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中間報告で咲いた花

マダガスカルに来て、1年が過ぎ、JICA事務所で中間報告を行った。自分がマダガスカルでしてきたことを報告しなければならない時間。遂に私の番だ。

この1年間、先輩たちの報告を聞くたびに、自分は何も話せることがない気がして、胸が詰まっていた。しかし、もう逃げられない。

私について話すと言うこと。

私は、自己開示はあまり得意ではない。と言うよりも、自分について話すことが怖いのかもしれない。しかしながら、私を知ってもらわないと、私がここで感じていることを理解してもらえないような気がした。

ザワザワの高校3年生の私

「高校3年生の時に、国際協力を仕事にしたいと決意してから、それしか考えてこなかった人生でした。」

趣味や経歴の自己紹介よりも、私を表すにはこの1文が最適かもしれない。そう思い、高3の時に大学受験の願書に貼り付けた証明写真と一緒に、この一文をはじめのスライドに添えた。

その一文を読み上げる前から、オーディエンスは高3の私にザワザワしていた。自分ではあまり変わった気はしないが、まだ世界を知らない初さと若気が至った眉毛の細さがザワつかせてしまったのかもしれない。

あの時の私よりも社会に擦れた私ではあるが、考えていることは、案外今でも変わらない。だから、細眉毛からピンク眉毛になったこと以外は、過去の写真をみても何にも変わらないと思うのだろう。

もっと自由で大丈夫ですよ

中間報告が始まる前、担当VCが私の活動についてアドバイスをくれた。
「多分、型にハマらないといけないと思い過ぎて、モヤモヤしているのかもしれません。もっと自由で大丈夫ですよ」

その言葉に少し安心し、今日伝えたい部分にちゃんと時間を割こうと決意した。

私が任地で本当はしなければいけない「生活改善アプローチの普及」をどうしても話さないといけないと思い、負けなしの写真をスライドに貼っていた。でも、本当に私が伝えたい部分は、別だった。

+αの活動

+αの活動として紹介した「女性一人ひとりのサポート」
全然「+α」じゃなくて、これが私の活動だ。

任地の女性たちとの何気ない会話の中に、女性の辛さは垣間見れる。

家庭内暴力を経験しているお母さん、若年妊娠でおばさま方から後ろ指を刺されるお母さん、満たされてはいるけど働きに出れずに退屈だと呟くお母さん、稼ぎがないシングルマザー。

みんなそれぞれの事情を抱えて、日々を生きている。
そんな彼女たちは、私の大切な友達だ。
自尊心の回復、自己肯定感の向上、コミュニティでの居場所づくり、収入向上。
難しい言葉を使って話してしまったが、彼女たちの笑顔が増えたらいい。ただそれだけを思って、少しずつサポートしている。
間違いなく、彼女たちに支えられているのは、私なのだが。

いつか世界を変える力になる。

私がJICA海外協力隊に応募を決意したのは、この言葉に惹かれたからだ。


何者でもない大学3年生の私が、何者かになりたかった。今も何者でもなく、何者かになる途中なのかもしれない。

ただ、この言葉が今の私の全てだ。ここで過ごす時間は、これからの私の人生には二度と訪れない。これが私のベンチマーク。

「彼女は、何を思うだろうか」
「あのお母さんは、これをすると喜ぶだろうか」

今後、国際協力という業界を渡り歩きながら、ここで出会った人たちを思い出して、進んでいく。

最後に、

このスライドを最後に、
「目の前にいる人を少しでも幸せに出来たら」
と伝えて私は発表を終えた。

たくさんの拍手の中、お辞儀をした。頭を上げると、所長が驚いて横を見ている。私も何かと思い
、見てみるといつも気にかけてくれているVCさんが、泣いていた。

彼の涙に、照れ臭くて戯けた反応をしたが、彼よりも泣きそうになったのは私だ。

ホッとした、そして、嬉しかった。

彼にはこの1年間たくさん迷惑をかけてしまった。彼がいなかったら、私は既に諦めて日本に帰っていたかもしれない。
私のこの1年を知り過ぎているほど知っている彼だからこそ、私にとって彼の涙は特別だった。

「あと1年、頑張ります」

これは、彼への宣言だった。
私は、これからも相変わらずお母さんたちと冗談を言いながら過ごし、少しずつ幸せの花をここで咲かせていきたい。

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