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Led Zeppelin「In My Time Of Dying」:生命力に満ちた音で聴き手を絡め取る圧巻のロック・パフォーマンス

好きなLed Zeppelinの曲は何か――そう問われることがあるなら、僕は真っ先に「In My Time Of Dying」を挙げます。収録されているアルバムは、1975年にリリースされた『Physical Graffiti』です。11分に及ぶ長大な曲であり、最初の三分の一は曲名に違わず、人生の終幕を思わせる重厚な雰囲気が漂います。けれどもその後の三分の二は雰囲気が大きく変わり、エネルギッシュで色気のあるロック・スタイルが炸裂します。むしろ生きる力がみなぎる。

曲の開幕を告げるのは、不穏な空気を演出するスライドギター。ダイナミックな波を描くギターの音を中心に据え、周囲でベースとドラムが重厚なリズムを構築し、抑制的な歌がメランコリックな音楽世界に輪郭を与えます。原曲から引き継いでいる♪Jesus gonna make up my dying bed♪というフレーズが強烈で、気怠く諦観すら感じる歌い方にもかかわらず、鮮烈な印象を残します。

時が満ちると、目の前の世界は一変します。途切れることなく鳴り続けるギターはアグレッシブで、形を変えて聴き手に絡みつく。ギターの音を煽るように分厚い音を積み上げるベースとドラム。音は他の音に触発され、交錯し、混淆して、より攻撃的に、より扇情的に曲を彩ります。濃密な音の塊に圧倒されます。

「In My Time Of Dying」との出会いは衝撃的でした。この曲を知ったのはコンピレーション・アルバム『Mothership』の特典DVDです(『Led Zeppelin DVD』からの抜粋)。1975年にロンドンのEarl’s Court Arenaで披露された「In My Time Of Dying」のライブ映像に度肝を抜かれました。最初から最後まで余すところなく素晴らしい演奏です。3分弱ではあるものの、最も熱い部分の演奏をYouTubeで観ることができます。

曲の構成はスタジオ録音と同じですが、あらゆる音が分厚くて、あらゆるパフォーマンスの魅力が数段階も上がっています。Jimmy PageのギターとJohn Bonhamのドラムが火花を散らすようにして曲を盛り上げます。Robert Plantのボーカルも色気に満ちており、目にも耳にも鮮烈なインパクトを残しました。

三人の特異的なパフォーマンスをさらに高めるのがJohn Paul Jonesです。奔放なギターと強力なドラムの音を支えつつ、間を縫うようにベースが存在感を示します。John Paul Jonesの演奏はJimmy Pageたちが見せる派手さとは対極的ですが、彼のベースがあるからこそ他の音が活きるのではないでしょうか。それほど速いテンポではないのに体感速度が上がるアンサンブルであり、ベースの貢献も決して小さくありません。映像で聴覚的にはもちろん、John Paul Jonesの指の動きで視覚的にも分かります。


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