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横幕智裕・モリタイシ『ラジエーションハウス』:身体の中を見る仕事、見えなかったものを見る物語

漫画『ラジエーションハウス』(原作:横幕智裕、漫画:モリタイシ)は、2015年から『グランドジャンプ』で連載が始まりました。当時、医療機器に関わる仕事をしていたことから興味を持ち、初回が掲載された雑誌を買った記憶があります。現在までに15冊の単行本が刊行されていて、来る2024年5月には最新16巻が発売される予定です。

X線撮影(レントゲン)、CT、MRI。治療方針を決める材料となる画像診断を主におこなう放射線科にスポットライトを当てた物語です。その組織を「ラジエーションハウス」と名づけ、診療放射線技師の「五十嵐唯織」と放射線科医の「甘春杏」の関係を軸に、放射線科の仕事や人間模様を描きます。

画像に写る小さな異状から病変にたどり着くストーリーは、事件現場に残されたわずかな手がかりから真相に迫る刑事ドラマのようです。もちろん画像診断はドラマチックな出来事が頻発する仕事ではありませんが、あらゆる医療系エンタテインメントがそうであるように、起こり得ることを脚色して物語を組み立てます。膨大な知識と体験をベースにして拾い上げる画像の違和感、技師が患者とのコミュニケーションから得る病変のヒント、技師と医師が協力して作り上げる強固なチーム。

多くの人がX線撮影をはじめ放射線科の世話になっていますが、裏側を知る機会は多くありません。だからこそ機器を扱う技師、読影する医師、開発するメーカーなど、今まで意識しなかった職業や仕事に目を凝らしてみると、興味深いストーリーに出会えます。見えなかったものを見る――それは身体の中を見るラジエーションハウスそのものです。

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