ぱぷりか 柔らかく搖れる
岸田國士戯曲賞を受賞した作品の再演。予習として配信で観た前作が面白かったので今作は生の舞台で観劇した。
物語の起伏は特にないが不安や息苦しさが常に横たわっている繊細な人物描写が見事で、向田邦子をはじめ是枝裕和や坂元裕二、濱口竜介と人間関係を作品の軸とする作家が好みの自分としては最高の体験だった。
そして子供の頃再放送で毎日観ていた渡る世間は鬼ばかりを思い出した。家族という小さな箱の中に人間の面倒臭さが沢山詰まっていてそれがホームドラマを観る基準となっている。晴れない嫁姑問題はこのドラマで嫌というほど叩き込まれた。
過疎化が進む田舎の閉鎖的な価値観に縛られて酒やギャンブルに依存したり、新しい家族の形を受け入れられなかったり、私たちの日常は一歩間違うと断崖絶壁だ。人間は問題を抱えたまま急に幕を閉じることもあり得るし一生について色々と考えさせられる作品だった。
これからも川のように止まることなく家族の話を見続けていく。