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TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -YONMARU-

2021年に再起動したTM NETWORKによる約三年間の活動を閉じたのは、2024年の「YONMARU」です。2022年に「FANKS intelligence Days」というキーワードを冠して始まったツアーが、2023年(DEVOTION)と2024年1~3月(STAND 3 FINAL)のツアーを経て、2024年4~5月の〈TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -YONMARU-〉で完結しました。2022年のツアー初日をDay 1と称し、YONMARUの最終日をDay 40として迎えました。

セット・リストは初期(1984~1987年)の曲を中心に構成されました。間に丸ごと組み込んだのが、1988年のアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』の物語に関する曲(「A DAY IN THE GIRL’S LIFE」~「JUST ONE VICTORY」)です。組曲形式で演奏したことは何度もありますが、「CHASE IN LABYRINTH」と「GIA CORM FILLIPPO DIA」を加えた形は1989年以来ではないでしょうか。

ライブは、開幕用のインストゥルメンタルや映像をなくし、光の中から三人が登場して一曲目を演奏するというシンプルな演出で始まりました。演奏するのは「SELF CONTROL」です。オリジナルに準拠した音で、象徴的なリフと繰り返されるコーラス、疾走感に満ちたボーカルが観客の心に火を点けます。続く曲は、久しぶりに選曲された「MARIA CLUB」です。1987年の華やかなディスコ・ソングが2020年代エレクトロニック・サウンドでアップデートされました。クールなイントロに心揺さぶられ、一緒に歌うサビのフレーズに心躍る。今もなお色褪せないメロディがフロアを沸かせるダンス・ミュージックです。

デビュー作からは二曲が選ばれました。「1974」は結成して最初に作った曲のひとつで、当時に戻るかのように三人で演奏しました。みんなで歌った♪Sixteen あの頃の気持ち♪が心に残ります。ビデオに映る怪物のひとりにウツが扮していたという秘話もライブの後に明かされました。表題曲「RAINBOW RAINBOW」のアレンジは、2014年のリメイクとは異なるEDMスタイル。オリジナルの時点からシンセサイザー・サウンドを追求した曲であり、エレクトロニック・ミュージックの可能性は無限大です。

「CONFESSION」は1986年のアルバムに収録されたバラード。ウツの語りかける歌の素晴らしさを改めて実感します。EDMでパーツに徹する歌やロック・ボーカリストらしい存在感と並び、バラードで見せる懐の深さもまた、ウツの歌を聴く醍醐味です。1985年にシングル・カットされた「ACCIDENT」は前回のツアーを踏襲しながらもアップデートされて、さらにリズムが強調されました。40年を経たアップグレードの痕跡はウワモノだけではなく、曲のボトムにも表われます。

CAROLを演奏した後は「Coexistence」の文字がスクリーンに映され、リズムを強めたEDMのインストゥルメンタルが流れます。その後半からサポートメンバーのソロが加わり、阿部薫のドラムと北島健二のギターをフィーチャーした音の宴が、蓄積した熱と勢いを「Whatever Comes」に注入します。2024年4月21日に配信された「Get Wild Continual」は、今鳴らしたい音を詰め込んだパフォーマンスでした。変わり続ける宿命を背負った曲は、音源でもライブでもアイデンティティを貫きます。今後も何らかの形で新たな変化を見せてくれるかもしれません。

最後に披露された曲は「ELECTRIC PROPHET」です。2021年の配信ライブで最初に演奏された曲であり、円を描くように戻ることを意味していたのでしょうか。ウツが♪今夜のような夢を 見せてあげるよ♪を一際強く歌った場面が印象に残りました。あえて余韻を残さないようにしたのか、曲はエンディングを伸ばさず唐突なカット・アウトで終わりました。三人の姿が消えると、インストゥルメンタルの「intelligence Days」とともにスクリーンにスタッフの名前が映され、ライブが終幕を迎えます。

いや、終わりではありません。歪んだ無機質なボイスが会場に響き、「One more song」と告げた後に「Coexistence with TAK MATSUMOTO」と驚愕の言葉を連ねます。登場した松本孝弘が挨拶代わりにギターを鳴らし、大歓声に応えます。18日のライブは「BE TOGETHER」で一気に駆け抜けて終わりました。しかし翌19日はさらにもう一曲。なんと「GET WILD」をオリジナルに準拠したアレンジで披露しました。まっちゃんのギターで「GET WILD」を生で聴くなんて、個人的に初めてだったので、意識が追いつきません。ライブ音源やビデオだけで知っていた音楽世界が目の前に広がる――YONMARUが届けてくれた素晴らしい贈り物です。

TM NETWORKはYONMARUを終え、各々の活動に戻ります。思い返すと、小室さんと木根さんが披露した「Carry on the Memories」では、音楽を始めたころの気持ち、去っていった仲間、その延長線上にある今、道の先を詞にして、メロディに乗せました。繰り返された「carry on」が印象に残ります。ライブの最後、スクリーンに「歩める限り」音楽を続けるというメッセージを刻み、三人は白く輝く光の中に消えました。


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