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ORESAMA ONLINE STUDIO LIVE on Z-aN

2020年の前半からミュージシャンたちの活動方法が変わり、特に大きな影響を受けているのがコンサートです。大人数が集まることがリスクを高める要因になる以上、どれだけ念入りに対策しても開催は難しい。予定されていたコンサートが軒並み延期・中止になるなかで、観客を入れずにストリーミングで配信するのが現時点のベターな解決策になっています。

「Z-aN」という動画配信プラットフォームを使って、ORESAMAが初めてスタジオ・ライブを配信しました(〈Z-aN Fest: Over the Limit 0801〉というイベントの一環)。ORESAMAのぽん(ボーカル)と小島英也(ギター)に、サポートとしてMONICO(DJ)、三浦光義(ベース)、大松沢ショージ(キーボード)が加わりました。キーボードが参加するのが、ここ1年ほどで確立したORESAMAのライブ体制の大きな特徴です。

約1時間のライブで演奏されたのは12曲。新旧の曲をバランスよく散りばめた選曲であり、いくつかの曲ではアレンジに手が加えられました。特に印象的だったのが、ファンキーになった「迷子のババロア」や、明るくジャジーで色気も感じた「密告テレパシー」です。ORESAMAのライブはアレンジが変化して、オリジナルとの違いを楽しめるところが好きです。

また、「ワンダードライブ」では、大松沢ショージが弾くYAMAHA reface CPというシンセサイザーの音が加わりました。もともと「ワンダードライブ」ではアナログ・シンセサイザーを思わせる太い音が入っていて、ライブでも他の音とともに流れます。今回は、そこにYAMAHA reface CPの太い音を重ねることで、音は厚みを増し、曲がたくましくなりました。聴きたいと思っていた「ワンダードライブ」の雰囲気にかなり近づいて、とても楽しかった。

配信終了後、小島英也が「配信ということでヘッドホンやイヤホンでの試聴も視野に入れた音作りをしてみました」とツイートしました。僕は音をバランスよく拾うヘッドフォンで聴いて、とても良かったと思います。ダンサブルなファンク・サウンド、静謐な空気を震わせるピアノ、そして柔らかいけれど芯の強さが感じられるボーカルなどの良さが、生演奏の臨場感とともに伝わってきました。会場では「音を浴びる」のだとすれば、ストリーミングは「音を飲み込む」というべきでしょうか。身体を揺らす代わりに頭の中が興奮に満ちます。

ライブの途中のMCでぽんは、すでに発表されていたシングルのリリースに改めて触れ、さらに渋谷でのリリース・パーティーも発表しました。その時期は秋で、しかもライブハウスなので、通常のライブが開催できるかは不透明です。もちろんそれはORESAMAのチームも念頭にあるようで、ぽんのMCからは会場からのストリーミングを視野に入れていることが窺えました。

コンサートのストリーミングは今に始まったことではありませんが、「初めて開催するバンドが増えた」、「ストリーミング『だけ』で開催する」という点が2020年の特徴です。この状況がいつまで続くかは誰にも分からず、2021年以降を見据えて、今年は業界全体で実験を重ねているところなのではないでしょうか。

僕ら音楽愛好家ができるのは有形無形の応援を届けることくらいですが、もっとできることはないだろうかとも考えています。新しい音楽、新しい感動を届けてくれるアーティストに対して、もっと多くの感謝を伝えたいと思いながら、それぞれのチャレンジを受け取り、楽しみます。

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