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Steve Aoki「Heavenly Hell [feat. Ne-Yo]」:ポップに駆け抜けるエレクトロニック・ミュージック、緻密なサウンドの世界へのエントランス

Steve Aokiがアルバム『Paragon』を2024年6月にリリースしました。アルバムを再生すると、最初に飛び出す曲が「Heavenly Hell」です。キャッチーな旋律、軽快なリズム。Ne-Yoのボーカルはとても爽やかで、軽やかなバックトラックとの相乗効果を生み出します。

歪んだ極太のエレクトロニック・サウンドが代名詞であるSteve Aokiも、ポップな曲やリズムの軽い曲をいくつも発表しています。今まで彼が制作したポップ・ソングと比べて、「Heavenly Hell」の軽快さや間口の広さは引けを取らないのではないでしょうか。そこにNe-Yoの甘い美声が貢献していることは疑いようもありません。

加えて、ポップの濃度が上がっている要因は、リズムやシンセサイザーに漂うレトロな空気です。1980年代らしいポップスというべきでしょうか。僕が思い浮かべたのはニュー・ロマンティックです。小気味よく跳ねるリズム、耳に心地よいメロディを刻むシンセサイザーのリフ。明るい音が時代をコネクトします。

一方で、じっくり聴き込むとポップなテイストの裏や間にある緻密な音の世界に触れられます。一際輝くのが太いベースの音です。曲の快活さや軽快さを損なうことなく土台として支え、さらに色気を与える音。ポップス的なアプローチが主体の曲でも、ボトムを作り込む職人芸に感動します。


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