「パターンランゲージ」(2023年春学期前半)シラバス
学部・分野:慶應義塾大学総合政策学部・環境情報学部 基盤科目-共通科目
開講学期:2023年度春学期前半
曜日時限:木曜日3・4限
担当教員:井庭 崇
実施形態:対面(Ω教室を予定)
使用言語:日本語
単位:2単位(基盤科目-共通科目)
登録番号:08038
科目ソート:B6093
主題と目標
この授業では、一人ひとりがもつ創造性を支援するためのメディア「パターン・ランゲージ」について、その考え方と世界観、作成方法の概要を学びます。
パターン・ランゲージは、創造実践のコツを「パターン」という小さな単位にまとめ、ほどよい抽象化・体系化・言語化したものです。
かつて、建築家のクリストファー・アレグザンダーは、いきいきとした町や建物に繰り返し現れる関係性をパターンとして定義し、253個のパターンを抽出・記述しました。その後この考え方は、ソフトウェア開発の分野に応用され、現在でも広く活用されています。
SFCでは、創造的な学びのための「ラーニング・パターン」や、創造的プレゼンテーションのための「プレゼンテーション・パターン」、創造的コラボレーションのための「コラボレーション・パターン」をはじめとして、教育、福祉、仕事、暮らし・人生などさまざまな領域でパターン・ランゲージが制作されてきました(詳しくは参考文献欄参照)。
この授業では、パターン・ランゲージとは何かということから、現在どのようなものがあり、どのように活用されているのか、そして、それはどのようにつくることができるのかの概要を学びます。
パターン・ランゲージの魅力的な世界をぜひ味わってください。
履修上の注意・留意事項
●教科書として『パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語』を各自購入してもらいます。
●毎週、文献を読んで「ふりかえり」を提出する宿題や、授業内容に関連する宿題が出ます。
提出課題・試験・成績評価の方法など
成績は、出席、宿題、最終レポート等から総合的に評価します(ペーパーテストの試験はありません)。
授業計画
第1週(4/13) パターン・ランゲージとは & いろいろな分野で活用されているパターン・ランゲージの紹介
パターン・ランゲージとは何かということについて、基本の基本から学びます。そして、どのような分野でパターン・ランゲージがつくられているのか、また、どのように実際に活用されているのかを知り、パターン・ランゲージの実世界での広がりを感じます。
第2週(4/20) パターン・ランゲージを用いた対話ワークショップ & パターン・ランゲージの歴史
パターン・ランゲージを用いて経験談を語り合う対話のワークショップを行います。そしてその後、パターン・ランゲージの歴史について学びます。パターン・ランゲージは、建築の分野から始まり、ソフトウェアの分野で応用され、その後、人間行為の領域に展開してきました。ここでは、クリストファー・アレングザンダーが作成した建築のパターン・ランゲージについて具体的に紹介します。
第3週(4/27) 自分でもパターンを書いてみよう
パターン・ライティング・シートを用いて、自分の知っているコツを状況/問題/解決/結果のパターン形式で書いてみます。
第4週(5/11) 本格的なパターン・ランゲージの作成プロセス
ある実践領域について、数十個のパターンからなる体系的なパターン・ランゲージをつくるためのホリスティックな作成プロセスについて紹介します。
第5週(5/18) パターン・ライティング(パターンの記述と洗練) & パターン・シンボライジング(名づけとイラスト作成)
各パターンを、状況/問題/解決/結果の形式で記述するパターン・ライティングのプロセスと、それぞれの記述表現の基本型について学びます。また、各パターンに名前をつけたり、イラストをつけたりするパターン・シンボライジングのプロセスと、それぞれの記述表現の基本型や魅力のつくり込み方について学びます。
第6週(5/25) パターン・ランゲージの思想 & 学術研究におけるパターン・ランゲージ作成
パターン・ランゲージを考案した建築家クリストファー・アレグザンダー は、『時を超えた建設の道』という本のなかで、自然物のように建築や町を育てていくという考え方を提唱しました。その考えは「自然な深い創造」と呼び得るものです。この授業では、その考えについて学んでいきます。さらに、学術研究におけるパターン・ランゲージ作成について学びます。パターン・ランゲージは、社会的に活用されて価値があるというだけでなく、学術研究における新しい方法になっています。どのような方法として位置づけられるのか、また、どのような事例があるのかを紹介します。
第7週(6/1)ライターズ・ワークショップ & 創造社会の未来
パターン・ランゲージのカンファレンスでは、書き手たちが、つくったパターン・ランゲージをよりよくしていくための話し合いのワークショップを行います。そのワークショップがどのようなものなのかとその背後にある考えを学び、実際に体験してみます。そして、最後に、人々が創造的に生きる創造社会の未来について考えます。
履修制限
(抽選以外) 受け入れ予定人数 300人
自己紹介と自分の関心領域、およびこの授業の志望理由について、A4サイズ1ページにまとめて提出してください。写真などを用いて1ページに魅力的にレイアウト・表現してください(ファイルは必ずPDF形式で提出してください)。
なお、この授業は特に1、2年生に取ってほしい授業なので、志望者の人数が多い場合には1、2年生を優先します。
参考文献
【教科書】
『パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語』(井庭崇 編著, 中埜博, 江渡浩一郎, 中西泰人, 竹中平蔵, 羽生田栄一, 慶應義塾大学出版会, 2013年)
【重要参考文献】
「新しい方法、新しい学問、そして、未来をつくる――創造実践学の創造」(井庭 崇, 『総合政策学の方法論的展開』, 桑原 武夫, 清水 唯一朗 編, 慶應義塾大学出版会, 2023年)
『対話のことば:オープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得』(井庭 崇, 長井 雅史, 丸善出版, 2018年)
『プロジェクト・デザイン・パターン:企画・プロデュース・新規事業に携わる人のための企画のコツ32』 (井庭 崇 , 梶原 文生, 翔泳社, 2016年)
『おもてなしデザイン・パターン:インバウンド時代を生き抜くための「創造的おもてなし」の心得28』(井庭 崇, 中川 敬文, 翔泳社, 2019年)
『ともに生きることば:高齢者向けホームのケアと場づくりのヒント』(金子 智紀, 井庭 崇, 丸善出版, 2022年)
『旅のことば:認知症とともによりよく生きるためのヒント』(井庭 崇, 岡田 誠 編著, 慶應義塾大学 井庭崇研究室, 認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ, 丸善出版, 2015年)
『園づくりのことば:保育をつなぐミドルリーダーの秘訣』(井庭 崇, 秋田 喜代美 編著, 野澤 祥子, 天野 美和子, 宮田 まり子, 丸善出版, 2019年)
『ミラパタ(未来の自分をつくる場所:進路を考えるためのパターン・ランゲージ)ブックレット&カード セット』(クリエイティブシフト, 2017)
『プレゼンテーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』(井庭崇+井庭研究室, 慶應義塾大学出版会, 2013年)
『コロナの時代の暮らしのヒント』(井庭 崇, 晶文社, 2020年)
『時を超えた建設の道』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1993年)
『パタン・ランゲージ:環境設計の手引』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1984年)
『Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン』(Mary Lynn Manns, Linda Rising, 丸善出版, 2014年)
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