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Reol『金字塔』:立体的な歌声が打ち立てる音楽世界、色鮮やかに駆け巡るエレクトロニック・サウンド

タイトルは『金字塔』。ピラミッドを指す言葉として生まれ、今では、後世に残り得る優れた業績を表わす際に用いられます。存在感の大きいこの言葉を冠したのが、2020年1月にReolがリリースしたオリジナル・アルバムです。2019年に発表されたシングル「ゆーれいずみー」と「HYPE MODE」、2曲の短いインストゥルメンタルを含め、トータル11曲で構成されています。

アルバムは表題曲「金字塔」から始まります。伸びやかに響くReolのボーカルからは、曲名に負けず劣らず、自らの音楽に対する確信が伝わってきます。その歌声は立体的というべきか、不思議な奥行きを感じ、曲をもっと聴きたいと思わせる魅力があります。また、カラフルな音をまとうEDMスタイルのバックトラックは、エレクトロニック・サウンドの良さを存分に味わうことができます。

「HYPE MODE」でReolを知り、その音楽を遡って聴いてみると、ひとつには絞れない音楽スタイルの幅広さを実感します。そうした越境スタイルの中でも芯といえそうな要素が「ヒップホップ、EDM、ポップスの混合」です。この路線は『金字塔』でも随所に見られ、アルバムの大部分をカバーする特徴といえます。例えば「ダリ」「GRIMOIRE」といった曲で感じるノリや音の気持ち良さ、軽やかに舞う言葉の心地好さは、ジャンルが混ざり合って生まれたものだと思います。

『金字塔』では、多彩なエレクトロニック・サウンドに加え、それらを支えるベースにも心を奪われます。ベースによって魅力が増幅されている曲のひとつが「un, deux, trois」です。美しいメロディを包み、曲の輪郭を描くベースの音が印象に残ります。Jazzyなヒップホップとでもいえばいいましょうか。音の中に沈み、音を身体に馴染ませるように聴き、踊りたい曲です。

最終トラックの「1LDK」は、アルバムのリリースに先立ち配信されました。ピアノの音から始まり、ピアノの音で終わる曲です。ピアノとベースが絡み合い、それらは乾いているようにも、湿り気を帯びているようにも響くのが不思議です。また、鍵盤の音が連なるところではジャズのフレーバーが漂い、その色はエンディングで一層濃くなります。リズミカルに響くピアノの音がフェイド・アウトして曲が終わり、そしてアルバムが幕を閉じます。

『金字塔』がリリースされた1月22日、ReolがYouTube Space Tokyoでライブ配信を行ないました。いくつかのスペースを移動しながら、「HYPE MODE」、「ゆーれいずみー」、「1LDK」を含む全7曲を立て続けに歌った30分間。光と映像で演出された空間に歌が響き、Reolの歌声の魅力を存分に味わえました。そして、他のアルバム収録曲がライブで披露されるのは2月から始まるツアー〈Reol Japan Tour 2020 ハーメルンの大号令〉であり、期待は高まるばかりです。


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