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青年団 S高原から

ここ数年こまばアゴラ劇場に通いお弟子さん達の舞台を何度も観てきたが、今回の閉館に向けたサヨナラ公演で遂に師匠平田オリザの舞台を体験できた。そんな個人的な感動とは裏腹に至極淡々とした内容で叩きのめされるとは。

まずは客がぞろぞろと席に座る開演前から舞台上に俳優がいることが新鮮で、演劇がいつもの日常と何も変わらないことを宣言しているようだった。

そして療養所のラウンジに集まる人々の何ものでもない会話。特に大きな事件が起きるわけではないが常に死を予感させる不穏さが最後まで続く。時間が止まってしまった患者と時間に追われる面会人達の会話のズレがとても切なかった。

閉館と死。どんなものでもいつかは終わりがやってくる。それを受け入れてどうやって今を生きるのか。

この場所がなくなっても舞台を観終わった後色々噛み締めながら歩いたあの道を絶対に忘れない。