日日是(香)日

来る日も来る日も、香り溢れる好い日であること。     日常の中の、ちっぽけで、尊い…

日日是(香)日

来る日も来る日も、香り溢れる好い日であること。     日常の中の、ちっぽけで、尊い瞬間の備忘録。

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いわゆる夏日

どうしようもなく楽しみな日の朝は湿気の匂いと日焼け止めの匂いがする。 プールの授業がある日、遠足に行く日、運動会当日の日、海に家族で行く日。 日陰に隠れていた草木や土が火に照らされて喜んでいる匂い。 どうすることもできない高揚感を隠しきれないまま、平静をなるべく装って目的地に向かう足取りは言葉通り浮き足立っていて。 そんなかつてを思い出す香りはだんだんと暑さから疲労感を覚えるようになってきた季節に強くなり始め、少しの緊張感と何か楽しいことが起きるんじゃないかという期待

    • 成長

      子供から大人になることが成長であるとは決まっていない。 きっと大人から子供になることも成長なのだ。 私は大人のふりをしていた子供だったけれど、それでも少なからず大人をやってきた。 だけど今、子供に戻りつつある。 自分の思うままに進んで、悩んで、考えたり何も考えずに行動してみたり。 これまで気にしていたことを逆に気にしないで、我慢をしないで素のまま、気のまま、地に足つけてフラフラと漂う。 幼児化・幼児退行という言葉があるけれど、もし今の私にその言葉が当てはまるのだとすれば退

      • 暮らしとか、生きるとか

        キリキリとした音に脅されて目を覚ます。 数字や単位に縛られて、心まで覆い隠す鎧を纏って。 時間の許す限りブルーライトを浴びる。 なんとなく着替えて、なんとなくお腹を満たして、なんとなく話して、 なんとなく、なんとなく。 今日が明日も、何年後も、何十年後も続いていくと勝手に思って、「やらなくていいやらなければいけないこと」を順に片付けながら、それまでのつなぎの日々を無難にやり過ごす。 生活ってなんだっけ。生きるってなんだっけ。 汚れを知らない空気が身体中を巡り、目を覚ます

        • 甘さを被った苦さを優しさというにはあまりにも

          それ飲み終わったらこっちにおいで。僕の隣に来てって。 途端に責任が重くなる、軽い軽いプラカップに入ったカフェラテの残りひと口。 人としては嫌いになれないんだよなぁなんて、そんなのは本当の優しさじゃないという本質にはあえて触れないで。 コーヒーなんて一生カップの底から湧いて出ればいいのに。

        いわゆる夏日

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        • 4本
        • 4本
        • 自己
          10本
        • 茶飯事
          10本
        • 6本
        • ぬくぬくの種
          7本

        記事

          喫茶タカセ

          蝶ネクタイと黒縁メガネが似合う、一昔前の大阪のどこかにある漫才ホールのマイク前に立っていそうなおっちゃんサービスマン。 モーニングのセットミニサラダを前菜と言い、注文をするとはあ、それを頼むんですか。となぜかとぼけたニュアンスと表情で返事が返ってくる。 だけどお会計待ちのお客様にはあちらでお出迎えさせてください! ミルクを頼めば喜んで!!と肩肘張らない上品さと温かさを提供してくれる。 ボリューム満点なモーニングに加えて彼のサービスを受けられるのはコスパが良すぎるよなぁと平日朝

          口の周りをオレンジ色にして

          初めて喫茶店で食べたナポリタンは優しかった。 太めのもちもち麺で、ほんのりケチャップ味、ハムとピーマンとちょっと半生の玉ねぎ。 雨が降っていて少し肌寒くて、何か温かいものが食べたかった。喫茶店はいろいろなところを巡ってきたが,喫茶といえばナポリタンとまで言われているのにこれまでナポリタンを食べたことはなかった。家で食べるものだと思っていたから。 なのに頭の中にはナポリタンの文字しか浮かばなくて,流れるように注文した。頭がぼーっとしていたからだろうか。 なぜか一つランプが欠

          口の周りをオレンジ色にして

          まんまるおにぎり

          家を出る前日の朝。 おにぎりが食べたいと母に言った。 大きくて、まんまるで、しなしなのノリがついていて、食べにくいけれど崩れるのはお構いなしにかぶりつくと塩加減がちょうどいい、母のおにぎり。 運動会の日のお昼ごはんやディズニーランドに行く日の朝の車の中で家族みんなで食べた。 形も結び加減も塩加減もどれも絶妙なバランスの究極のおにぎりを自分で結べるようになって、三角になんて出来ないわ〜本当に上手ね美味しいわって母はいつも褒めてくれるけれど、私にとっての1番のおにぎりはやっぱりこ

          まんまるおにぎり

          鬼ごっこ

          今日はなんだか鬼ごっこがしたくなる天気だなぁとやっと暖かくなってきた日にぽやぽやと窓の外を眩しそうに見つめながら思う。 ふと、目の前に座るママおふたりの会話が聞こえてきて、中学2年生なのに鬼ごっこして遊んでるのよー戦略なんかも立てるんですってと。 もしかして心の声漏れてた?と思うくらいナイスタイミングな話題で盛り上がっている。 戦略立てたりしてるなんて、なかなかやりますなぁ!とつい話しかけそうになったけれど、お母様たちは中学生にもなって…みたいな感じらしくて。 お母さん

          ひと粒ずつ

          キュービィロップはひと粒ずつ食べるか、ふた粒一緒に食べるか論争。 ちなみにキュービィロップは小さな立方体のキャンディが異なる味でふた粒ずつ個包装されているキャンディのことで、幼い頃に10連あべっ子ラムネと同じくらいお世話になったお菓子である。 お菓子は一個という制約があった当時の自分からすると、一個分でふたつの味が楽しめるなんて、実はあんた魔法が使えるんやでと言われるのと同じくらいわくわくしたものだ。 久しぶりにお店で見つけ、普段キャンディは食べないくせに嬉しさのあまりレ

          4/1

          いつもの朝の道、私が何だか少しどきどきしているのはなぜだろうか。 ああ、パリッと新鮮味のある黒スーツの人たちの影響かと思いながら、ちょうど一年前どきどきを与える側だった時のことを思いだす。 あれから一年たったのか。この一年怒涛に過ぎていった気がするが、とても充実していたのだろう。自分が思っていたスピードの3倍は早かった。3年後くらいにやれていたらいいなと思っていた仕事はちょうど1年経つ前に色々と経験させてもらったが、果たしてそれが今の自分の力量に見合っていることなのかと頭

          満月の前日にはパーティーを

          不完全な満月の日は甘さとキラキラで満たす。 いつだって満たされていたいもの。 それが女の子ってものでしょう? 温かいミルクたっぷりの紅茶を入れて、お砂糖でキラキラのお菓子を準備したら、小さな灯りをひとつだけ灯す。 小道の脇の小さな洋菓子店の手作りクッキーは、 不揃いで、どこか素朴な乙女を感じさせるのに上品で複雑なレディのような味を秘めていて、艶めかしいときめきをくれるの。

          満月の前日にはパーティーを

          ジャンボプリン

          朝方の新橋。 会社に向かってゆくかっこいい大勢のおじさんに圧倒されつつも、コーヒーの香りを辿り、ふらっと路地裏に入る。 今日は颯爽とした大人達の流れから脱線したかった。 サンシェードのコーヒー&プリンの文字が輝かしいヘッケルンで注文するのはジャンボプリン。 おしゃべりなマスターとおばさまのやりとりが耳に入り時々笑ってしまいそうになるのを堪えながら、サイフォンを眺めてじっと待つ。 マスターのプリンをぶん回す勢いあるかっこいい姿にはもう堪えきれず笑ってしまったが、ついに来た

          ジャンボプリン

          あめのひコーヒーカップ

          「雨の日」だけ使えるコーヒーカップ。 今日は太陽が出ているけど、どうしても「雨の日」にしたかった。 心に雨が降っているからなのか、それともしとしとと静かな空間に包まれたかったからなのか。 あめのひカップはね、「雨の日」にしたい時も使っていいんだよ。ここだけの話ね。

          あめのひコーヒーカップ

          纏い纏わせ、溶け合って。

          凍えそうな夜。 あの人が纏う、つめたくてちょっぴり寂しくて、 たまらなくギュッとしたくなる外気の香りをそわそわと今夜も待っている。 凍えそうな夜。 あの子が纏わせてくれる、あたたかくてほんのり甘くて、 優しさだけでできたオレンジ色のような香りを目指して今夜も足早になる。

          纏い纏わせ、溶け合って。

          夏は得意じゃないけれど

          夏はあまり得意ではない。 痛いくらいの日差しとか、身体中の水分持っていかれていく度に勝手に体力も消費されることとか。 本来なら秋が来ている頃なのに、あんたが居座り続けてるせいで来ないじゃないか。しかも年々居座る時間長くなってないか?と、寒すぎるくらいの電車の中で八つ当たりをしながら帰路に着く。 あぁ、電車を降りたらまた身体中から水分が持って行かれるのか…家に着く頃にはへとへとなのか…と憂鬱な気分のまま駅に着いてしまった。 勢い良く開いた電車のドアから生温かい風がぬるっと

          夏は得意じゃないけれど

          aベコbe

          3月下旬、まだ春休み。 もう暖かくなってきて春の気配がすぐそこまできていたのに、今日は雪だるまがテレビ画面の中で踊っている。 こんな日は家に篭るに限るのでお篭りセット(おやつ)を買いに、クローゼットで一昨日眠らせた分厚いコートを叩き起こす。 とんだブラック企業だ。外は真っ白だっていうのに。(やかましい。) 透明な傘がふわふわの白で埋め尽くされそうとする中、薄ピンクの花弁が隙間に割り込んで張り付いている。 静かな校庭と青々と茂る草、シロツメクサだと思っていた緑の上の白は牡