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SDGs時代に読んでみる古典「宇宙船地球号」と富の定義

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i&i Impact Editorial Board
25 October, 2020


バックミンスター・フラー(1895~1983)という人物をご存知でしょうか?
数学者であり、思想家であり、発明家であり、建築家であり、デザイナーであり、詩人、、、アメリカが生んだ鬼才の一人です。
日本での知名度は高くないものの、「宇宙船地球号」という単語を聞いたことがある人は多いかもしれません。
1963年に「宇宙船地球号操縦マニュアル(Operating manual for Spaceship EARTH)」という本を書いた人物こそフラーであり、近年、SDGsが目指す世界(経済・社会・環境の三側面が調和された世界)の文脈で、再評価されている人物です。

本稿で紹介したいのは、フラーの「富」の定義

フラーは、「宇宙船地球号操縦マニュアル」の中で「富」の概念を再定義し、「私たちがある数の人間のために具体的に準備できた未来の日数のこと」と述べています。
通常、「富」と聞いて真っ先に思い出すのは「貨幣」や「カネ」だと思いますが、フラーは「未来の日数を増やすこと」こそ「富を増やすこと」と主張したのです。

SDGsが国連で採択され、世界が目指す指針の一つとなっています。
5月8日に開催されたSDGs Bar「SDGs × ポストコロナの世界 × ニューヨーク」の開催報告で、フラーの思想とSDGsについて、下記のように紹介しました。

(フラーは、)富の定義を「貨幣」という物差しではなく、「未来世代に用意できる日数」という物差しから捉え直した思想家。SDGsは、経済・社会・環境を調和させ、現世代のニーズを満たしながらも、将来世代のニーズを満たす持続可能な開発(Sustainable Development)を追求するものであることから、フラーの富の定義に通じるところがあります。

SDGsの達成に向け、世界を変革しようとした時、もちろん「貨幣」や「カネ」は、「未来の日数」のための原動力となるもので、否定されるものではありません(だからこそ、SDGsも「経済」を柱の一つにしています)。
ただ、SDGsの目指す世界観が「経済、社会及び環境の三側面を調和させるもの」と記述されていることを考えると、今、人々が重視する価値感の一部を「貨幣」や「カネ」から、将来世代が豊かに生きるための「未来の日数」へと少しでも変化できれば、「持続可能な社会」の実現にとって重要な変革ととなるのではないでしょうか。

「しあわせ」の概念を企業価値に取り入れた丸井グループ社長の青井浩氏も、各所において、フラーの思想に触れながら、今人々に求められているのは、「富」の再定義ではないかと語っています。
大手企業の経営者も「富」の定義を「未来の日数」と考えるようになっていることは、現代社会を生き抜くために人々が重視する価値観が少しづつ変化していることの証左なのではないでしょうか。

より深くフラーの思想を知りたい方へ

最後に、i&i Impactメンバーの桂川融己さんがフラーの名著「宇宙船地球号操縦マニュアル」(1963年)をまとめつつ、ご自身の考察を行っていますので、丸井グループのHPとともに紹介します。
より深く、フラーの考えを知りたい方は是非ご覧ください。

宇宙船地球号操縦マニュアルとSDGs (桂川融己さんnoteより)
第1部:
「SDGsと深く繋がる 「宇宙船地球号操縦マニュアル」 を読んでほしい」
https://note.com/meltmyself/n/n1be32a0251a3

第2部
「バックミンスター・フラーによる「未来予測」がとんでもない。 by 宇宙船地球号操縦マニュアル」
https://note.com/meltmyself/n/n056ba9411b5b

第3部(最終回)
「人間にしかできないこととは? バックミンスター・フラーの根底に流れる思想」
https://note.com/meltmyself/n/n5309bf072f89

丸井グループHP
「バックミンスター・フラーが“宇宙船地球号”で投げかけた「富」とは?」
https://www.0101maruigroup.co.jp/ir/pdf/i_report/2019/i_report2019_14.pdf

「企業価値の考え方」
https://www.0101maruigroup.co.jp/ir/management/value.html


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