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TM NETWORK「Green days 2013」:緑の季節を彩るエレクトロニック・ミュージック

TM NETWORK「GREEN DAYS」という曲は、2004年のコンサート〈TM NETWORK DOUBLE-DECADE TOUR FINAL “NETWORK”〉で披露されました。音源化を願ったものですが、リリースは叶わず諦めていました。ところが、まったく予期せぬ知らせが飛び込んできたのは2013年。コンサート〈TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-〉が開催されるにあたり、音と歌を録音しなおした「Green days 2013」のCDが会場で販売され、コンサートでも演奏されました。

ミディアム・テンポの「Green days 2013」は、メロディや歌詞の端々に穏やかで優しい雰囲気を漂わせ、それらをソフト・シンセの音が包みます。当時は小室さんが本格的にソフト・シンセを制作やコンサートに導入した時期です。そのため、この曲にも初期のTK EDMサウンドが反映されています。サウンドの構築に加え、さらに音のバランスを決めるミックスの作業も小室さん自身が行なっています。エレクトロニック・サウンドの心地好さを強調しながら、ボーカルの良さがダイレクトに伝わるミックスです。

淡々と音を紡ぐ中で、間奏では、厚みがあって美しいシンセサイザーのフレーズが心を揺さぶります。初夏に吹く、からりとした風のような心地好さ。音の厚さは間奏の前後でほとんど同じなのですが、間奏を聴いた後の終盤では印象が少し変わり、穏やかなたたずまいの中に芯の強さが感じられるようになります。そしてエンディングではさらに音の数が絞られますが、音が消える最後の瞬間までじっと耳を澄ませたい。

小室さんの音に乗って届くウツのボーカルを、これまでどのくらい聴いたのでしょうか。「Green days 2013」のボーカルには、木漏れ日のようなクールさと柔らかさを感じます。それはもともとウツの声や歌い方の特徴ですが、ミディアム・テンポの曲になると顕著になります。ダンス・ミュージックの中で楽器の一部としてパーツに徹するボーカルもあれば、この曲のように、メロディや言葉と聴き手をつなぐボーカルもあります。小室さんのメロディをウツが丁寧に届け、そのリレーを木根さんのコーラスが支える。シンプルで純度の高いトライアングルを、僕らは「Green days 2013」でダイレクトに感じることができます。

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