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初盆にはカステラを。

今朝は8時に目覚めた。連日気温は30度を超え、空には入道雲が浮かんでいるというのに、朝の空気がかすかに秋の匂いを含んでいるような気がするここ数日。気のせいだろうか。

5月のよく晴れた日に、祖父は新緑を揺らす風となり旅立って行った。だから今年は初盆で、今日はお供えを買って母と祖母のところへ行く予定だ。朝から掃除を済ませ、全粒粉食パンを網焼きし、マッシュしたアボガドとポーチドエッグをのせた朝ごはん。おまけに三温糖入りの豆乳をつけて。

お供えを買う前に予約していた献血センターへ向かう。献血は14回目。休日は山に登り、毎日栄養をたっぷりと摂取しているわたしの血液がどこかで役に立ってくれることを願う。明日も生きたいと願う誰かが、どうか健やかに生きられますように。たとえそれが知らない人であったって、その人もきっと誰かにとっての大切な人で。笑っていてほしいと思う。

献血を終えた足で百貨店に行き、お供え選び。祖父は何が好きだっただろうと記憶を辿った。たしかまだわたしが子どもだった頃、祖父の家に行くと鈴カステラと黄金糖が置いてあった気がする。それで福砂屋のカステラにした。檸檬と抹茶、そしてプレーンの3つセット。プレーンの包装は赤、黄、青があって、祖父が好きだった青を選んだ。「ねぇじいちゃん、わたしなりに考えて選んでみたけど、好きなものこれで合ってる?」と心の中で問いかけてみたけれどもちろん返事はない。違っていたとしても美味しいからいいよね?

母と祖母のもとへ行くと、母は夜勤明けで眠たそうにしていたので、母が作ったちらし寿司や桃やカステラを食べながら祖母と一緒に高校野球を見た。大阪桐蔭が19-0と圧勝で、それでも9回裏に塁に出た聖望学園の青年の生き生きとした表情が忘れられない。結果がどうであれ、最後まで希望を持ち続けるその姿に心を打たれた。

そんな1日。帰りの電車から窓の外を覗くと青空には入道雲が浮かんでいて、それでも夕方の空気はまたほんの少し秋の匂いがした。夏が終わろうとしている。じいちゃん、来月わたしは槍ヶ岳に登るよ。

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