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舞台 阿修羅のごとく

向田邦子の名作ドラマを無敵感漂うキャストで舞台化。当然のように倍率が高くチケットは取れなかったが、配信で伝説の舞台を見届けることができた。

土俵に見立てた全方向から観られるセンターステージ。拍子木の音が鳴り力士が登場しそうな雰囲気の中いきなり電話がかかり四姉妹が一斉に喋り出す。向田邦子の隙のない脚本に立ち向かうための奇襲のような演出に相当な気合と覚悟が感じられた。

父親の不倫をきっかけに四姉妹の歪な関係や人間の不完全さを炙り出す2時間。

一人二役という役者の省略も演劇ならではのアイデアで魅力的だった。二役とも不倫をされる小林聡美と二役とも不倫をする山崎一。仲が悪い三女と四女の恋人役に瞬時に入れ替わる岩井秀人。肝心な父親は役として登場させずみんなの会話の中だけに留めるところもなんとも心憎い。

小泉今日子の色っぽさ、小林聡美の冷静さ、安藤玉恵の愚直さ、夏帆の健気さ、違いすぎる性格から巻き起こる数多の喧嘩。そのすべてがお見事だった。

昭和の話で多少の価値観の違いはあるにせよ、人間の心の揺れはこれからもずっと変わらない。故に向田邦子はいつまでも色褪せない。

戦は続く。