持続可能な開発の歴史的流れ(1990年代から現在)
1990年代に入ると、1987年に提唱された「持続可能な開発」を踏まえた国際会議が開かれるようになる。1992年に環境と開発に関する国際連合会議(UNECD、通称地球サミット)がブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された。
この会議において、持続可能な開発に向けた新しいグローバル・パートナーシップ構築を目的とする「環境と開発に関するリオ宣言 」と、その実現に向けた「アジェンダ21 」、「生物多様性条約 」、「気候変動枠組条約」が採択された。
その後、1995年に社会発展のための首脳会議がコペンハーゲンで開催された。また、1996年にはISO14000シリーズ が企業の環境マネジメント・システムの国際基準として採用され、以後、多くの企業がこれを活用することとなったほか、1997年には気候変動枠組条約第三回締約国会議 (COP3) が京都で開催され、温室効果ガス排出の削減目的を定めた京都議定書が採択された。
具体的な数値目標を掲げたという点で、この京都議定書は一定の評価が与えられているが、最大の排出国であるアメリカが議定書を離脱したため、その効果は限定的なものとなったと言える。
京都議定書は2005年に発行され、2011年のCOP17では、その内容が2013年以降も継続させること、そして全ての国が参加する新たな枠組みを2020年から発行することで合意がなされている。
2000年代においては、1990年代の持続可能な開発を目指す流れを引き継ぐこととなる。2002年に持続可能な開発に関する世界首脳会議が南アフリカ共和国のヨハネスブルグが開催され、1992年に採択された「アジェンダ21」の実施状況を点検するとともに、今後の取り組みの強化が図られた。
その後、2012年には国連持続可能な開発会議(リオ+20)がブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催され、グリーン経済と持続可能な開発のための新たな制度的枠組み作りがなされた。また、この年には世界中の様々な組織に対して経済・社会・環境に対する報告書のためのGRIガイドラインが提示された。
このガイドラインは、例えば企業がCSR報告書やサステナビリティー報告書等を作成する際のガイドラインとして広く用いられており、世界の5,000以上の組織が採用している。
その他の企業活動に影響を与えた取組みとして、2006年のEUにおいて施行されたRoHS指令があげられる。これによって、企業は欧州内において、電気電子機器に関する特定有害物質に対して使用を制限されることとなった。
2007年にはIPCCが第4次報告を発表し、地球が温暖化していることが疑いのないこと、そしてそれが人間の活動によって引き起こされていることが主張された。この年には、IPCCおよび「不都合な真実」を出版したアメリカの元副大統領のアル・ゴアがノーベル平和賞を受賞している。その後、IPCCは2013年に第5次報告を発表している。
最後に、持続可能な開発目標 (SDGs) についても言及する必要があるだろう。SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標である。
そして、持続可能な開発を実現するための17のゴールと169のターゲットが掲げられるようになった。企業だけでなく学校、病院、地方自治体など様々な組織及び地域がSDGsに向けた取り組みを行うようになっており、最も関心の高まっている分野の一つと言えるであろう。