メモの取り方/読めない文字で書かない工夫

手書きでメモを取らずに、パソコンやタブレット、スマートフォンなどデジタル機器でメモを取る人がいる。これは正しい。もちろん手書きを否定しているわけではない。メモが未来の誰かに宛てたメッセージだとするのであれば、読めるように使いやすいように残すことが大切だからだ。

内容以前に読めない文字で書く人たち

仕事がら、手書きの文字を読む機会が少なくない。取引先だったり上司だったりするのだが、まれに読めないということがある。修正指示、いわゆる赤字というやつなので、私が読んで反映させなければならないので、読めないまま済ませるわけにはいかない。
取引先の相手がいくら親しかったとしても「汚くて読めない」と、電話かけるわけにもいかない。そこで同僚に聞くことになる。選ぶのは、比較的文字が汚いやつだ。同類ということなのだろうか、きっとこういうことが書いてあると教えてくれる。読みやすい文字に共通の特徴があるように、汚い文字にもそうしたものがあるのだろう。そう言われてみれば、たしかにそう書いてあるように見えてくる。
未来の誰かに伝えるためにメモを作る以上、読めるようにする必要はある。少なくとも自分は読めるように書くというのは大切だ。自分の文字が読めないことを理由にデジタルツールでメモを取る人も少なくない。文字データであれば、汚くて読めないということはない(よほど変なフォントを使わない限りね)。
もちろん、デジタルデータであれば使い勝手はいい。メールなりを使い誰かすぐに送るのも容易だし、その後に清書しなければならないときでも流用しやすい。検索して探すということもやりやすくなる。
問題になるのが、書いた本人でも読めない場合だ。以前いた上司がそのタイプだった。上司だから、単に直接聞きにいけばいいだけだが、それほど気が進むものではない。「俺の文字が読めないのか」というようなことを言われるからだ。「その通りです」と言ったときは、火に油を注ぐだけだった。無駄なやり取りだし、そんな読めない文字は無視するのもいいのだが、すべてそうするわけにもいかない。赤字を反映するか否かの決定権は私にあっても、上司にも修正指示する権限がある。
ただし、聞いたところですぐに返事が返ってくるとは限らない。本人も読みづらいようなのだ。それでも待っていれば、これこれこういうことが書いてあると言われるのだが、自分でも読みづらい文字を他人に読ませようとするのは、パワハラではないのか?と思えてしまう。

筆記具で改善できる読みづらさ

こうした文字には明確な特徴がある。まず、筆記具が悪い。かすれたボールペンを使っていたり、先が丸まった鉛筆で小さい文字を書いているのだ。前者はかすれているのだから、そもそも読めなくて当たり前。後者は、線が重なってしまっているから、酷いと何かを塗りつぶしたようにも見えているわけで、やはり読めない。高級な筆記具を使えとは言わない。かすれたボールペンの芯は交換するなり、ボールペン自体を変えるべきだし、紙との相性も考えるべきだ。特にコート紙(ツルツルした紙ね)は、筆記具との相性がある。水性ボールペンではかすれてしまったり、鉛筆では薄くなってしまったりすることがある。メモをとるときを考えるなら、お気に入りのペンとお気に入りのメモ用紙があったとしても、その相性も考えた方がいい。
先が丸まった鉛筆だったり、太いペンで、小さな文字を書くのも論外だ。印刷であれば文字がつぶれていると表現するが、最初からそうならないようにしておくべきだ。丸まった鉛筆や太いペン先の筆記具が好きなのであれば、相応に文字は大きく書いたほうがいい。小さい文字を書くのであれば、やはりペン先が細いもののほうが適している。
いわゆる校閲/校正さんという人たちは鉛筆を使うことが多い。消しゴムで消せるというのが大きな理由なのだが、そうした人たちの机にいくと、先のとがった赤鉛筆と普通の黒い鉛筆がペン立てにびっしりと並ぶ。頻繁にその削った鉛筆に交換して、赤字を入れていた。読みやすい文字を書くだけではなく、読みやすいよう工夫している。やはりプロは違う。

書き間違えたら取り消す・書き直す

また、途中で文字を書き間違えたとき、間違えた上から書いてしまう人がいる。たとえれば、「間」と書くべきところを「聞」と書いてしまい、耳の部分を上から日に書き直すのだ。重ねて書いたからといって、耳が日になるわけではない。線が増え、塗りつぶしているだけ。言べんを糸へんだったり、平仮名を片仮名にしたり。いずれにしても、読みづらいというよりも、読めなくなっていく。
さらに、先の丸まった鉛筆や太いペンを使う人ほど、こういうことをしたがる。ただでさえ読みづらい文字が、もっと読めなくなってしまう。
デジタルツールであれば、削除すればいいだけだ。しかし、ペンで手書きであれば、文字を間違えたら、消しゴムを使うなりしてきちんと書き直した方がいい。
メモであれば、素早く書かなければならないことも多いだろう。その場合は、バッテンを書くでも、二重線の取り消し線を書くでもいい。時間がなければ、斜め線を一本入れるだけでもいいし、もし時間があるなら、昔流行ったグチャグチャとして、目と尻尾を付けてミノムシにするのだって構わない。いずれにしろ、これは間違えた文字で不要であることを分かるようにしておいたほうが、自分も含めて未来の誰かが読みやすくなる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?