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第15期関西帝王戦レガシー決勝戦カバレージ

主催:晴れる屋TC大阪店

矛と盾のゲーム

2023年6月10日、第15期を迎える関西帝王戦レガシー。
マジックの長い歴史にある数多の脅威が矛先となってプレイヤーに襲い来るこのフォーマットで、それらを受け流す最強の盾こそが《意志の力/Force of Will》。

「私の運命は私が決める。」

王座に手をかけた二人が選んだアーキタイプは、共にこの最強の盾と、それぞれの矛を構える「青赤緑デルバー」「8-Cast」だった。

坂本 大河 / 青赤緑デルバー

デルバーデッキは前述ののゲームを体現するアーキタイプと言える。《意志の力》や《目くらまし》をはじめとした打ち消し呪文が身を護る盾とすれば、敵を穿つ矛は《秘密を掘り下げる者》や《濁浪の執政》などの、軽量で優秀なクロックだろう。

秘密を掘り下げる者

第1ターンからこの攻防を同時に開始できる攻撃性と、各種ドロー操作による高い安定性がレガシーフォーマットに君臨し続けるこのデッキの強みだ。《敏捷なこそ泥、ラガバン》《表現の反復》を禁止されてなお、それは失われていない。

篠原 元 / 8-Cast

8-Castもまた、《意志の力》のバックアップのもとに展開されるクロックで対戦相手を圧殺するデッキだ。採用するカードはまるで違っても、デッキの根本的な動きはどこか通底している。デルバーデッキがドローの質を高めることでゲーム展開を手繰り寄せるなら、8-Castはその名の由来でもある《物読み/Thoughtcast》と《思考の監視者》によるドローの量で対抗する。

ウルザの物語

そして、このデッキ最強の矛は間違いなく《ウルザの物語》だろう。2体の構築物トークンと《影槍》をもたらすこのカードは、《濁浪の執政》さえも超えてダメージレースを破壊し得る。しかも、土地としてプレイされるこの脅威は《意志の力》による防御を一切受け付けない。《不毛の大地》で対応できなければ、敗北は必至だ。

虚空の杯

もう一つ、《虚空の杯》こそが1マナアクションに依存した相手から身を護る盾である。デルバーデッキほどに1マナに強く依存すれば、それは相手の矛先を折って完封する可能性さえある。これもまたデルバー側としては対応を迫られるカードだろう。

決勝戦

そうして帝王の座を奪い合う決勝戦の前に、篠原と坂本の二人は穏やかだった。二人は友人同士で、互いにそれぞれのアーキタイプのエキスパート。何十回も繰り返した練習戦で、ここまでに書いた前提は言うに及ばず。マッチアップを熟知した二人の見解は共通している。

「このマッチは先手有利の五分」。

「……先手、頂きます」
スイスラウンドを上位で通過した篠原の宣言で、決勝戦の火蓋が切られた。

Game 1

先手の篠原は7枚でのキープを宣言。
一方で、坂本は7枚の手札を睨んでいた。
《ドラゴンの怒りの媒介者》《タルモゴイフ》《稲妻》《ミシュラのガラクタ》《Volcanic Island》《不毛の大地》《不毛の大地》。

※写真は当日の様子を再現したものです。

第1ターンから《ドラゴンの怒りの媒介者》をプレイし、《ミシュラのガラクタ》で昂揚を補助。続く《タルモゴイフ》のサイズも保障され、攻め手は申し分ない。ただ一つ頭を過るのは、《虚空の杯》の存在だった。

「……これがサイド後だったらなぁ」

《意志の力》がないこの手札では止められない。
悩んだ結果、坂本はリスクを受け入れて7枚をキープ。

……始まる第1ターン、篠原は《ウルザの物語》《ミシュラのガラクタ》を置いてターンを終了した。坂本から《虚空の杯》の懸念が消える。

ならばとばかりに、《不毛の大地》を起動して《ウルザの物語》を破壊。
戦場にはお互いの《ミシュラのガラクタ》だけが残るが、ともに起動されてドローへと変わる。

しかし、そのアクションはアーティファクトを墓地に送ることに意味があるデルバーと、アーティファクトを場に残すことに意味がある8-Castではニュアンスに差異がある。篠原のそれは「カードを引き増して、プランを修正しなければならない」サインを示していた。

このゲーム、マリガンチェックの時にリスクを受け入れたのは坂本だけではなかった。篠原もまた《ウルザの物語》に期待を懸けたキープ、相手の《不毛の大地》が頭を掠めながらも攻めの手札を選択したのである。

《ウルザの物語》に続く次なる脅威を求めたが、このドローでプランの修正が叶わなかった篠原は《古えの墳墓》《ミシュラのガラクタ》をプレイしてエンド。

アクションがなかったことにより、攻め手は返すターンの坂本へと入れ替わる。《Volcanic island》からの《ドラゴンの怒りの媒介者》をプレイ。

しかし、これは《意志の力》に阻まれる。篠原は《ウルザの物語》が潰えた場合でも脅威への備えを講じていた。たった1マナのクリーチャーでもまだリードを許すわけにはいかない。惜しみなく《湖に潜む者、エムリー》がコストに支払われる。

返しに篠原が引き込んだのはもう1枚の《意志の力》。攻勢に転ずることは叶わず、土地が置けなかった弱みを見た坂本は、返すターン2枚目の《不毛の大地》で残る《古えの墳墓》を破壊する。さらに《秘密を掘り下げる者》を追加するが、これにも先ほどの《意志の力》が迷いなく当てられた。盤面こそ動かないものの、手札の差が拡がっていく。

次のターンでも篠原が攻勢を返せないまま、坂本は《ドラゴンの怒りの媒介者》を追加し、ついに盤面のリードを得る。加えて3枚目の《不毛の大地》を追加。このゲームで、《不毛の大地》《意志の力》よりも強固な盾となり、《ウルザの物語》と数多の反撃手段を弾き飛ばした。

そして強固なマウントのもと、ゲームを終わらせるため悠然と現れる《濁浪の執政》。篠原は三度《意志の力》で対抗するが、それは坂本の《意志の力》で相殺される。

「ウルザの物語を信用した自分と、不毛の大地を信用した相手が明暗を分けた」と総括し、投了を宣言した。

篠原 0-1 坂本

Game 2

第2ゲーム、坂本は1度マリガンを選択。
先手の篠原がキープした7枚は《教議会の座席》《水蓮の花びら》《オパールのモックス》《ウルザのガラクタ》《意志の力》《島》
そして《思考の監視者》!

第1ターンから戦場に舞い降りた《思考の監視者》《河童の砲手》《トーモッドの墓所》を篠原の手にもたらす。この《河童の砲手》は、《教議会の座席》《オパールのモックス》《ウルザのガラクタ》《思考の監視者》が戦場に残っているため、次のターンに戦場に出てしまう。

序盤から強力なプレッシャーを与えられる坂本。《邪悪な熱気》を引きこみ、少しだけ――篠原の戦場を睨むが、まずは《ミシュラのガラクタ》を対戦相手に起動。《意志の力》を確認して、《思案》をプレイ。
《塵と化す》《意志の力》の2枚を引き込んで、相手の猛攻に備える。

そして、篠原は第2ターンにして《河童の砲手》をプレイ。
《意志の力》は見えているが、坂本も《意志の力》を切らないわけにはいかない。互いの意志の力がぶつかりあって、《河童の砲手》が戦場に出る。

篠原は手札を使い切ったが、もはや脅威はない。《濁浪の執政》《ドラゴンの怒りの媒介者》《トーモッドの墓所》が睨み、たとえ殴りあってもライフが先に尽きるのは相手だろう。強力なサイドカードである《溶融》でさえこの盤面を捌くことは叶わない。事実上、このターンで大勢は決していた。

坂本は2ターンほど粘ったのち、投了を宣言してぽつりと一言こぼす。

《邪悪な熱気》《思考の監視者》に撃てばよかったな」
坂本は第1ターンの沈黙の意味を明かす。そうすれば、《河童の砲手》はあのターンに出ていなかった。あのターンに出ていなければ、違うゲーム展開があったかもしれない。
「あれ監視者除去るの考えてたやんなぁ、マジでとんでもない奴だわ」

篠原 1-1 坂本

Game 3

帝王を決する第3ゲーム、先攻は坂本。
手札には《沸騰する小湖》《溢れかえる岸辺》《ドラゴンの怒りの媒介者》《秘密を掘り下げる者》《タルモゴイフ》《紅蓮波》……そして《溶融》。

対8-cast必殺の矛

対して、篠原の手に配られたのは《ウルザの物語》《島》《耐え抜くもの、母聖樹》《水連の花びら》《ミシュラのガラクタ》《影槍》《意志の力》の7枚。少し第1ゲームの手札に似ていたが、もう一度《ウルザの物語》を信じキープを選択。

先攻の坂本は《ドラゴンの怒りの媒介者》をプレイ。篠原はもう1枚《意志の力》を引き込む。《島》《影槍》《水蓮の花びら》を場に出し、《ミシュラのガラクタ》を起動する。坂本のライブラリトップ《思案》を確認してエンド。

《思案》をプレイした坂本は諜報効果で《稲妻》を墓地に送って得た《ミシュラのガラクタ》で、テンポよく昂揚を達成した。
素早く3点のクロックを作った坂本は《秘密を掘り下げる者》を追加することはせず、《紅蓮破》を撃てる状態でパスターン。

返す篠原は、満を持して《ウルザの物語》をプレイする。第1ゲームでは《不毛の大地》に折られても、もう一度このカードに期待を込める。追加した《ミシュラのガラクタ》を今度は起動しない。トークンのサイズを高め、《ウルザの物語》1枚で勝利するために。

今度ばかりは《不毛の大地》を持ちあわせていない坂本は、フェッチランドをセットして《タルモゴイフ》をプレイ。現時点で5/6のサイズを持つ強力なクロックだ。《ウルザの物語》を語り終えれば乗り越えられないサイズではないが、既に残るライフは13。今はそれまでの時間が欲しい篠原は、《意志の力》で対応!

幾度となく練習戦を繰り返した対戦相手、その意図を読み違えるはずもない。坂本は《紅蓮破》で篠原の意図を阻むが、篠原はもう1セットの《意志の力》で、これを断固阻止する!


応酬の末《タルモゴイフ》は打ち消される。篠原の消耗も著しく、手札は使い切った。残ったものは《ウルザの物語》《ミシュラのガラクタ》《水蓮の花びら》《影槍》と2枚の土地だけ。これもすべて《ウルザの物語》のために。トークン能力の起動を構えて、パスターン。

一方で、《意志の力》を使わなかった坂本には余力があった。《溶融》を手札に控えながら、その上でこのターン《塵と化す》で影槍を破壊。たった1ターンのライフゲインをも封じ、追加した《秘密を掘り下げる者》で王手に迫る。

返すターン、ついに《ウルザの物語》を語り終えた篠原。《影槍》を失い退路を断たれた以上は《上天の呪文爆弾》を探し、2体のトークンで殴り切るしか道はない。5/5のトークンでアタックし、坂本のライフを12まで削り取った。次にアーティファクトを置けば6/6が2体、王手はこちらの届く距離にもある。全ての手札を使い切ってこの盤面を作りあげた篠原の目には、まだ光があった。

しかし、ここで初手から来るべき時を待っていた必殺の《溶融》が炸裂する。

全てを賭した《ウルザの物語》のトークンを失った篠原の手に、もはや握る矛は残されていなかった。

(写真:晴れる屋TC大阪)

『第15期関西帝王戦レガシー』優勝は坂本 大河!おめでとう!

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