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過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道

国内外で伝説的な人気を誇る写真家森山大道のドキュメンタリー映画をNetflixで観た。

1968年に発売された処女作『にっぽん劇場写真帖』の復刊までの道程を縦軸に、森山が街を彷徨いながら行うスナップショットを横軸に物語が進んでいく。

編集者、造本家、印刷工場の熱の入ったやり取りの中で、今回の写真集は復刻ではなく再構築という言葉が印象的だった。過去の焼き直しではなく現代に通じる新しさを求め、インクの量のちょっとの差でもこだわっていた。

そんな周りの熱意をよそに当の本人の何も執着しない飄々とした佇まいのギャップが面白かった。アナログもデジタルも過去も未来もモノクロもカラフルもすべて距離を保ちシャッターを切る。

街を歩き人物や風景をどう切り取り一枚の写真が立ち上がるのか。その一瞬の積み重ねが森山大道を作り上げる。創作活動はただそれだけの行為で充分だと気付かされた。

パリフォトで10分で完売したその写真集。本人は奢ることなく黙々とサインを書き続ける。

人気や炎上は本人の意思とは関係なくいつだって周りが作り上げるもの。