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おいでよ、駅前劇場

小屋入りして5日目が終わろうとしている。
僕は出演していないけれど、劇場での時間が毎日楽しくて仕方がない。

こう書き出したら、低学年の小学生が
「あのねあのね、今日こんな楽しいことがあったの!」
っていう子どもがお母さんに話す感じになってしまう。

お兄ちゃんが聞いたら
「あっそ」
ってなるのに、この場はお兄ちゃんよりも関係性が圧倒的に浅い
完全なる他者に向けて書く場なので

「知らんがな」

っていうのは分かってるんですけども、書きたいから書きますね。
僕が所属している劇団についてのお話、関西のヒエラルキーのお話、ふざけることについてのお話などします。

僕、アナログスイッチていう劇団に居るんですけども、小劇場で普段活動してる劇団なんですけどもね、
コメディやってるんですよ。僕は関西人なんで、かっこいいより、頭がいいよりも「おもろい」ことが好きなんですね。
だから、コメディをやっている劇団アナログスイッチに入りました。

僕は出身が奈良で、小中高と奈良で過ごしたんですけど、教室のヒエラルキーは
おもろい、
かっこいい、
スポーツができる、
頭がいい、
っていう順番で完全に分かれてましからね。

おもろいことが正義。これは関西において絶対やと思います。知らんけど。

高校の時の一番おもろかった友達は、「しもや」って言うんですけど、正直いうてイケメンではないんですけど
しもやは圧倒的おもろさで、学年で一番かわいい吉岡さんと付き合ってました。
吉岡さんもすごくて、
というのも学年に360人も居るのに、
「かわいい」ということで学年全員に名が知れ渡るくらい可愛かったんですよ。僕が高校の時にtik tokあれば吉岡さんはフォロワー10万人は絶対いってたな。
そのヤバかわいい吉岡さんと付き合ってたのが「しもや」っていう同級生なんですよ。

今振り返ってみると、何が面白かったのか具体的に覚えてないんですけど、とにかく授業中も休み時間もひたすら笑ってました。
しもやが常に爆笑の渦の中心にいて、そりゃもう教室を回してて、僕はシンプルに嫉妬してました。

「俺もおもろいはずや」

って、対抗心を燃やしては、僕的にはキレキレのツッコミを入れるんですけど、あんま受けまへん。
しもやは何を言うてもウケる。これには悩まされましたね、
ウケるっていうのは
「おもろいことを言う」ってことやなくて
「何を言うても笑えるグルーブ感を作ることなんや」
って気づいたのは最近です。

でも当時は相当悩んでて、自分の発言で笑いが取れないことを自分の顔のせいにしてました。

見てください。僕、イケメンなんですよ。

は?

って思った方、いっぱい居ると思うんですけど、とにかく聞いてくださいな。
僕はそれを本気で悩んでたんですの。人の悩みは人のもん、人っていうのは
「何でそれで悩むん?」
って周りから思われるようなことに本気で悩むもんですやん。

僕はほんまにこれが悩みで、自分が最高におもろい、と思うことを言うても自分が思ってるほどウケない状況のことを
「さわやか化」って名付けてましたからね。僕が何言うてもさわやかな風が吹くんや、って開き直ってました。それくらいにはイタイ高校生でした。
「笑いを取る」ということにコンプレックスを抱いて、自分のイケメンにもコンプレックスを抱くっていうね、かなり拗らせてました。

(かっこつけてる僕です。)

で、ここからがアナログスイッチの話なんですけどと。
楽しくも拗らせた高校時代を過ごして、俳優をはじめてアナログスイッチの公演を初めて見たときは衝撃でした。
なんていうんでしょう、お笑い番組で芸人さんがやるような笑いやなくて、ストーリーの中で笑わせていくスタイルがめちゃくちゃカッコよく見えたんですよ。おもろいことをやって笑わせてるっていうよりも、ストーリーの中でふざける登場人物を観客が見て笑うっていう、その構造がお笑いとは違ってて「おもろい」よりも「楽しそう」に見えて、とにかくそれに僕は心打たれました。

高校の時の僕のコンプレックスが消えていくような気さえしました。
「おもろくなくてええんや、楽しくふざけたらええんや」
って思えたんですね。

そんな衝撃を受けた公演のパンフレットに次回公演のオーディションのチラシが挟まれていて、速攻申し込んで、ありがたいことに「入団」ということになりました。

今回、久々に奈良から下北でみんなと再会したんですけどね、とにかく楽しいんですよ。
さっきも藤木さん(劇団員)に、ドン・キホーテで僕が買ったマスクが子どものサイズで、
「藤木さんの顔の大きさに合うマスク中々ないと思うんで、これあげます」
って言ったら
「え〜、ありがと。うん、ちっちゃい。」
的な感じでノッてくれてました。開場3分前なのに。

なんか、アナログスイッチの舞台を
「仲間内でふざけあってるだけ」
って批判した人が居たらしいんですけど、僕はそれを聞いて
「その人めっちゃ分かってるな〜」
ってむしろ嬉しかったですね。

ほんまに仲間内でふざけってるだけなんで、そういうのが嫌い人はもう仕方ない、って思うしかない、って感じですよね。
この文章もただの仲間賛美歌みたいになってて気持ち悪い人もいるかもしれないな〜と思いながらも、
「どうやったら魅力を発信できるやろう」
って悩みながら書いてはいるんですよ。

アナログスイッチの作品は、高校の時の部室のノリです。僕は稽古中よく、高校のコーラス部時代のこと思い出してました。しょうもないことでふざけて仲間内で笑うあの感じ。気の許した友達とただただふざけあってるあの感じ。
最初からそんな風に思えたわけじゃなくて、むしろノリについていけへんなぁ、って苦しくなったこともあるんですけど、過ごす時間が増えると自然と高校の時の部室のノリ的なグルーブを楽しめるようになりました。

そういえば、主宰の佐藤さんが演劇を始めたきっかけを聞いたことがありまして、その話がむっちゃ好きなんですけどね、
「渡辺と出会って、こいつと『演劇』やりたいって思った」
って話してて
「いや、渡辺さんすごいな」
って思って
「佐藤さんアホやな」
って思いましたよね。それで今まで続けてるんですからね。

(こちらが渡辺さんです。)

ふざけることでお客さんをハッピーにできる、ってそんな幸せなことはありません。
もちろん、お金をいただいて見てもらうわけですから、こちらも真剣になります。
真剣にふざけます。そうすると、何が面白いのかわからなくなったりもします。
でも、原点は「あの時の高校のノリや」と僕は思ったりしてます。


下北で久々に劇団員のみんなと再会して、客演さんにもお会いしてから5日が経とうとしています。
今回、僕は出演していませんが、とにかく楽しい毎日を過ごしています。(出演しなかった経緯を知らない方はこちらもぜひ。)

僕はお手伝いをしながら、みんなにウザ絡みをしてはしっかりウザがられてます。それが楽しい。

そんな愉快なアナログスイッチがお送りする、
「みんなの捨てる家」
は月曜日まで上演しています。

田舎の実家を巡って兄弟たちがわちゃわちゃする、そんな話です。(雑やな)
詳しいあらすじ、僕たちの公演に少しでも興味を持っていただけた方はこちらを見ていただけたら幸いです。月曜日までやってます。

田舎出身の僕も、いつかは衝突するかもしれない空き家問題。継ぐ人がいなくなった家を僕はどうするんでしょうか。分かりません。
そんなちょっぴりシリアスな話をおもしろおかしくやっていますので、ぜひぜひ劇場に足をお運びいただけたら幸いです。

外に出ることがなんだか憚られる状況になってしまったので、大きな声では言えないのが辛いです。劇場に来ていただなくても
「へー、そん感じなんだぁ」
とここまで読んでもらえて、それだけで嬉しい限りです。

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