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ルーンの母の価値

はじめに、これはレガシーフォーマットのDeath&Taxesプレイヤー向けの記事です。アーキタイプの誕生から現在に至るまで1マナの座を占め続けるクリーチャー、《ルーンの母》の運用について書きます。

序論



《ルーンの母》そのものには価値がありません。

より正確に言えば、《ルーンの母》は単体で勝利に貢献するクリーチャーではないということです。あわよくば単体でライフを削りきり、直接ゲームを決定づける《秘密を掘り下げるもの》と違い、このカードが生み出す価値は、対戦相手や戦場にある他のカードによって大きく変動します。

目の前にある《ルーンの母》がそのゲームで生み出す価値がいかほどかを見極めることが、プレイ指針やキープ基準の助けになるでしょう。

いつ価値が生まれるか?


では、どんな時に《ルーンの母》は価値を生み出すのでしょうか?

例えば、「自身にプロテクションを付与し、ブロックし続ける」などは、アタッカーのパワー分のライフを毎ターン生み続けている、と単純な計算で見積もることができます。
もう少し計算が難しくなりますが、最も多く見られるのは「そのマッチにおいて価値のあるクリーチャーを保護する」ことです。
対UR Delverにおいて《石鍛冶の神秘家》を保護するなどは分かりやすい例ですね。しかし、同じ状況でも対戦相手が違えばどうでしょうか?石鍛冶の神秘家が間に合わないコンボが相手では?更に言えば、そもそも対戦相手が除去手段を持たない時はどうなるのでしょう?

例1 価値の下限を見極める


Sneak&Showのメインボード戦を想像してください。

対戦相手にはメインボードに除去手段がなく、クリーチャーを保護する必要がありません。また、尋常のコンバットを行うこともほぼないでしょう。

よって、このゲームでプロテクションを構える《ルーンの母》の価値はほぼ0と見積もることができます。この判断に何の意味があるかと言うと、価値0の置物として運用するよりも、ライフを削る1/1のバニラクリーチャーの方がわずかでも価値がある、という合理的な判断にもとづき1/1でアタックすることが可能になります。対戦相手の《グリセルブランド》を考えれば、この1点はわずかでも確かに勝敗に影響するはずです。この1点がドローに必要なライフを削り、7枚分のアドバンテージを獲得する可能性があります。

たとえ話を続けましょう。

そうして、あなたはなんとかSneak&Showのライフを削り切ることができました。対戦相手がサイドボードから《激情》《削剥》を追加した第2ゲーム、あなたは第1ターンで《ルーンの母》を唱え、除去されることなく第2ターンを迎えます。

後攻 第2ターン

次の第3ターンには《聖域の僧院長》を着地させる目論見で、このターンは《リシャーダの港》を構えてパス……
少し待ってください。このターン、ルーンの母の価値はいくらでしょうか?

0なのです……まだ。

……確かに、ここで攻撃したルーンの母が討ち取られたなら、次に着地する聖域の僧院長が護れなくなってしまいます。

しかし、このターン除去を打たなかった相手が、ルーンの母を見逃せば腐るとわかっている除去カードを持っているのか?
そもそも、始動に枚数が必要なコンボデッキが、除去カード2枚を持つ余裕があるのだろうか?
前述の通り1点のダメージがゲームを左右することは決して少なくないですから、アタックを考える価値はありますよね。

ルーンの母は強力で、対戦相手の単体除去をすべて封殺して勝つ可能性すらあります。しかし「1:1交換ができれば最低限」すなわち即座に除去されても損ではありませんし、「1度でも除去を弾ければ十分」であることは査定の基準としてもいいでしょう。
除去札の限られるコンボはもちろん、対フェアマッチでも同じ考え方はできます。

例2 価値の上限を見極める

次に、あなたはUR Delverと対戦しています。盤面の状況は以下の通り。

ルーンの母の定着には成功したものの、《石鍛冶の神秘家》は打ち消されてしまいました。

ルーンの母は既に能力が起動できる状態であるにもかかわらず、まだ変身していない《秘密を掘り下げる者》2体は果敢に攻撃してきます。ここであなたは選択を迫られるでしょう。

①ブロックして自身にプロテクションを付与。
プロテクション青を持つルーンの母は相手を一方的に討ち取るはず……

……いや、相手も公開状況からこの展開に気がつかないわけはないでしょう。ルーンの母をタップしたタイミングに《稲妻》を打ち込んで、せっかくアクティブになったルーンの母を討ち取る算段……ということはすぐに想像できます。

ここはスルー、2点のダメージを受けてエンドが正答……!

……いいえ、ここでもう一度このゲームにおけるルーンの母の価値を考えてみましょう。対戦相手の戦場には秘密を掘り下げる者が2体、ひとたび裏返ったなら3ターンほどでこちらのライフは2。稲妻が手札にあることは推測できるので、このままではヨーリオンも間に合わないでしょう。

できれば次のドローから《孤独》《剣を鍬に》《スカイクレイヴの亡霊》いずれかを引いて相手の頭数を減らし、サリアや霊魂でけん制しながら追加の戦力がこないことを祈るという、あまりにも期待に頼りすぎる綱渡りが始まる……うん?この展開にルーンの母、必要でしょうか?

ライフレースを破壊する《石鍛冶の神秘家》は場になく、次のターンから引けたとしても《殴打頭蓋》が動き出すまでに最大12点ものダメージを受けています。
同じように、運よく《ちらつき鬼火》を引けたとしても相手は稲妻を構えていますので、コンバットを介する交換は最高でも秘密を掘り下げる者と相討ちとなります。それならば、今ここでルーンの母と秘密を掘り下げる者で相討ちをとる、という方が確実ではないでしょうか?

③ルーンの母でブロック、そのまま優先権をパス。

求めていた《剣を鍬に》と同じように、対戦相手は秘密を掘り下げる者とルーンの母の交換を余儀なくされます。②を選んだとき、理想的なドローが続かなかったなら、空を舞うデルバーたちがプレイヤーを殴り倒す様をルーンの母はサリア達ととも地上から傍観するでしょう。そのゲームでルーンの母の価値はほぼ0で、プレイヤーは価値を引き出すことに失敗したと言えます。

同じように、ルーンの母自身を失うことを恐れて他のクリーチャーを護れる機会を見送った結果、疫病を仕組むもの至高の評決でまとめて処理されてしまった場合もその価値は0で、プレイを省みる余地があります。

ここまで、もし自分の敗北したゲームを振り返って「ルーンの母が定着に成功したにも関わらず負けた」とか、「不用意にルーンの母を起動して負けた」という事があるなら、それは価値の査定を見誤った可能性が高いでしょう。

おわりに

「状況によって価値が変動する」ということはルーンの母に限らず、程度の差はあれどほぼすべてのカードに共通します。言い換えれば振れ幅が大きくミスが生まれやすいカードとも言えますが、同時に自分自身のプレイスキルが問われるカードでもあります。常にその価値を問い続けることで、ルーンの母はもっと強くなるでしょう。

さぁ、あなたはその手の《ルーンの母》にいくらの価値をつける?

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


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