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Death&Taxes、どうして負けるのか?

 はじめに、これはレガシーフォーマットのDeath&Taxesが「難しい」と思っている初心者向けの記事です。細かいテクニックやサイドボーディングのガイドではなく、プレイ時の思考を少しカンタンにするマインドマップのような内容と考えてください。

負け方を覚える

 Death&Taxesの難しい要素は「判断」です。自分が脅威を展開し「攻める」べきなのか、相手の展開を阻害し「受ける」べきなのか。
≪霊気の薬瓶≫がない限り、このデッキの選択はいつでも二者択一です。≪意志の力≫を持たないこのデッキは、一度その判断を誤ったら取り返しのつかない失敗になり得ます。例えば≪リシャーダの港≫よりも≪石鍛冶の神秘家≫を優先したターンに、Omni-Tell≪実物提示教育≫をキャストしてしまったなら、もう止めることができないように。

この判断を正確にするための方法はアーキタイプごとの敗北パターンをもとに、好ましくない展開を予測していくことです。
Death&Taxesの勝利パターンはフォーマットに存在するほとんどの相手より遅く細く、自分の勝利パターンを叩きつけていくだけでは勝てないためです。

Death&Taxesはレガシーに存在するアーキタイプに対しどう負けるのか?
表現はネガティブですが、この屍の累積が正しい道を導く礎になります。

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自分の屍を越えてゆく


Omni-Tellに一度《全知》を置かれて敗北したなら、次からは《リシャーダの港》を起動すべきか否かを問いかけることができるでしょう。これは極端な例ですが、次項からジャンルごと、大まかな敗北パターンを列記していきます。

先に対戦相手の勝ち筋を妨害するためのカードを「回答」
自分の勝ち筋を提示するためのカードを「脅威」と定義します。
自分よりも早い対戦相手の「脅威」「回答」で対処したのち、
「脅威」でゲームを構築していくことが基本的なゲームプランです。

Aggro

レガシーにおいて、要はDelverです。
レガシーフォーマットの先頭をほぼ常に走り続けるアーキタイプです。

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・回答が足りなくなる
Delverデッキの脅威は1マナから、すべて飛行を持ったパワー3点以上のクリーチャーたちのことです。順当に展開するクリーチャーを除去できなければ先にライフが尽きるのは自分である以上、このマッチの回答とは《剣を鍬に》《孤独》のような除去呪文であると考えてください。幸いここに判断が難しい部分はなく、ブロックで止められないクリーチャーはほとんどすべて除去する必要があります。もしブロックで止められる(相討ちだとしても)機会があれば、貴重な機会として是非を判断してください。
《空を放浪するもの、ヨーリオン《永久のドラゴン》がようやく着地するころ、既に《秘密を掘り下げるもの》や《ドラゴンの怒りの媒介者》が除去できず元気にのさばっているのなら、温存されたカウンターやバウンス、《濁浪の執政》で敗北してしまいます。

・脅威もまた回答である
一応、こちらにも対処を要求するカードは存在します。動き出せばダメージレースを壊す《石鍛冶の神秘家》などが良い例ですね。対戦相手の目線に立てば、それに繋がる《ルーンの母》もそう。大量のドロースペルからクロックを探していくというゲームプランを描いていたなら、《スレイベンの守護者、サリア》や《迷宮の霊魂》も脅威となることさえあります。常に回答である除去と違い、これらのカードが対戦相手のプランにとって脅威となり得るかを見極める精度が、除去を十分に引けなかったゲームの勝率に繋がるでしょう。

とはいえ十分な火力とカウンターを有するDelverにこれらの脅威が容易に定着することにはあまり期待せず、基本的には回答である除去を主軸にゲームを始めるべきです。相手の初動に対処してロングゲームに持ち込めば、基本的にはこちらが有利になっていくからです。

Control

Death&Taxesより遅いゲームプランを描くコントロールデッキ全般を指します。

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このマッチではこちらが「脅威」を展開し、対戦相手が「回答」を示すことができるかという、比較的単純な構図になります。前項のDelverとは逆の構図だと思えば、もう一方の視点は想像しやすいでしょう。

・カードの交換に応じていると敗北する
 コントロールのバリエーションは多様ですが、共通する認識は「毎ターン1:1のカード交換に応じていると敗北する」ということです。これはコントロール側にとって望ましい展開です。序盤に展開したクリーチャーを丁寧に除去され、相手がマナ基盤と手札を整えることに成功したなら、概ねゲームは掌握されています。これを覆すことができるのはサイドボードの《大変動》だけですが、そこまでに対処を迫る展開を作れなければ打ち消されて終わるでしょう。

幸いなことに、対Delverにおいて単体のカードを排するための《剣を鋤に》を探すように、キープ基準で悩む必要はありません。前述した敗北のレールは最初から敷かれており、大筋のゲームプランは確定しているからです。

このレールを脱するためには「対戦相手に毎ターン除去されるような展開にしない」流れを見据えてゲームを始める必要があります。
除去を無力化してしまう《ルーンの母》、手札を整えるドローや除去を妨害するための《スレイベンの守護者、サリア》《迷宮の霊魂》、相手の除去タイミングを操作することのできる霊気の薬瓶などが有用なカードです。これらのカードはゲームが進むごとに価値が落ちてしまいますし、これらのどれもなく、手札が遅いのなら、積極的にマリガンして探す価値があります。単純なアドバンテージの応酬は不利と考えておいた方がいいでしょう。
これはコントロールに限らず「このマッチは長引いたとき、どちらが有利になるのか?」を把握しておけば、ゲームプランの想定が簡単になります。

・リセットカードで敗北する
 1:1の除去を繰り返していると敗北する……それよりも悪いのは全体除去を受けてしまい、カードアドバンテージとテンポアドバンテージが一瞬で水泡に帰してしまうことです。
《終末》《至高の評決》《虐殺》《毒の濁流》《仕組まれた爆薬》……
対戦相手がプレイしうる「一対多の交換を行うリセットカード」はどれか?これを想定することで《リシャーダの港》を適切に使用したり、全滅をケアした展開をしやすくなります。全体除去の種類はあまり多くないので、頑張って覚えてください。
一方、対戦相手が全除去を持っている可能性があり、「さらに生物を展開して攻めるべきか否か」悩むことに時間を使うなら、盤面で対戦相手を打ち倒すに足る優位が築けているか否かを考えてください。既にそれだけの優位があるのなら過剰といえますし、そうでないなら対戦相手は全体除去を打つ必要さえないということになります。その盤面のまま構え続けるという選択は、対戦相手がリセットボタンを保持したまま、ゆっくりと手札と土地を整える時間を与えるだけです。《リシャーダの港》を起動するべきか、展開するべきか否かについても同じことが言えます。


Combo

一括りにしてしまっていますが、3ターン以内に事実上の決着がありえるようなコンボのマッチアップを想定しています。

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・2ターン以内に敗北する
Ant,TESなどのストームコンボをはじめ、第2ターン以内に事実上の決着がありえるアーキタイプは多数存在します。つまり、そのゲームにおいてDeath&Taxesにできることはなかったという事です。

……では、どうすれば良かったのでしょうか?もしあなたが先手を取り、第2ターンを迎えた上で相手のアクションを妨害することができずに負けたのなら、《スレイベンの守護者、サリア》や有用なカードを探すためにマリガンするべきだった、など反省点はすぐに見つかるでしょう。

では、第2ターン目を迎える前に敗けたのならどうすべきだったか?
率直に言えば、サイドボードの準備を始めるべきです。負け筋を考えることは重要ですが、それは対処できない負け筋に固執することとは違います。Death&Taxでは構造上改善の難しい負け筋は割り切って、どうにかなる範囲をケアしていきましょう。

《耳の痛い静寂》《精神壊しの罠》などの局所的なサイドカードをもっと多く入れていれば防げたかもしれない……けれど印象的な負けに引きずられて過大評価していないか、サイドボードを組みかえる前に一度再考しましょう。実際にStormとマッチングすることが多くサイド後の後手ゲームを落とすことが多いのならば肯定できますが、特に「MO Leagueの5-0リストでよく採用されている」ものを単にコピーしているなら、あなたの臨むイベントでは過剰である可能性を一度疑ってください。

対戦相手に対して効果的な回答が何かを見誤った
Death&Taxにおいて第2ターンは大きな意味を持っており、それは対戦相手への干渉が始められるターンである事を意味します。2マナのカードをプレイした上で敗北したのなら、初めてプレイを反省するべきでしょう。プレイしたカードが有効でなく、「対戦相手にとっての脅威を見誤っている」ということです。以下、参考として対応を見誤りやすい例について、三つほどのマッチアップを書いていきます。

Reanimate
例えば《剣を鍬に》も回答と言えなくはないこのマッチ、そうしてキープしてわかりやすい間違いは《グリセルブランド》を釣られてしまった時です。では墓地そのものを対策すれば安泰かと《安らかなる眠り》《獅子の飾緒》でゲームを始めたら、1ターン目にリアニメイトが成立してしまうこともあります。
このマッチは回答の速度を見誤りやすい、ということです。
高速コンボに対応するためには、《外科的摘出》《精神壊しの罠》《耳の痛い静寂》などを探すため、過酷なマリガンを視野に入れる必要があります。ただし、《外科的摘出》1枚のためにマリガンを続けた結果、他に脅威もなく、手札破壊でゆっくりとゲームを構築されることもあります。これも逆の方向に速度を見誤った結果と言えます。
このジャンケンには正解がないのですが、対戦相手のマリガンは速度を読むための情報として重視しましょう。マリガン回数が増えるほど、早いターンの《グリセルブランド》着地に頼らざるを得なくなり、速度に特化していくということです。

・Elves
このマッチにおける「回答を見誤る」というのはわかりやすく、ドローを止める《迷宮の霊魂》とサーチを止める《封じ込める僧侶》の二者です。一方で《梅澤の十手》擁する《石鍛冶の神秘家》脅威となります。《迷宮の霊魂》でドローを止めたら《自然の秩序》ひとつで負け、《封じ込める僧侶》でサーチを止めたなら《垣間見る自然》で圧殺される……どちらにも裏目はありますが、まずはいずれかの回答を頼りにゲームを始めてください。幸いにもこれらの回答が嵌ったなら盤面干渉手段に乏しいElvesがそれを脱するのは難しく、十分な猶予が与えられます。脅威を展開するのはその後でも遅くありません。また、《平和の番人》は対戦相手の勝ち筋を完全に否定する最高の回答です。

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Show&Tell
まず《騙し討ち》《実物提示教育》か、後者ならそこから何を展開するかという分岐は多く、初めからすべてをケアすることはできません。まずはこれらコンボパーツを揃えようとする動きを妨害するため、《スレイベンの守護者、サリア》《迷宮の霊魂》を主軸に考えましょう。例えば《聖戦士の奇襲兵《封じ込める僧侶》のようなカードはコンボへの一種の回答とはなりえますが、サリアや霊魂はこのマッチにおいて脅威であり回答です。

omni-tellを含む対戦相手に《実物提示教育》をプレイされたなら多くの分岐があり、無数のミスの可能性があります。《実物提示教育》を撃つ側の目線で見るなら、おそらくは以下のような優先順位でゲームプランを描くでしょう。また、いくつかの択は場にあるパーマネントや相手のアーキタイプで消去していくことができます。

1.《全知》+《狡猾な願い》のルート
かなり裏目の少ないルートです。《聖戦士の奇襲兵》なき限りはほとんどの妨害をすり抜けます。《エーテル宣誓会の法学者》やサリアがいても猶予期間は短いため、Omni-tellが万全の準備をしたなら概ねこのプランと考えられます。

2.《全知》+《引き裂かれし永劫、エムラクール》のルート
こちらの場合《聖戦士の奇襲兵》では裏目を引きますが、《ちらつき鬼火》などで延命できます。対戦相手の手札が少なく、かつ《孤独》などでエムラクールが対処可能なら、このプランに目を瞑って、1を決め打てます。1とは一長一短ですが、オムニテルでは《狡猾な願い》の方がエムラクールよりも採用枚数が多いので、単純に1を考えた方が的中率が高いです。この相手以外にも対戦相手の複数のコンボルートを読み取るとき、採用枚数は確かな指標になり得ますよ。

3.《全知》からドローソースをプレイし、1,2へ
1,2の下位ですが、《聖戦士の奇襲兵》がいるときにおもむろにドローソースを撃ち始めたなら、実のところ1であり、奇襲兵の起動を誘っている可能性があります。判断が難しいですが、基本的に私は1を決め打って起動を待ちます。

4.グリセルブランド
とりあえず7,or14枚を引き増すというプランで、《迷宮の霊魂》以外の裏目がありません。《カラカス》がなければそのまま勝利することすらできます。それまでのドロー操作が十分でなく、全知を含む3枚以上のコンボパーツを見つけられていないのではないかと思うのなら、このプランを疑ってもいいでしょう。

5.残虐の執政官 or エムラクール
《剣を鍬に》《孤独》《カラカス》が無い事を祈る、信頼性の低いプランです。

上位ほど信頼性の高いプランであり、ドロー操作で手が進んでいるほど上のプランを選びやすくなります。《エーテル宣誓会の法学者》を出すべきか《迷宮の霊魂》を出すべきか悩んでいるのなら、これまでのドローの過程を指標にしてください。

敗北を分類していく

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カードプールの広いレガシーには多様なアーキタイプが存在し、この記事ではすべてのマッチアップをガイドすることはできません。
しかし、Aggro,Control,Comboの3パターンに大別していくことで、敗北パターンを整理しやすくなります。

自分より早く、回答が十分に必要な「Aggro」
自分より遅く、的確な脅威が必要な「Control」
特定のカードを機能させると負けてしまう「Combo」

相対したデッキがどれに属するのか考えると、ゲームを長引かせるべきなのか、ゲームを早く終わらせるための展開をすべきなのか、特定のカードへの回答を探すべきなのか、大まかな指針が見えてきます。

例えば、Landsなどは無尽蔵のアドバンテージ源盤面干渉手段を持ち、ゲームが長引けば《死者の原野》で圧殺する一般的にはコントロールデッキに分類されるものです。しかしながら、敗北を重ねればこのコントロールプラン《ヴァラクートの探検》《罰する火》《壌土からの生命》という無尽蔵のアドバンテージ源から成り立つことに気づくでしょう。これらのカードへの専門的な回答がゲームのキーとなる対Landsは、本質的には<Combo>に近いマッチといえます。そう整理すれば、《石鍛冶の神秘家》のような脅威を優先するよりも、置物破壊墓地対策、《聖域の僧院長》をゲームの軸としてプランニングしていく筋道が見えてくるはずです。
では、Mono-red Prisonは?8-Castは?Counter Sliverは?Cephalid Breakfastは?新たに生まれ来るアーキタイプは?……新しく、正しい答えを導いてくれるのはこの記事ではなく、あなた自身の重ねる敗北です!

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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

さつ


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