ユーモアな上司と部下への影響

自分が会社勤めしていたときに、とてもユーモラスな先輩がいた。その人は後輩にもすごく親しくしてくれ、誰からも愛されていた。もちろん、自分も大変お世話になった。

今回は、そんなユーモアを持つ上司が部下に対してどのような影響を及ぼすのか、という研究である。著者の一人であるマイアミ大学のCooper 准教授はこの手の研究を多く成し遂げており、まさにユーモア研究のスター研究者と言えるかもしれない。

さて、既存の研究から、リーダーのユーモアは組織市民行動 (OCB) に影響を与えると言われてきた。組織市民行動とは、job descriptionや公式の報酬システムには明記されていない、自発的な個人行動を意味する。例えば、朝早く来てオフィスの掃除を自発的にする、欠席した同僚のサポートをする、といったことがOCBの事例として当てはまる。

今回の論文は、リーダーのユーモアが直接OCBを促すように機能するわけではなく、ユーモアが他の要因に影響を与えることで、結果として部下のOCBに影響を与える、というメカニズムを明らかにしている。二つの関係性の間を取り持つ要因のことを媒介要因と呼ぶ。つまり、この論文はリーダーのユーモアとOCBの関係をつなぐ媒介要因を明らかにすることで、そのメカニズムを解明しようとしているのである。

媒介要因として考えられるのは、以下の三つである。一つ目はリーダーと部下との関係性、二つ目はストレス、とりわけ部下の燃え尽き症候群(バーンアウト)、そして三つめは部下のポジティブな感情である。

1. リーダーのユーモアと部下との関係性

ユーモアなリーダーほど部下との関係は良好になる。なぜなら、単なる利害関係ではなく、両者の間に信頼や互恵関係が生まれるからである。また、リーダーのユーモアは、リーダーが部下に対する支援をしてくれ、また親しみのある存在であることを示すシグナルになることも言われている。

2. リーダーのユーモアとストレス

リーダーがユーモアな場合、部下は仕事における要求(これやっといて、といったお願い事)に対して、負担を感じなくなる可能性がある。これは、部下がリーダーの影響により楽観的になる可能性があるからである。また、精神的なストレスを起こすような問題に対して解決する力がもたらされるという。

3. リーダーのユーモアと部下のポジティブな感情

ユーモラスなリーダーは、部下の頭を柔らかくさせ、行動の幅を広げさせ、個人の能力を向上するのに役立つかもしれないという。また、リーダーのユーモアによって、部下の視野が広がる可能性がある。

以上の三つはあくまで仮説的なものである。しかし、こうした関係性が仮定されるからこそ、その結果OCBに影響が及ぼされるだろう、と筆者たちは想定している。では、どのようにリーダーのユーモアは部下のOCBに影響を与えるのだろうか?部下との関係性が良好になるからか?ストレスが減るからか?それとも、ポジティブな感情が生まれるからか?

Cooper准教授らの研究結果から分かったのは、リーダーのユーモアはリーダーと部下との関係性にプラスに影響を与え、その結果、部下はOCBをよりするようになる、ということである。さらに、リーダーのユーモアは部下にプラスの感情を想起させ、その結果、リーダーと部下との関係が良好になるということも分かった。しかし、プラスの感情を抱いたからと言って、部下はOCBをするわけではなかった。あくまで、リーダーと部下との関係性が良くなることが、OCBを促進するのである。さらに、リーダーのユーモアは部下のストレス(燃え尽き症候群)とは特に関係していなかった。

以上のことからいえることは、リーダーがユーモアであることは、部下との良好な関係を構築する上でとても重要であり、その結果、部下は組織のため自発的に行動するようになるということである。そしてそれは、OCBという形で現れる。

部下との関係に少し悩んでいる上司がいるのであれば、少しユーモアのあるやり取りを部下とするとよい。

Reference

Cooper, C. D., Kong, D. T., & Crossley, C. D. (2018). Leader humor as an interpersonal resource: Integrating three theoretical perspectives. Academy of Management Journal, 61(2), 769-796.

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