見出し画像

62/* ライブデビューの日

友人の勧めで、今日ライブハウスで歌を歌ってきた。いわゆるライブというやつだ。僕は音楽がすきで、曲も作ったりしているけど、ライブというのは実は初めて。路上とは違うことははなから分かっていたし、いつだって初めてというものは緊張する。

正直、最高に気持ちがよかった。歌ったのはたった3曲だけど、全部オリジナル。僕が実家の六畳間にこもってヒソヒソと作っていた曲が、こんな形で人に聴かせることができて、最高に気持ちがよかった。でも今日は、自分自身の気持ちよさよりも、もっと色んなことを感じる日だった。

まずなにより、音楽にこんなにも心酔している人がまだこんなにもいるんだな、ということ。もうこの人たちにとって、音楽は彼らの人生を狂わせるものなのではないかと思うくらい、楽しそうに音楽をやる人間を、僕は久しぶりにみた。

プロのミュージシャンのライブとはまた違う、音楽の形がある。あの脚色された舞台ではなくて、もっと生活に近いところで、もっと感情に近いところで、この人たちは音楽をやっているんだな、と思った。こんな人たちの中で、僕なんかが歌っていいんだろうか、と物怖じさえした。彼らにとって音楽がどういうものか、を考えるだけでワクワクしたし、そういった人生に少し嫉妬もした。もちろん、楽しいことばかりでないのは知っているけど。

そして、こんなにも想いに忠実で、音楽に向き合っていながらも、日の目を浴びない人だっているんだな、ということを知った。僕にとって今日見たアーティストたちは全員ヒーローのようだった。寒さも増してきたこんな日々で、汗を流して、声を振り絞って感情を歌う姿は、本当にかっこいい。でも僕は正直、彼らを今日の日まで全く知らなかったし、知らずに通り過ぎていく人たちはたくさんいるんじゃないかな、と思うたび、言いようのない想いを抱く。彼らがどんな人生を望んでいるかはわからない。けど、僕は彼らの存在や歌を、もっと多くの人が知ればいいのに、と思った。

僕は、世界を見ずに死んではいけない、と日々思っている。世界の意味は、そのまま世界、世界中の国々だ。でも、こんなにも身近なところにも、僕の知らない世界はあった。日々通り過ぎる道の路地の地下で、僕の知らない世界を生きる人たちに出会うことができた。世界を見ずに死んではいけない、ではないんだな。どんな世界をみて死にたいか、それが大事なんだろうな。

サポートいただく度に、声をあげて喜びます。