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藍井エイル「Raspberry Moon」:紅く熟れた月を見上げ、蠱惑的な歌声と音の乱舞に誘われる

藍井エイルといえばロック。そう断言することもできるくらいロック・サウンドで固められていますが、ときには変化球を見せます。珍しくジャズやファンクに寄せるアプローチを見せたのが、「Raspberry Moon」という曲です。2015年にリリースしたシングル「ツナガルオモイ」に収録されています。

ベースの太い音を軸にしたリズムに、ノリのいいホーンやピアノの音が軽快に絡みます。ホーンは随所で前に出てきて、ボーカルと入れ替わりにサウンドを引っ張ります。ギターはロックのたくましさとファンクの色気を同時に漂わせ、ひとつの曲を織り上げます。

サウンドに導かれたのか、エイルの歌声にも艶っぽさが見られます。こういった歌い方もできることに驚き、「藍井エイルはアニソン」というイメージを抱いていた頃には想像もしなかった多面性を感じました。多面性というものは、離れたところから眺めていると見えづらいのですが、ぐっと近づくと見えてくるものです。

配信ライブ〈Eir Aoi LIVE TOUR 2020 “I will...” ~have hope~〉で、エイルは黒いハットやケープコートをまとい、「Raspberry Moon」を披露しました。黒い衣装から生み出された歌声は曲線的で蠱惑的に響き、夜空に浮かぶ赤く熟れた月を思わせます。艶っぽいファンクと荒々しいロックがせめぎ合う音とともに、他の曲にはない魅力を放っていました。


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