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幸い中の不幸
或る夜の話。財布を落としたことに気づく。3秒前のほろ酔いが嘘だったかのように心拍数が上がる。財布につけたエアタグのおかげでわかるのはエアタグの位置だけで、そこに財布があるなんて保証はどこにもない。
エアタグが示していた場所は交番だった。酔いから醒めた私による私のための、完璧な手続きを終える。身分証明書やクレジットカードがそのままになっていることを確認して、無事財布を手にする。2秒前のあのネガティブな感情はとうの昔に忘れ去ったようだった。
交番を出て、ふと「あれ?現金少ない?」と感じる。明らかに1万円札が1枚だけ足りない。2日前におろして使っていないままだった。キャッシュレス推進派なのもあって、この点はかなり自信がある。なのに、1秒前の完璧な手続きの最中に気づけなかった自分に腹が立つ。
それなのに、誰もいない夜道で笑ってしまった。堪え切れなかった。
幸い中の不幸だ。
「財布を落として1万円札が抜かれていた」この事実が面白かった。そしてあまり落ち込まなくなってる自分にも笑ってしまった。
帰り道、こんな自分になにか買ってあげたくなって、セブンイレブンに入る。春雨スープと、あ、そういえば…
あれ?セブンイレブンで使おうとしてた「チョコまみれ」の無料引換券もなくなってるやん。
1秒後に誰かに話したくなった。
不幸中の幸いだ。
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