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LINKIN PARK『LIVING THINGS』:音の流れ、メロディの流れ、言葉の流れを味わうロック・アルバム

LINKIN PARKが2012年にリリースしたスタジオ・アルバムのタイトルは『LIVING THINGS』。ふとしたきっかけで聴きなおし、その魅力を改めて感じているところです。当時は気づいていなかった音の重なりやメロディの美しさに、今さらながら感動を覚えています。

イントロの後にMike Shinodaのラップが飛び出す「LOST IN THE ECHO」からアルバムは始まります。Mr. Hahnのスクラッチも存分に聴けます。続く「IN MY REMAINS」では、Chester BenningtonとMikeのツイン・ボーカルを楽しめます。静かに語りかけるようなMikeの歌がとても印象的です。「BURN IT DOWN」は先行して公開されたシングルです。抑えたテンポの中で、Brad Delsonのギターが凝縮されて満ちます。Chesterの最後のステージとなった2017年のツアーでも演奏されました。

そして、ポップな曲調がタイトルとのギャップを際立たせる「LIES GREED MISERY」と、ギター・ロックにストリングスを乗せた「I’LL BE GONE」が駆け抜けます。アルバムの中間地点に位置する「CASTLE OF GLASS」では、Mikeの淡々としたボーカルが低空飛行を続けます。サウンドは最初は薄く、徐々に熱を帯びて、厚くなっていきます。沈み込むような音の中で表情を殺している歌が響きます。

「VICTIMIZED」はRob Bourdonが叩く音が格好良い。激しいドラミングの間に、リズミカルなパターンが組み込まれ、豊かな表情を見せてくれます。ChesterのスクリームもMikeの斜に構えたようなラップもばっちりはまっています。「ROADS UNTRAVELED」では、まずMikeが歌い、間奏をはさんで、同じメロディをChesterが歌います。Phoenixが奏でるベースに支えられ、感情を抑えた歌と咆えるギターが交互に前に出ます。

続く「SKIN TO BONE」は軽快な音の中で、湿り気を帯びたメロディが耳に残ります。LINKIN PARKにしては珍しいウェットさを感じました。「UNTIL IT BREAKS」は気だるいラップとクリーンなボーカルの対比が印象に残ります。3分半という短い時間の中、前半と後半では印象ががらりと変わります。「TINFOIL」(アルミ箔)と名付けられた短いインストをはさみ、その音とつながるかたちで最後の曲「POWERLESS」が始まります。エモーショナルに突き抜けるChesterの歌声、そして感情を爆発させるかのように響くBradのギター。ドラマチックな音の展開は、聴き終えた後に余韻、そして痕跡を残します。

激しい音のなかで屹立する美しいメロディ。LINKIN PARKの魅力を一点に絞るならば、そう表現します。Mikeのラップ、Chesterの美声、分厚いバンド・サウンド、多彩なアレンジーーそれらを総合して掘り下げてひとつの要素を抽出すると、やはりメロディなのだと思います。ボーカルのメロディのみならず、楽器が奏でるメロディも含めて、音符の移り変わり、流れがとても心地よい。その流れに魅力を感じているから、音が重なっていても、少ない音で構成されていても、どちらも楽しめるのではないでしょうか。


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