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【任地の課題がわからない】Herinandro faha 20&21

「Mahafinaritra ka (マフナルチャ カ)?」
=素晴らしいでしょ?

「Tamana ka (タマナ カ)?」
=お気に入りの場所かい?

そんな、ここの人たちがいつも私に何気なく投げかける言葉を思い出し、ずっと抱いていたモヤモヤが、少し正しかった気がした。

課題分析よりも優しい風になりたかったんだ。

Mahafinaritra ka ? 素晴らしいでしょ?

ここを歩いていると、通り過ぎる人通り過ぎる人みんな、私の顔をじっーと見つめて、何も言わない。そんな気まずい時間に耐えられず、私から挨拶する。

「Manaoana (マナオーナ)?」
=こんにちわ、お元気?

「Salama(サラマ)」
=こんにちわ、元気〜!

人懐っこい笑顔でみんな答えてくれる。そして、「待ってました」と言わんばかりに、いっぱい話しかけてくる。マダガスカル語を話す外国人は珍しいから、私と話したくて仕方ないのだろう。

街から少し離れて農村部をぶらぶらしていると、だいたいすれ違った人が田んぼや畑を案内してくれる。そうすると、みんな、嬉しそうな顔で、

「Mahafinaritra ka (マフナルチャ カ)?」
=素晴らしいでしょ?

と聞いてくる。

田んぼや畑、その奥に見える大きな湖、そして、透き通った空気は、嘘偽りなく、

「Tena mahafinaritra(テナ マフナルチャ)!」
=本当に素晴らしい!

Tamana ka? お気に入りの場所かい?

マダガスカル語で好きな言葉がある。

Tamana(タマナ)
好きな場所、愛着のある場所、お気に入りの場所 etc…

場所への愛

日本語ではなんだろう。
自分が生まれた場所への愛は「地元愛」なんて言ってみたり、海外だったり非日常だけど愛着が沸いた場所は両手広げて「アナザースカイ」と言ってみたりするかもしれない。でも、はっきりとした言葉はない気がする。

トポフィリア(Topophilia)
人文地理学ではそう言うらしい。かつて、地理が大好きな私の知り合いが、教えてくれた言葉。

そんな不思議な言葉をマダガスカルの人は、常々私に問いかけてくる。そして、彼ら自身にとってもここがTamanaらしい。

私も「Tamana だよ」と答えると、みんな誇らしい顔と喜びが混ざったような笑顔を見せてくれる。

この街の課題がわからない

JICAからの作業依頼で、自分の任地の課題分析をする必要があった。分析を始めようとした瞬間、頭の回転も手もピタッと止まった。

「この街の課題がわからない」

ここに住み始めて、3ヶ月強。私は、ここを何にもわかってないのだ反省した。それと同時に、「課題」と言う言葉に疑問を抱いた。

間違いなく貧しい人たち。彼らの生活を見ていても、私にはできないことだと感心する。でも、ここの人たちは生まれてからずっとこの生活を営んできた。そして、その生活を含めて彼らにとってここはTamanaなんだろう。

「課題」という言葉とはかけ離れた、みんなが私に向けてくれる笑顔が思い浮かんだ。

「誰かを助けたい」なんて、今は全く思えないし、彼らを「助けてあげたい」と思う方が、おこがましく感じる。だって、私なんかよりここの人の方がよっぽど逞しいし、生きる知恵も拵えている。

やっぱり、私にはできない、課題分析。

「チャレンジしてみたいことはありますか?」

課題分析が進まない私は、最後の頼みの綱として、知り合いのコーヒー組合のマダムを訪問した。
何か手掛かりを掴まなくてはと思い、あらかじめ聞きたいことをメモ帳に準備し、アンケートのようにマダムに答えてもらった。

「何か問題はありますか?」というのは空欄回答。
しかし、最後の欄に、「チャレンジしてみたいことはありますか?」を興味本位で入れてみた。そうすると、とっても面白いアイデアを彼女は目を輝かして色々と話してくれた。

私もとっても嬉しくなった。

「それめっちゃおもしろい!一緒にやりたい!一緒に働かしてくだい!」

気づいたら、マダムの手を握りながら、私はそうお願いしていた。そんな私の様子を見て、マダムもなんだか嬉しそうだった。

「あぁ、私の役目はこれかもしれない」

そういえば、私、誰かの優しい風になりたかったんだ。

国際協力というものが何か、青年海外協力隊というものが何か、途上国支援というものが何か。

そんなことをずっとぐるぐる考えてても、ずっとわからないまま大学から今に至っている。国際協力たるものが何かを理解するまで悩むより、もっと確実なことが1つだけあったんだった。

私は、誰かの優しい風になりたかったんだ。

「優しい風」
よくわからない表現だろうが、私がインターン時代に私について書いた記事で使った言葉が、「優しい風」。

いつも守られているような安心感。そして、後ろから優しく背中を押してくれる人。

「優しい風」とつながる場所 啓発事業部 インターン 福井

そう、今でもそう思う。

私は「0→1」が得意とよく言われるが、正直そんなことはない。
誰かの0.1の希望を1にするのが、好きなだけだ。0の状態だとなんのアイデアもない人間だったりする。

だから、マダガスカルでも、私は誰かの優しい風になりたい。
ここに住む人の願望を一緒に叶えるボランティアでありたい。それがここに住む人と私が満足する方法で一緒に働けるやり方だと感じた。

もう課題分析はしない。
これからは、「チャレンジしてみたいことはある?」と問いかけてみることにする。


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