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ペルー アマゾン一人旅 6         ハンモックとイルカ



写真は貨物船マドレセルバの食料

退屈で気だるいスライムみたいな時間の流れの中で
唯一の変化は食事。

最初の頃は、甲板で鳴いていた生きた豚や鶏が供された。
バナナや野菜とまとめて置かれているのが
いかにもこれからの食料です感があって哀れだった。


甲板の豚

                        甲板のブタ
自分が持ち込んだ果物やパンは暑さですぐにいたみそうだったので、この豚にあげていた。 そして、船の食事に豚肉が出て私はそれを食べた。
次は鶏たち、それらがじょじょに姿を消し、すべていなくなると、
食事は野菜のみになった。

途中で一度、河岸の村から巨大な干しパイチェ(ピラルク)を仕入れていた。
長いので数人の男たちが横にしたハシゴのように担いでいた。
それからしばらくはパイチェの塩煮と茹でバナナ。

ご飯やバナナを川の水で煮るためか、微妙に灰色がかっている。
それもなくなると、茹でバナナとご飯だけ。
みんな時間を持て余しているので、
食事の準備をする時に素早くテキパキと動く。
給仕の人が長ーいテーブルを拭き始めるとごそごそと、しかしけっこう素早く皆がテーブルにつく。
アルミ製の給食トレイのようなものがバタバタと並べられる。普段のペルー人に見たことのない素早さ。
お腹がすいているから?

2交替で、私はいつも後組。その上食べるのが遅いので、何時も片付け係に急かされた。残すとおこられた。まずい上に暗いので何を食べているのかわからない。

ピラルクのせご飯

               ピラルクのせご飯と茹でバナナ

貨物船は川沿いの小さな村にいちいち停泊し、灯油や加工食料品を売り、
魚や野菜を買い込む。
けっこう大きな貨物船なのに、降りる人乗る人 一人一人に対応する。
岸から懐中電灯で合図を送っている人を一人も残さず拾って行く。
着岸するには時間がかかるのに。

小型ボートで追いついて乗り降りする人もいる。
街なかの乗り合いバスのように ここで降りるわ、みたいな軽やかさで。
夜中に船を降りて、漆黒の濃密な森の中に消えて行く人たち。
村があるのだろうか。 なぜあえてここに住み続けるのか。 
彼らにとっての何があるのか。

昼間に着岸した時、それまで銅像のようにじーっとしていた乗客たちが、
バタバタと財布片手に船から降りて行った。
どうしたどうしたと思っているうちに、
みんな息を切らせて船に戻ってきた。
手に手にピンポン球そっくりのものが入った袋を持っている。
亀の卵らしい。
ペルー人が普段見られない素早さで動いたことを見ると、よほど美味しいのだろう。

一度シャワーを浴びている時に(この水も濁っている。なにもかも同じ河の水 煮炊きも洗濯も〇〇も )
カワイルカの群れがジャンプしながら
船と平行に泳いでついてくるのを見た。
ピンクのつるっとした皮膚をキラキラ光らせて
愉快そうにジャンプしながらこちらを見てニタっと笑った(ように見えた)  
海の鯨やイルカは何度か見たことがあるが、大海の彼らより
河のピンクの小振りのイルカたちは人間に近いものに感じた。
ピンクカワイルカに関しては各地域でいろいろな伝説がある。

ジーパンを川の水で洗っていたら、トイレットペーパーとそれとセットらしきものが流れて行った。同じ水をコップに組んで子どもに飲ませている。
なにもかも同じ河の水で。  巨大だからいいか。

昼間は、ゆで卵になったみたいに暑いのに、夜は冷えこむ。これは予想外で、船室の方に戻って、持っているものをすべてかけて寝る。
ハンモックやかばんもかぶった。


同じ状態がずっと続く 我慢大会のような船上生活で
唯一の楽しみは夕暮れ時。
巨大な太陽がうす桃紫色に河の面を染めて 
濃緑のジャングルの陰に落ちると
風が少し動き
赤はどんどん紫に占領され、その後 青紫、青、群青へと移っていく。
そしてお待ちかねの満月登場。
ショータイム。

大満月を船の航跡の上に見ながら。、、、することがない。

アマゾン夕日


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