国ルーツの子どもに対する指導のスキルを持っていませんでした。そのようなスキルがあればより効果的な支援ができたのではないかと思います。
 
今回、支援を行ってみて、ボランティアで全てを行うのは限界があると感じました。これらの課題を克服するためには、やはり公的な支援が必要ではないかと思います。
3つの課題について、それぞれ考えてみます。
課題①本人や保護者への説明については、公的な支援であれば、理解もより得られやすいと思います。実際に、彼女が公的な入門日本語コースに通っている際には保護者の方は非常に積極的で協力的でした。

課題②支援内容等の調整や支援体制のコーディネートについては、支援者、コーディネーター共に完全なボランティアではなく、少しでも有償にすることで、依頼しやすくなり、計画的に進めることができるのではないでしょうか。
公的な支援にすることで、少数の有志に頼るのではない持続可能な支援になると思います。

課題③外国ルーツの子どもへの支援スキルについては、やはりあったほうが効果的な支援ができると思います。教材なども統一できれば、より効果が高まったのではないかと思っています。
 
今後も、このような子どもたちが増えてくると思われます。この夏も、そんな子どもたちがやってきています。これまでも毎年、このような子どもたちが成人向け入門日本語コースに参加しています。
来日間もない日本語ゼロの子どもたちに対する、学校へ入る前段階での、公的な集中的支援のかたちを考えていく必要があるのではないでしょうか。
このような集中的な支援では、今回のように多くの人が関わることが、実現しやすくする実効性のある支援のかたちではないかと考えています。支援者ひとりひとりの負担は少しでも、大きな支援が可能になります。
また、子どもたちや保護者にとって、公的な支援があることの安心感は大きいと思います。

最後に、今回の取り組みのもうひとつの収穫として、団体を超えて連携した取り組みを行うことができたことがあります。いろいろな団体の方が個人として協力して1つのことをしたという経験は、今後の日本語ボランティア、外国人支援にとって明るい材料になるのではと思います。

最後に、田中宝紀さんのブログ記事を紹介します。
田中さんは外国ルーツの子ども支援を行っているNPO法人の方で、様々なところで外国ルーツの子どもたちの現状や課題について発信なさっています。
この記事は、少し古いですが、今回のわたしの取り組みにも深く関わる内容です。

「日本語がわからない中で、クラスメートからほとんど声をかけてもらうこともなくなってしまった子どもたちはきっと、すごく苦しかったと思う。日本語教育の「自治体丸投げ」「ボランティア頼み」「手探り」そろそろ終わりに。」
 
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
ご意見、アドバイス、コメント、こんな取り組みがあるよ、など教えていただけるとうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします。
 
(山)