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【一期一会メシ①】韓国のやさしさに包まれた大盛りユッケ

一期一会、それは一生で一度の出会い。

あの日あの時のあの味に、今の自分が救われる。

そんな素晴らしかったご飯の話をさせてください。

2019年の秋、私は韓国ソウル、広蔵市場なるところにいた。

日本では法規制が厳しく、ある日突然食べられなくなったレバ刺し。

そんな彼の面影を求め、ユッケ通りと呼ばれる場所をさまよっていたのだ。

一緒に旅行する友達とは現地集合だったので、私は前乗りしてひとりでぶらぶらすることにしていた。

おそらくここだろう、と目星を付け、海外独特の怪しいアーケード街の中に足を踏み入れると、驚いた。まるで千と千尋のような景色が広がっているではないか。

屋台に次ぐ屋台、そのカウンターでとてもうまそうな韓国総菜をビールと共に頬張る大人たち。

こりゃあとんでもないところに来ちまったぜ…胸を躍らせて向かうは生肉をメインに置いているユッケチャメチッ。

店の外に座って並んでいる皆さんにならい、並ぶこと30分弱。

こっちを見てる店員さん「%&')))##%)(&#"ニダ」

やっべえええええ、韓国語わからんんんん

私「オーーゥ、アイキャントスピークコリアーン…」

何かを察した店員さん、渡される英語のメニュー。

そのまま席へと案内され、日本では滅多にお目にかかることのできない生肉だらけのメニューに生肉欲が止まらない。。。。

何を頼むかは決まったものの、店員さん、声かけづらいよお...と悩んだ顔をして周りを見渡していたら、隣の席の韓国人夫婦の奥様が代わりに呼んでくださった。

私「カ、カムサハムニダ~!!!!」

待つこと10分ほど。

運ばれてきたのは、レバ刺しとセンマイのハーフ&ハーフ...

う、美しい。

一緒についてきたごま油と粗目の塩にさっとくぐらせ、ぶつ切りにされたレバーを口に運ぶ。

ささやかなプチっとはじける感覚の直後、新鮮なレバーのねっとりとしたうまみが口いっぱいにひろがる。

美味しい、これを求めて生きていたんだ私は...

ニコニコ食べる私を優しそうに見守る隣の席の奥さん。

なけなしの韓国語で感想を伝える私「マシッソヨ!」

韓国人マダムは嬉しそうに微笑んでくれた。

ビールとともに、生肉を流し込む。口福とはよく言ったものだ。

しかしながら、皿の上の肉がまったく減る気配がない。

なかなかない生肉摂取の機会だと調子に乗って何皿ものユッケを頼んだことが原因だ。

韓国は物価高くないはずなのにまあまあするな〜と思ったらそれもそのはず、普通にとても大盛りなのだ。(おそらく2-3人前)

そこで何を思ったか私は、先ほどの韓国人夫婦に話しかけてみた。「良かったら一緒に食べませんか」と。

今考えると海外旅行というのもあり、気が大きくなっていたからこそできたことだなと思う。

最初は少し戸惑いながらも、それではこちらも、と私の分までビールを頼んでくれ、一緒に食卓を囲むことになった。

お互い拙い英語で、少しずつ話し始めた。

私が日本から来た大学生であることを話すと、あちらも娘さんがいるらしく、「来年大学生になるんだ」と嬉しそうに写真を見せてくれた。

「ああ、そうか。さっきのは娘と同い年くらいの女の子が困ってる、と助けてくれたのかな」と腑に落ち、心がじんわりと温かくなった。

少し熱くなった胸を冷ますように、冷たいビールを流し込んだ。

その後にマッサージの予約があったので割と早々とその場を去ってしまったのだが、その時にもらった優しさはその後の韓国旅行にもとてつもない安心感を与えてくれた。

きっともうあの夫婦に会うことはないだろうけど、彼らの温かさが増してくれたユッケの美味しさを時折思い出しては噛み締める。

いつかまた食べられる日が来ますように。


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