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ボディーガード・マニュアル

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世界中のVIPたちを護るボディーガードの警護技術を紹介。 英国に本部を置く要人警護・身辺警護の国際組織、AISP(国際セキュリティプロフェッショナル協会)とIBA(国際ボディー… もっと読む
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ボディーガード 1/10 の法則

ボディーガード 1/10 の法則

警護業務実践④ 1/10の法則ボディーガードの世界には、【1/10の法則】という言葉があります。これは、『10回の脅威が存在するなか、そのうちの1回を護るのがボディーガードの仕事である。』という言葉に基づいた法則です。

これには2つの意味があります。

ひとつ目は、『10回の脅威(危険)が存在するなか、ボディーガードが護ることができるのは、そのうちのたった1回であり、それだけ脅威者(攻撃者)の方

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警備開始

警備開始

警護業務実践③ 警備開始前号で紹介したように、ボディーガードや警護チームが警備業務を開始する時は、遅くとも30分前までには、すべての準備が完了し、いつでも警護業務を開始することのできる状態、“クリア&スタンバイ”となります。このため、予定時刻よりも早くプリンシパル(Principal: 警備対象者)が自宅などから出てきても、すぐに警護を開始することができます。

(1) 挨拶・自己紹介既に前日まで

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警備開始前準備

警備開始前準備

警護業務実践② 警備開始前準備(1) 警備開始時間と業務開始時間ボディーガードや警護チームによる警護サービスは、クライアント(Client: 依頼者)やプリンシパル(Principal: 警備対象者)が指定した日時に開始されます。これは、ボディーガードがプリンシパルと合流し、物理的な警護が始まる時間、つまり“警備開始時間”です。
これに対し、ボディーガードや警護チームが、警護サービス開始のため、そ

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警備初日と第一印象

警備初日と第一印象

警護業務実践① 警備初日と第一印象身辺警護・要人警護の依頼を受け、情報収集からアドバンス・ワークまで、実施に必要なすべての準備が整った後、いよいよ警備初日を迎えます。もちろん、一日だけで終了する業務もありますし、継続して何ヶ月〜何年も続く業務もありますが、この業務初日ほど緊張する日はありません。

(1) 第一印象既に何度かご紹介しているように、身辺警護・要人警護業務では、クライアント(Clien

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警備実施前準備“アドバンス・ワーク” ②

警備実施前準備“アドバンス・ワーク” ②

アドバンス・ワーク② 警備計画〜警備準備
脅威評価までの行程が完了すると、『何を護るべきなのか』と『何から護るべきなのか』が明確になってくるため、次のステージである『どう護るのか』の検証に入ります。この『どう護るのか』を具体的かつ明確に組み立てたものが“警備計画”です。そして、警備計画ができあがった後、実際の警備業務に入ることができるように、また、計画通りに業務を実施することができるように、しっか

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警備実施前準備“アドバンス・ワーク”

警備実施前準備“アドバンス・ワーク”

アドバンス・ワーク① 情報収集〜脅威評価身辺警護や要人警護を必要とするクライアント(Client: 警備依頼者)から、警護に関する問い合わせや依頼が入り、必要となる基礎的な情報を収集したら、警護チームは次に、より具体的かつ詳細な情報の収集を始めます。これは、クライアントからの聞き取り(インタビュー)などで入手した情報だけでは、次に行う脅威の評価や適正な警備体制のプランニングを行うことができないため

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警護業務受注までの流れ

警護業務受注までの流れ

2.警護業務受注までの流れ前回記事で紹介した、法令で定められた要件をすべてクリアし、ボディーガードとして働くことのできる体制が整い、身辺警護・要人警護業務を適正に実施するために必要な知識と技術を習得したら、いよいよ警護の仕事を受けます。

(1) 警護問い合わせ身辺警護・要人警護の仕事は、“警護の問い合わせ”から始まります。
通常、電話やメール,自社ウェブサイトの依頼フォームなどから、問い合わせが

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警護業務を始める

警護業務を始める

第3章 身辺警護・要人警護の実践第2章では、身辺警護・要人警護業務についての基本的な考え方や知識・技術を紹介してきました。第3章では、この基礎知識・技術・考え方に基づいた、警護業務の実践について紹介していきます。

1.警護業務を始める※今号は、日本国内における【警備業務】について紹介しているものです。既に警備業務についての基礎知識がある方は飛ばしていただいて構いません。

ボディーガードとして働

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セキュリティ最大の敵

セキュリティ最大の敵

セキュリティの教育訓練では世界的に群を抜いている、イスラエルでの要人警護訓練を受けていた時、訓練終盤で、訓練生たちにインストラクターから一つの質問が投げかけられました。

「セキュリティ(警備業務)において、最大の敵は何だと思う?」

既に現地で様々な教育訓練を受けてきた訓練生たちは、いわゆる素人の方々が答えるような、「襲撃」「待ち伏せ」「監視」などといった外部からの力(Outsider)ではなく

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ボディーガードの装備

ボディーガードの装備

身辺警護・要人警護業務に就く時、ボディーガード(たち)はどのような装備・準備をして業務にあたるのかを紹介したいと思います。

警護業務では、「基本的に」ボディーガードはできるだけ手には何も持たず、両手が自由に使える状態で行動します。これは、何か緊急の事態が発生した時に素早く反応したり対処するためで、荷物を持っていることで両手が塞がってしまい、対処ができない・対処が遅れる、といったことを防ぐためです

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セキュリティ・フィルター

セキュリティ・フィルター

バウンダリー(Boundary)身辺警護・要人警護業務に限らず、すべての警備業務において、その警備計画の中で最初に設定するのが、「どこまでが自分たちの警備責任範囲なのか」を明確にする、“バウンダリー(Boundary: 警備境界)”です。セキュリティサービスを提供する警備会社や警備員・警護員は、このバウンダリー内における警備対象のセキュリティについて、その責務を担うことになります。1号警備(施設警

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警護業務に存在する4つの時間

警護業務に存在する4つの時間

警護業務に就くボディーガードは、時間の流れに沿って、常に4つの時間(世界)を生きています。

①過去プリンシパル(Principal: 警備対象者)に過去に起きた事象(病歴,起きた脅威など)を常に把握しておき、併せて、自分たちが計画したこと・準備したこと、そして現在に至るまでに通ってきた動線,訪問したところなどを常に意識します。これは、過去が現在に及ぼす影響を意識するためで、例えば、現在自分たちが

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警備業務手順4ステージ④ 警備実施・補正改善

警備業務手順4ステージ④ 警備実施・補正改善

身辺警護・要人警護業務を含むすべての警備業務は、依頼を受けてすぐに警備を実施できるものではなく、警備を実施するための準備などが必要となります。適正な警備を実施するためには、「何を護るのか」「何から護るのか」といったような情報と、「どのように護るのか」といった計画,そして警備実施に必要な準備と、実施中の調整・補正・改善などが必要となります。これらを時系列にまとめたものが【警備業務手順4ステージ】です

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警備業務手順4ステージ③ 警備計画・警備準備

警備業務手順4ステージ③ 警備計画・警備準備

身辺警護・要人警護業務を含むすべての警備業務は、依頼を受けてすぐに警備を実施できるものではなく、警備を実施するための準備などが必要となります。適正な警備を実施するためには、「何を護るのか」「何から護るのか」といったような情報と、「どのように護るのか」といった計画,そして警備実施に必要な準備と、実施中の調整・補正・改善などが必要となります。これらを時系列にまとめたものが【警備業務手順4ステージ】です

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